スマートフォンよりも「コミュニケーションカメラ」と称して発売されたLUMIX CM1。当時のプレスリリースでは「日頃の生活シーンで出会う被写体を手軽に高画質撮影することができ、さらにLTE通信機能によりいつでもどこでもSNSへのアップをおこなうことも可能です」としており、SNSの普及が製品化の背景にあることがうかがえる。
そんな機種の登場から10年が経過するが、今思えばその予見は的中した。手軽に写真をアップロードできるSNSも増え、通信環境も強化されたことで高画質な画像のアップロード、共有が手軽にできるようになった。そのような環境では「きれいに撮影できるスマホ」が求められたのだ。
そこからのスマートフォンのカメラ性能はご存じの通り、多眼化をはじめとしたハードウェアの高性能化、AI処理も駆使した画像処理ソフトウェアの進化によって、大きな進化を遂げた。今ではLUMIX CM1と同じ1型サイズのイメージセンサーを搭載するスマホも現れており、中国のXiaomi、vivo、OPPOの他、日本でもシャープとソニーが一部の機種に採用した。今となっては採用機種は10以上を数える。
可変絞りも、イメージセンサーの大型化に伴って注目される。当初は円形で2段階のものが多かったが、本格的な絞り羽を備える多段ステップ式の可変絞りもスマートフォンに採用され始めたのだ。この機構はHuaweiを皮切りに、今ではXiaomiも採用に踏み切った。
また、フィルターを外付けできる機種も登場。純正では「Xiaomi 14 Ultra」が67mm径のフィルターを装着できる他、Galaxy やAQUOS、vivoなどでサードパーティーのアダプターやケースが展開されている。
これらとスマートフォンのマニュアルモードを駆使することで、さらに表現の幅を広げることができる。LUMIX CM1がカメラとして振り切って備えた要素は「高画質な写真」を求めるニーズとともに当たり前になりつつあるのだ。
今思えば、LUMIX CM1のコンセプトは時代を先取りしすぎたのかもしれない。パナソニックから「後継」と呼べる存在は登場していないが、このまま後継機を継続的に展開していれば、時代が味方してくれた可能性は高かった。それだけに1世代で終わったことが惜しまれる。
一方で、高画質な写真をスマートフォンで撮影するニーズが一般化するにつれて、画質だけでなく「カメラのようなフィーリング」を求める層も出てきた。その声に応えてくれたのはXiaomiだと考える。
特に2024年発売の「Xiaomi 14 Ultra」は、カメラハードウェアだけでなく「カメラ」としてのフィーリング要素まで強化した。本格的なカメラの撮影体験とスマートフォンの即応性を兼ね備える「コミュニケーションカメラ」の考えを今に伝えるスマートフォンだ。
Xiaomi 14 Ultraは1型センサーと物理的な可変絞りを備え、レンズはライカのSUMMILUXを冠する。絵作りもライカが監修し、ソフトとハードともに高いクオリティーを持つスマートフォンだ。別売のカメラグリップを組み合わせるとシャッターボタンやダイヤルを備え、カメラさながらの操作感を獲得する(関連記事)。加えて67mm径のフィルターまで利用できるなど、LUMIX CM1の後継機に最も近い存在だ。
スマートフォンのカメラ性能はとどまるところを知らない。カメラフォンというカテゴリーも再注目される中、その大きなターニングポイントには日本のLUMIX CM1が大きく名を残した。「カメラフォンの最終進化系」といわれた異端児のコンセプトは、令和の今でもしっかりと生き続けている。
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
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