増える携帯電話ショップの「閉店」 その理由は?元ベテラン店員が教える「そこんとこ」 (1/2 ページ)

» 2024年03月04日 17時30分 公開
[迎悟ITmedia]

 この数年、街中の携帯電話販売店(キャリアショップや併売店)が閉店していたり、量販店の携帯電話コーナーが縮小/撤退したりしていた――そんな光景を目にした人も少なくないだろう。本稿の編集担当者からも「実家近くにあったキャリアショップが閉店して、母の機種変更で困ることがあった」という話を聞いている。

 もちろん、店舗やコーナーが縮小/閉店するには理由がある。シンプルにいってしまえば、店舗やコーナーを維持することに対する経済的な負担が重くなっているという理由に行き着くのだが、そもそも、なぜ店舗/コーナーの維持が難しいほどに追い込まれてしまったのだろうか。

 筆者は先日、まさに勤務先の携帯電話販売店(コーナー)を“しまう”ことになった販売スタッフから話を聞くことができた。今回の「元ベテラン店員が教える『そこんとこ』」では、その店員の話をもとに、携帯電話販売店が置かれた現状をひもといていきたい。

数年前 とあるキャリアショップに掲げられていた閉店案内。キャリアショップに限らず、併売店や家電量販店内の携帯電話コーナーにも縮小/閉鎖の動きが見受けられる

一番の原因は「端末が売れない」こと

 今回、筆者に話をしてくれたスタッフは、あるスーパーマーケットのテナントとして出店している携帯電話ショップで勤務していた。販売店のジャンルでいうと複数のキャリアを取り扱う「併売店」に属する。

 このスーパーマーケットは筆者の生活圏にあり、日常的によく買い物に出かける場所だ。携帯電話の販売員を辞めた後、筆者はこのショップで新機種や新サービス、カタログやポスターといった配布/掲示物のチェックをしていた。もちろん、ここで端末を購入(契約)したこともある。個人的に、かなりお世話になった店舗だ。

 そもそも、なぜ閉店することになってしまったのか――昔から懇意にしてきた店員に聞くと、こんな答えが返ってきた。

 一番シンプルな答えをすると、携帯電話が売れなくなったことが最大の原因です。食品や衣料品の買い物ついでに立ち寄って携帯電話も買い替えていくお客さまが、この数年で激減しました。

 この店はキャリアショップでもないですし、家電量販店(の携帯電話コーナー)みたいな大規模な売り場を持っている訳でもないですが、以前は毎月100台以上の端末を販売してきました。しかし、最近はその半分にすら届かない状況が続いていました

 「なぜ売れなくなったのか?」という理由も複数ありますが、端末自体の値段が高くなってしまったことは要素として大きいと考えます。昔だったら、ハイエンド端末でも10万円しなかったので、「一括0円」とか「数万円キャッシュバック」といった大幅値引きがなくても何とか買える範囲に収まっていました。しかし、今だとハイエンドモデルは10万円以上が当たり前で、場合によっては20万円を超えてしまいますからね……。かつての1.5〜2倍もするとなると、この店の性質上、「買い物ついでにふらっと買う」を期待することもできません。スーパーマーケット内という立地も相まって、結構厳しい面がありました。

 多くの人が想像する通り、一番大きな閉店理由は携帯電話(端末)が売れなくなったことが大きいようだ。

 携帯電話販売店で販売される端末の台数は、年々右肩下がりとなっている。この店舗とは別の、家電量販店内の大規模な携帯電話コーナーであっても、最盛期の半分程度売れればいい方で、月によっては4分の1〜3分の1の台数しか売れなくなったという話も聞き及んでいる。

 端末価格の高騰や、それに伴う販売方法の変化(具体的にいえば「残価設定型の分割払い」や「下取りを前提とした販売プログラム」の誕生)によって、店頭における端末購入プロセスに時間がかかるようになってしまった。現在の端末の売り方は「ついで」「ながら」購入との相性が悪いのだ。この店舗の場合、ある意味で販売方法と「客層」との相性が良くないことも販売台数の減少に拍車を掛けてしまったともいえる。

煩雑ですね…… NTTドコモやau(KDDI/沖縄セルラー電話)では、残価設定型の24回払いを組み合わせた購入プログラムを導入している。ソフトバンクは48回払いという比較的長期の分割払いと組み合わせた購入プログラムを導入している。いずれも原則として支払い途中で「分割支払金」が変動することもあり、「すんなり理解できるお客さまばかりではない」との声がある(画像はドコモの「いつでもカエドキプログラム+」の説明)

 しかし、閉店の原因は「端末の販売台数」だけではない。

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