楽天モバイルの家族割引で感じた2つの不安要素 「解約抑止」と「黒字化」を両立できるか石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2024年02月17日 09時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 本格サービス開始当初から「ワンプラン」を貫いていた楽天モバイル。そのしきい値や金額といったディテールは変化している一方で、使ったデータ量に応じて料金が変動する仕組みも現在の「Rakuten最強プラン」まで、継続している。他の大手キャリアとは異なり、家族や複数回線、光回線の契約といった条件付きの割引は提供してこなかった。

 そんな楽天モバイルが、ついに提供を開始するのが「最強家族プログラム」だ。プログラムと銘打たれているが、実質的には他社の家族割引サービスに近い。割引額は110円(税込み、以下同)と安いが、もとの料金が安いため、そこからさらに値下げになるインパクトは大きい。契約者獲得にアクセルを踏み始めている同社が、最強家族プログラムを提供する狙いを解説していく。

楽天モバイル 楽天モバイルは、13日に最強家族プログラムを発表した。サービスは、21日にスタートする。写真はその特徴を語る三木谷氏

一律110円割引を提供、紹介キャンペーンとの相乗効果が狙いか

 最強家族プログラムは、料金が110円引きになる家族割引サービスだ。Rakuten最強プランは3GB以下、3GB超20GB以下、20GB超無制限の3段階で料金が変動する仕組みだが、割引額は同じ110円。最低料金の3GB以下だった場合、1078円から968円に下がる。20GB超過後の料金は3278円だが、最強家族プログラムを適用した際の金額は3168円。割引額が一定のため、料金が安い方がその効果が大きくなる。

 一方で、他社と比べると割引額は低い。例えば、ドコモの「eximo」は「みんなドコモ割」で2回線550円、3回線で1100円の割引を提供している。auの「使い放題MAX」などにつけられる「家族割プラス」も同額だ。ソフトバンクの「新みんな家族割」はこれらさらに割引額が高く、「ペイトク」などの場合、2回線で660円、3回線で1210円の割引を受けることができる。最大で1000円を超える割引と比べると、ユーザー獲得に与える影響は小さいようにも見える。

楽天モバイル 各容量帯の価格から110円引きになる。適用されると、3GB以下の料金は1000円を下回るが、割引額は他社の家族割引より低い

 楽天グループの会長兼社長、三木谷浩史氏によると、その狙いはユーザーの背中を押すところにあるようだ。同氏は、自身で「営業していると、よく『家族プラン』はないの? と言われる」と語っており、家族で契約することを「日本人にとって極めて重要」と評した。割引額の大小ではなく、家族まとめて契約するのが習慣に沿った料金プランにする必要があったというわけだ。

 楽天モバイルでは、ユーザーを紹介するキャンペーンを実施しているが、その紹介元と紹介先が家族であることも多いという。楽天グループでCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)を務める副社長執行役員の河野奈保氏は、「ユーザーの獲得経路になっているのが紹介キャンペーン」としつつ、「このユーザーの推定49%がご家族を紹介している」と語った。最強家族プログラムの導入で、「それが加速する」というのが楽天モバイルの見立てだ。

楽天モバイル 河野氏は、紹介キャンペーンで獲得したユーザーの約半数が家族であることを明かした

 楽天モバイルは、紹介する側、される側の双方に楽天ポイントを付与するキャンペーンを実施中。紹介される側には7000ポイント、紹介された側には新規契約で6000ポイント、MNPで1万3000ポイントが付与される。家族の中で招待すれば、1人追加するごとに最大で2万ポイントが手に入る。家族という単位で見ると付与額が大きく、家族単位で契約するモチベーションになる。最強家族プログラムは、このキャンペーンを後押しするためのものといえる。

楽天モバイル 家族1人を楽天モバイルユーザーにするたびに、計2万ポイント入手できる。最強家族プログラムは、それを後押しするものになるという
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年