カメラスマホの源流「LUMIX CM1」は10年後を予見した異端児だった 一方で“令和の後継機”も登場(1/2 ページ)

» 2024年03月30日 12時00分 公開
[佐藤颯ITmedia]

 昨今のスマートフォンはカメラ性能の進化が顕著だ。少し時代をさかのぼってみると、10年前に発売された“ある機種”のコンセプトが、今のカメラスマホと何ら変わらないことに気付く。今回はそんな10年前のカメラスマホ「LUMIX CM1」を今のスマートフォンと照らし合わせながら振り返ってみよう。

カメラ特化スマホという異端児だったパナソニック「LUMIX CM1」

 カメラ特化のスマートフォンを語る上で外せない存在が、パナソニックのLUMIX CM1だ。2014年9月のフォトキナで発表され、世界最薄の1型コンデジ、LTE通信可能な「コミュニケーションカメラ」として注目を集めた。

LUMIX CM1
LUMIX CM1 見た目はカメラ、画面側はスマホだ

 カメラとしては同社の2010万画素の1型MOSセンサーを採用し、専用ISPのヴィーナスエンジンも搭載。レンズはライカの「DC ELMARIT」を冠し、せり上がってくる沈胴式レンズを採用。開放でF2.8、可変絞りを採用してF11まで絞ることができた。最短撮影距離は10センチと「スマホとして使えるギリギリ」を攻めた。

 また、リング部を回転式のインタフェースとすることで、ズームや絞りなどの制御に割り当てることもできた。シャッターボタンはもちろん、どのような場面からもカメラを起動できるスライドキーも備えるなど、スマホというよりも「カメラ」として作り込まれている。47mm径のフードが利用できるなど、表現の幅も広げることができた。

LUMIX CM1 レンズは同社のLUMIXシリーズらしく「ライカ」を冠する
LUMIX CM1 フォーカスリングのように回転する機構を採用。この回転操作に各種機能を割り当てることができた
LUMIX CM1 シャッターボタンもしっかり備える

 カメラソフトウェアは専用機のUI(ユーザーインタフェース)をベースに、タッチ操作に最適化。オートモードはもちろん、絞り優先やシャッタースピード優先、各種シーンセレクトといった「カメラ」と同様の設定で撮影もできた。

 スマートフォンとしても高性能で、プロセッサは当時のフラグシップに当たるQualcommのSnapdragon 801(MSM8974AB)を採用。メモリ2GB、ストレージは16GBでmicroSDでのストレージ拡張が可能だ。ディスプレイは4.7型でフルHD解像度だった。OSはAndroid 4.4を採用し、後のAndroid 5.0へのアップデートも行われた。これは当時発売された「Galaxy S5」(Snapdragon 801、メモリ3GB)などに匹敵し、性能で劣ることは一切なかった。

 価格は2015年の日本発売当時で税込み13万円前後。2000台の限定販売だった。同世代のハイエンドスマートフォンではドコモの「Galaxy Note Edge」が9万3312円、SIMフリーモデルでは「Google Nexus 6」が7万5170円だったことを踏まえると、かなり高価な機種だった。

 後に同様のハードウェアのまま通話機能を廃して安価にした「LUMIX CM10」も発売された。通話はできないもののデータ通信は可能なため、LINE通話などに絞れば他のスマホと同様に利用できた。筆者も2016年からCM10を利用しており、幾多のカメラ特化スマホたちと比較してきた。

LUMIX CM1
LUMIX CM1
LUMIX CM1
LUMIX CM1

 今使ってみても写りの良さは一級品だ。当時のスマートフォンの枠を超えた存在なだけに、基本性能の高さで十分にカバーできている。低照度などではセンサーの世代の古さからノイズが目立つが、AI補正はほぼかけないので自然な写りと評価したい。

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