結果として、ユーザーが体感できる品質は、大きく上がっているようだ。出力増加やアンテナの角度調整により、5Gの電波が-100dBm以下になるメッシュは東京23区だけで1万を超えた。ここまで電界強度が強くなれば、「電車内や屋内でもSub6をつかめるようになる」。当然、屋外であればその速度は大きく上がる。
-120dBmと電波が弱い場所も1万メッシュ以上あるが、東京23区内では4Gから転用したエリアはほとんどなくなってきたといえる。-120dBmのようなエリアでは屋内に入ると5Gが途切れてしまうものの、こうしたときには「無理をしすぎて通信を引っ張りすぎるとパケ止まりが起こってしまうため、すぐにハンドダウンするセッティングにしている」(同)。4Gから転用した5Gに引き継ぐことで、「快適な通信を続けられる」(同)という。
ここまで電波の状況がよくなると、まず通信速度が向上する。4Gから転用した5Gが実行速度で70〜100Mbpsにとどまっていたのに対し、Sub6をつかむことで約3倍の300Mbpsまで速度が上がり、通信が快適になる。また、遅延が減り、30ms以下の割合が92%にも達している。20ms以下とさらに低遅延になる割合も75%に上がり、この指標で他社をリードしていたソフトバンクに肉薄した。
衛星通信との干渉条件が緩和されたのは、関東だけではない。大阪、札幌、福岡、名古屋などでもそれぞれ出力増加やアンテナ角度の調整を行い、Sub6のエリアが拡大している。もともと、強い出力で電波を吹けていたエリアもあるため、関東だけを抜き出したときよりエリアの拡大率は下がるものの、全国レベルでも1.5倍に広さが増している。
発表会当日には、会場となったザ・プリンス パークタワー東京をカバーするSub6のエリアを実際に広げるデモも披露された。同ホテルには、複数の基地局から電波が届いているが、その内の1局が出力増強前の状態だった。そのため、屋外で5Gをつかんでいても、速度は100Mbpsを下回ることが多かった。以下は、筆者の端末(iPhone 15 Pro)で行ったスピードテストの結果。100Mbpsを超えるときもあったが、おおむね2桁の速度にとどまっていた。
ネットワークセンター側から遠隔で出力を上げ、完了後に速度を図ったところ、300Mbpsから400Mbpsまで高速化。出力を上げるだけで、品質はここまで改善される。エリアが広がったことで、上りの速度も10Mbpsを超えるようになった。ちなみに、前後の電界強度をGalaxy Z Fold5に入れたアプリで測定してみたところ、-106dBmから-87dBmまで電波が強くなっていることが分かった。このような品質改善が、全国各地で行われたというわけだ。その効果は、もともとSub6のエリアが限定されていた関東圏が、特に大きくなる。

iPhoneでは、電界強度を正確に取れないため、Galaxy Z Fold5のeSIMをpovo2.0に切り替え、数値をチェックした。出力増強前(左)は-106dBmとやや5Gの電波が弱かったのに対し、増強後(右)は-87dBmまで状況が改善している
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