カメラスマホの源流「LUMIX CM1」は10年後を予見した異端児だった 一方で“令和の後継機”も登場(2/2 ページ)

» 2024年03月30日 12時00分 公開
[佐藤颯ITmedia]
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コミュニケーションカメラの考えは「当たり前」に 10年先を予見したLUMIX CM1

 スマートフォンよりも「コミュニケーションカメラ」と称して発売されたLUMIX CM1。当時のプレスリリースでは「日頃の生活シーンで出会う被写体を手軽に高画質撮影することができ、さらにLTE通信機能によりいつでもどこでもSNSへのアップをおこなうことも可能です」としており、SNSの普及が製品化の背景にあることがうかがえる。

 そんな機種の登場から10年が経過するが、今思えばその予見は的中した。手軽に写真をアップロードできるSNSも増え、通信環境も強化されたことで高画質な画像のアップロード、共有が手軽にできるようになった。そのような環境では「きれいに撮影できるスマホ」が求められたのだ。

 そこからのスマートフォンのカメラ性能はご存じの通り、多眼化をはじめとしたハードウェアの高性能化、AI処理も駆使した画像処理ソフトウェアの進化によって、大きな進化を遂げた。今ではLUMIX CM1と同じ1型サイズのイメージセンサーを搭載するスマホも現れており、中国のXiaomi、vivo、OPPOの他、日本でもシャープとソニーが一部の機種に採用した。今となっては採用機種は10以上を数える。

LUMIX CM1 LUMIX CM1以来では初の1型センサー採用スマホがシャープの「AQUOS R6」(2021年)だ

 可変絞りも、イメージセンサーの大型化に伴って注目される。当初は円形で2段階のものが多かったが、本格的な絞り羽を備える多段ステップ式の可変絞りもスマートフォンに採用され始めたのだ。この機構はHuaweiを皮切りに、今ではXiaomiも採用に踏み切った。

 また、フィルターを外付けできる機種も登場。純正では「Xiaomi 14 Ultra」が67mm径のフィルターを装着できる他、Galaxy やAQUOS、vivoなどでサードパーティーのアダプターやケースが展開されている。

 これらとスマートフォンのマニュアルモードを駆使することで、さらに表現の幅を広げることができる。LUMIX CM1がカメラとして振り切って備えた要素は「高画質な写真」を求めるニーズとともに当たり前になりつつあるのだ。

LUMIX CM1 2021年発売のソニー「Xperia PRO-I」。専用機のイメージセンサーや専用ISP、ガラス製レンズを採用するなど、カメラの特徴も強めに設計された。胸ポケットに収まる究極のスナップシューターとして、発売当時はLUMIX CM1の後継機と評された
LUMIX CM1 2024年発売の「OPPO Find X7 Ultra」。1型センサーを採用し、本体デザインもかなりカメラを意識した商品だ。ハッセルブラッドとの提携もあってスマホらしからぬ高い表現力を備える

画質だけでなく「カメラのフィーリング」まで備えた後継機に最も近い機種も

 今思えば、LUMIX CM1のコンセプトは時代を先取りしすぎたのかもしれない。パナソニックから「後継」と呼べる存在は登場していないが、このまま後継機を継続的に展開していれば、時代が味方してくれた可能性は高かった。それだけに1世代で終わったことが惜しまれる。

 一方で、高画質な写真をスマートフォンで撮影するニーズが一般化するにつれて、画質だけでなく「カメラのようなフィーリング」を求める層も出てきた。その声に応えてくれたのはXiaomiだと考える。

 特に2024年発売の「Xiaomi 14 Ultra」は、カメラハードウェアだけでなく「カメラ」としてのフィーリング要素まで強化した。本格的なカメラの撮影体験とスマートフォンの即応性を兼ね備える「コミュニケーションカメラ」の考えを今に伝えるスマートフォンだ。

 Xiaomi 14 Ultraは1型センサーと物理的な可変絞りを備え、レンズはライカのSUMMILUXを冠する。絵作りもライカが監修し、ソフトとハードともに高いクオリティーを持つスマートフォンだ。別売のカメラグリップを組み合わせるとシャッターボタンやダイヤルを備え、カメラさながらの操作感を獲得する(関連記事)。加えて67mm径のフィルターまで利用できるなど、LUMIX CM1の後継機に最も近い存在だ。

LUMIX CM1 Xiaomi 14 UltraはLUMIX CM1の後継に最も近いスマートフォンだ

 スマートフォンのカメラ性能はとどまるところを知らない。カメラフォンというカテゴリーも再注目される中、その大きなターニングポイントには日本のLUMIX CM1が大きく名を残した。「カメラフォンの最終進化系」といわれた異端児のコンセプトは、令和の今でもしっかりと生き続けている。

著者プロフィール

佐藤颯

 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。

 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。

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