Huaweiの新ハイエンドスマホ「Pura 70 Ultra」を試す 制裁下でこの性能は“魔法を使っている”と思わせるほど(4/4 ページ)

» 2024年06月02日 11時00分 公開
[佐藤颯ITmedia]
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制裁下でもここまでの製品を出してくる驚き Pシリーズ改め「Pura」シリーズはグローバル版も再展開へ

 2023年まで10年以上続いたPシリーズから名前を改め、より進化した“カメラ特化スマホ”となったPura 70シリーズ。カメラ以外のスペックの多くは“ブラックボックス”として発売したものの、発売当日分は公式ストアで2分もたたないうちに完売した。改めてHuaweiの人気の高さ、中国市場での強さを感じさせられた。

 筆者が5月の連休に中国の深センを訪れた際もPura 70シリーズの存在感は大きく、フラグシップストアは平日ながら多くのお客さんでにぎわっていた。どこのお店でも在庫はなく、予約して購入する必要があった。

Pura 70 Ultra 店頭はもちろん、野外特設体験ブースも展開されていた

 Pura 70 Ultraを使った感想は、Huaweiが制裁を受けてもなお、ここまで高いレベル製品を出せるのかという驚きだ。特にアピールしたカメラ性能はXiaomi 14 UltraやOPPO Find X7 Ultraといった同世代の競合に全く引けを取らない。カメラハードウェア、ソフトウェア含めた「技術のHuawei」をまざまざと見せつけられる格好になった。

 基本性能もプロセッサの進化で不自由ないくらいまで高められており、ベンチマークスコアなどからも2023年のP60シリーズなどに迫る高性能を見せつけている。制裁下でも高性能なスマートフォンを出し続けられることに驚きを隠せない。もはや何かの魔法でも使っているのではないかと思わせるレベルだ。

 一方で制裁の関係からGoogleサービスは満足に利用できない。全く利用できないわけではないが、われわれが普段から利用するスマートフォンに比べると使い勝手は大きく劣る。購入を考える場合は“使えないもの”と考えた方がよさそうだ。

 Pura 70シリーズではプロセッサやディスプレイ、バッテリーに加え、DRAM(メモリ)やNANDフラッシュ(ストレージ)をはじめ、各種計測センサーや指紋センサーなども中国製造の部品で構成されていることが判明している。

 このため、構成部品の60%が自国製だったMate 60シリーズよりも多くの中国製部品が採用されている可能性が極めて高い。今回レビューのPura 70 Ultraでもメインカメラの1型センサー(ソニー製)を除き、主要コンポーネントは全て中国メーカー製のもので構成されていることが判明している。最終的にHuaweiは、スマートフォンを構成する半導体や各種部品の自給自足を目指しているものと考えられる。

 さて、Pura 70 Ultraの存在は晴れて“復活のHuawei”と筆者は評価したい。Mate 60シリーズは「制裁を回避した商品」という意味で復活だが、Pura 70 Ultraは「スマホカメラのイノベーション」という意味での復活。かつてのP20 ProやP30 Proと同様の「ワクワクさせてくれるスマートフォン」なのだ。

 このPura 70シリーズは中国以外でも欧州や中東、東南アジアをはじめとした20を超える国と地域で販売されることが決まっている。これは自国製プロセッサを安定供給できることの現れであり、SMICの歩留まりが悪いと指摘される報道をはねのけることを意味する。

 一方で、グローバル版は中国大陸向けとは一部仕様が異なる状態で発売されるようだ。OSはHarmonyOSではなく、EMUI14.2に変更され、衛星通信機能などにも対応しない。加えて、香港キャリアのCMHKのサイトでは「Pura 70 Ultra 4G」とあることから、5G通信にも対応しないものと思われる。

Pura 70 Ultra 香港の場合、深センから多くの中国大陸版が流れ込むため、利用者のためにも明確に差別したものと思われる。これではまるで中国大陸版が「5G対応」と言わんばかりだ

 最後になるが、今回のPura 70シリーズの価格はPura 70で5499元(約11万7000円)から、Pura 70 Proで6499元(約13万9000円)、Pura 70 Pro+で8999元(約19万1000円)から、今回レビューしたPura 70 Ultraは9999元(約21万3000円)からとなる。

 Huaweiのスマートフォンは他の中国メーカーの製品と比較すると全体的に高価ではあるが、中国向けのiPhone 15 Pro Maxが9999元。Galaxy S24 Ultraが9699元(いずれも256GB)であることを考えると、最上位のPura 70 Ultraの価格も特別高価ではないことが分かる。中国メーカーの製品は品質や性能で劣ると指摘され続けたが、このスマホを見せつけられると、他国の高品質な製品に真っ向勝負できるところまで進化したことを痛感させられる。

 日本ではGoogle系サービスが満足に利用できない関係で「あえて買うか」と問われると微妙な選択になるが、Huaweiのスマートフォンのカメラに感じた「わくわくさ」をずっと追いかけ続けたファンを決して後悔させない仕上がりだ。

著者プロフィール

佐藤颯

 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。

 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。

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