前田氏の社長就任で、ドコモはスマートライフ領域と呼ぶ上位レイヤーのサービスを、より強化していく形になりそうだ。その組織形態として、ドコモは「コンシューマサービスカンパニー」を新設する。同カンパニーは、前田氏が率いてきたスマートライフカンパニーと営業本部を統合した組織で、決済サービスやコンテンツサービス、ヘルスケアサービスなどが、その下に置かれる。
こうしたサービス、コンテンツを担当する部署だけでなく、オンラインCX部やリアルチャネル戦略部といった、販売やユーザー接点を構築する部署もコンシューマサービスカンパニーの下に入る。いわば“前田シフト”ともいえそうな体制で、コンシューマー向けのサービスだけでなく、コンシューマーとの接点も一体となって運営していく方針だ。
では、前田氏はどのような方針でドコモの経営に臨んでいくのか。同氏は、就任時の会見で、「お客さま起点での事業運営を進めていきたい」と語った。ここで挙げられたのが、「通信品質でのご不満や、サービスの使い勝手などの不満など、1つ1つの声に誠実に向き合って解決していく」(同)ということ。また、「たくさんのパートナーの方とビジネスをしてきたので、それをリスペクトする」(同)という。
真っ先に言及したのが、同氏が得意とするコンテンツやサービスではなく通信品質だったところに意外感があったが、目下、ドコモが解決すべき一番の課題はここにあるということだろう。前田氏はこれまでスマートライフ事業を率いてきたため、「脱・通信を加速させるための就任」と評されることもある一方で、その基盤となる通信サービスを軽視しているわけではない考えを強調したようにも見えた。
筆者も記者会見やインタビューで前田氏から話を聞いたことがあるが、その率直な語り口は魅力的だ。スマートライフカンパニー長に就任した際には、コンテンツサービスがマンネリ化している点を認めつつ、「もっとアグレッシブにアップデートしていかなければいけない分野」と語っている。
金融・決済サービスについても、「決済は頑張っているが、それ以外を十分取り組んできたかというと、全然そんなことはない」と話しており、その後のマネックス証券やオリックス・クレジットの買収につながっている。前田氏は社長就任にあたり、「当事者意識を持ってチャレンジする」ことを自身の強みに挙げていたが、現場感覚やユーザー視点で課題を認識できる力は、社長就任後の強みになりそうな気がした。
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