増える携帯電話ショップの「閉店」 その理由は?:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」 (2/2 ページ)

» 2024年03月04日 17時30分 公開
[迎悟,ITmedia]
前のページへ 1|2       

販売台数以外の「ノルマ」も閉店の一因に?

 以前の連載でも取り上げたことがある通り、携帯電話販売店にはキャリア(または上位の販売代理店)からさまざまな「ノルマ」が課されている。

 ノルマとして「端末の販売台数」は分かりやすいが、実は「回線の新規契約を伴う台数」「他社からのMNPによる移転を伴う台数」といった細かい“内数”も設定されていることも珍しくない。「指定料金プランの獲得(新規/変更の受け付け)」や「クレジットカード契約の獲得」など、細かいノルマがたくさん課されることもある。

 ノルマを満たすと、販売店にはキャリアから「契約(販売)手数料」に加えて「販売奨励金(インセンティブ)」も支払われる。この販売奨励金こそが販売店にとっての“命綱”で、これが減ってしまうと店舗を運営するために必要な経費(店舗の賃借料や店員に支払う人件費など)を賄い切れなくなってしまうこともある。

 ノルマの未達も閉店の一因ではないか――この点について、先の店員に尋ねると、こんな答えが返ってきた。

 確かに、販売台数が減ったことでノルマの達成も難しくなったことは事実で、携帯電話販売店の縮小/閉鎖の一因とはなり得ます。

 しかしノルマを達成しづらくなったのは他店も同様です。キャリアも現状はしっかりと理解しているので、現実離れしたノルマは提示しなくなりました。そのこともあって、以前とは違って、ムチャな目標設定をして「無理にでも達成させなければ!」という空気感はなくなりました。

 このことはキャリアのサービス設計とも連動していて、例えば「大容量プランを○件獲得せよ!」というノルマは相変わらずあるのですが、通信量が少ないと自動値引きするようになったので、以前と比べれば達成しやすい目標となっています。新しいノルマとして「クレジットカードの獲得」や「バーコード決済の新規登録」が加わりましたけど、当初は「本当に大丈夫か?」と思っていたのですが、利用できる店舗も多くなったことやサービス面でのメリットが伝わったこともあって、数字(≒ノルマ)を獲得するのは思ったよりも難しくなかったです。

 じゃあ何が問題かというと、結局は端末の販売台数が足りないがゆえに“全体の”ノルマが未達になるという所だと思います。細かい個別KPI(達成すべき指標)は達成できても、大枠である販売台数のKPIが達成できていないので「全部の獲得が足りない」ということでノルマ未達になってしまうと。そうなるとインセンティブが減額されてしまうので「骨折り損のくたびれもうけ」もいいところです。

 何だかんだで、結局は端末の販売台数が少ないと厳しいですね。

 意外なことに、ノルマは「端末が売れさえすれば達成できる」程度の無理のない設定になっているようだ。以前の「プレッシャーとして重くのしかかる」ノルマを課せられていた筆者からすると“隔世の感”すら感じる。

 しかし、ノルマの多くが端末販売台数の“内数”と連動する設計なのは相変わらずなので、内数は達成できても、大本となる販売台数が未達なので全体としては「未達」となり、結果としてインセンティブを減額されてしまうこともあるようだ。

ノルマ キャリアや上位の販売代理店から課せられるノルマに以前のような“むちゃ”はないものの、その設定方法の都合で「部分的に達成できても全体としては未達成」となることが多いという

 もう少し話を聞くと、昔とは別の観点の“予測不可能な”ノルマが厳しくなったともいう。

 以前はあまりなかったのですが、最近はサービスの「解約率」とか「残存率」がノルマに組み込まれるようになりました。簡単にいえば獲得/継続してもらったサービスを一定期間契約しないとインセンティブの“戻し入れ”、つまり返金を求められるのです。

 料金プランにしろオプションサービスにしろ、お客さまがその場で合意して加入/継続してくださったとしても、家族の反対や家計の状況から短期間で内容の変更や解約をされるケースはあります。特に回線契約の場合、特に音声通話プランだと「縛り」を設けることが事実上できなくなっているので、短期間解約も容易にできてしまいます。

 プランやサービスの変更/解約は、基本的に私たちの目の届かない所で行われますが、それでもキャリアが設定した最低契約(継続)期間未満になってしまうと、戻し入れがは発生します。私たちが予測できない所で戻し入れが発生し、その額も読めないので非常に困ります。

 このような戻し入れの影響を最小限に抑えるには、「うれしい悲鳴が出るほどに端末とサービスを売る」という選択肢しかなく、結局そのことが店舗としての持続可能性を奪ってしまう(閉店につながる)原因となってしまっているんだと思います。

 ただでさえ端末が売れない中、何とか端末を売ることができ、インセンティブ対象となるサービスを契約/継続してもらったとしても、それを素直に喜べない――運営費としてインセンティブをあてにできない状況も、店舗の閉店を加速する一因となっている。

解約のイメージ 販売や契約の獲得ノルマに付帯して、サービスの「解約率」「残存率」も確認されるケースも増えている。販売店側ではプランやサービスの変更/解約のコントロールはできないものだが、これが発生するとインセンティブの戻し入れ(返金)を求められることもある

「携帯電話ショップ」は減る一方か

 今回は思った以上に“生々しい”話を聞くことができた。話の大筋は「スーパーマーケットのテナントとして出店している店舗」だけでなく、他の形態/出店先の携帯電話販売店(コーナー)にも当てはまる。

 これだけ身近で、生活に欠かせない存在となった携帯電話だからこそ、購入や手続きをより身近な場所で行えることが重要だが、店舗を維持をするための仕組み、特に“お金”がそれを難しくしてしまっている。以前よりも厳しくないとはいえ、ノルマ達成の機軸となる販売台数を達成できないと店舗運営資金を得られない構造に変わりはない。

 以前なら売り上げを大きく立てられた店舗でも、時代や市場動向の変化によって顧客の獲得が難しくなり、閉店に追い込まれる――少しさみしいことだが、見方を変えると店舗が変化に追いつけなくなったという側面もあると思う。

 筆者個人としても、近場で懇意にしていた店舗のクローズは実に残念だが、この流れはしばらく止められないと考えている。その上で、従来とは違う店舗運営のための仕組み、変わっていくニーズに応えられる新発想の店舗が増えてほしいのだが……。

ショップ NTTドコモやau(KDDI/沖縄セルラー電話)では、キャリアショップにおいて「非通信領域」の商品を取り扱う動きが活発になっている。これも街に携帯電話ショップを“残す”上での取り組みの1つだ(写真はイメージです)
前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月28日 更新
  1. ダイソーで1100円の「USB Type-C to HDMIケーブル」でスマホの画面をテレビに映すとどうなる? 対応機種なら試してみる価値あり (2026年10月24日)
  2. 「iPhone Duo」は買いか見送りか――賛否 そんな中、登場した「iPad mini」は誰向け? (2026年10月27日)
  3. 新型「iPad mini」発表 有機EL搭載で防水にも対応、5.4mm/255gへと薄く軽くなって11万9800円から (2026年10月26日)
  4. 「Google Fitbit Edge」先行レビュー:画面付き、Google マップ対応の実力は? Fitbit Airとの1万円差を検証する (2026年10月27日)
  5. 「iPhone Duo」画面不具合の報告がSNSで話題 店頭デモ機の過酷な使用環境が起因か (2026年10月26日)
  6. iOS 27.2配信開始 Siri AIが日本語に対応 iPhone DuoはApple Pencilを利用可能に (2026年10月27日)
  7. 個人情報の流出にユーザーはどう備える? 乗っ取りやクレカ不正利用を防ぐ「3段階」の対策ガイド (2026年10月12日)
  8. 進化した「Siri AI」で感じた、iPhoneの操作を一変させる実力 「AI出遅れ」の汚名返上なるか (2026年10月24日)
  9. 折りたたみ「iPhone Duo」対応ケース12選 ヒンジ保護、スタンド付き、耐衝撃性能など多彩なラインアップ (2026年10月26日)
  10. 「Galaxy Z Fold8」「iPhone Duo」を“メイン端末”として使う上での課題 縦型コンテンツの最適化をどう進める? (2026年10月26日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー