4Gの上に4Gから転用した5Gを乗せ、その上にSub6の厚みを足したことで、「5Gの本丸が、いよいよ拡大している」状況だ。サービス開始から4年が過ぎ、ついにその本領を発揮しようとしているといえる。ただし、「2030年に向け、まだまだ基地局は増やしていく必要がある」(同)。前田氏によると、最終目標は4Gと並ぶ20万局。KDDIがその先に見据えているのは、5G単独で通信が可能になる「5G SA」の拡大だ。
同社では、2022年2月に法人向けの5G SAを開始。翌2023年4月には、コンシューマー向けの5G SAもサービスインにこぎつけている。ただし、現状ではまだまだエリアが狭く、エリアマップも提供されていない。利用可能な場所は、大まかな範囲の住所でしか公開されていない。
5G SAでは、ネットワークスライシングの導入などにより、サービスを多様化することが可能だ。前田氏も「5G SAは、サービスによってレールを引き分けられるスライシング技術に対応している。これが立ち上がってくると、いよいよ産業のニーズに応えられる」と語る。また、コンシューマー向けにも、「ゲームのストリーミングなどに使える」(同)品質を担保しやすくなる。
Sub6のエリアが十分拡大していなかったため、足踏みしていた5G SAだが、展開に本腰を入れるタイミングも近づいているようだ。前田氏は、「5G SAが本格的に始まるのは、来年度以降になるとみている」と話す。当面のメリットはスループットの向上や遅延の低下などだが、Sub6のエリアが十分広がり、5G SAやネットワークスライシングが導入されれば、より多彩なサービスが実現する。今は、そのための助走期間といえる。
一方で、調査会社の英Opensignalが4月に発表した2023年12月から2024年2月までのデータでは、「5Gエクスペリエンス」の項目や、「一貫した品質」でトップを走っていたのは、ソフトバンクだった。4Gからの周波数転用に積極的だったKDDIとソフトバンクはともに「5G利用率」でトップを取っていたものの、実体験では後塵を拝していた格好だ。ただし、これはSub6のエリアが拡大する前の状況。まずはこうした評価が、どのように変わっていくのかにも注目しておきたい。
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