KDDIはローソンと組んで何を仕掛ける? 携帯ショップの雇用問題解決にも? 株主総会で語られたこと(1/2 ページ)

» 2024年06月19日 22時56分 公開
[房野麻子ITmedia]

 KDDIが6月19日、都内で第40期 定時株主総会を開催した。2024年3月期の業績、41期の課題と取り組みなどについて説明。また、3つの議案(剰余金の処分、取締役12人選任、監査役4人選任)について採決が行われ、賛同を得た。ここではインターネットを通じて事前に株主から寄せられた質問とそれに対する回答、会場で行われた質疑応答について紹介する。

KDDI株主総会 KDDIが都内で第40期 定時株主総会を開催。インターネット配信も行われた(写真提供:KDDI)
KDDI株主総会 議長として議事を進行する高橋社長

ローソンと資本業務提携した背景や目的は?

 まずは事前に受けた質問から、株主の関心が高いと思われる3つの質問に対して回答した。

 1つ目は直近のKDDIの株価低迷について。株価向上のための策は打っているのかという質問だ。

 KDDIは、2019年6月末の終値を100%とした場合のKDDI株価と日経平均の推移を示したグラスを示して説明。KDDIの株価は日経平均に応じて上昇してきたものの、2024年2月のローソンとの資本業務提携発表以降、軟調となっている。こうした大型出資や、ミャンマー通信事業のリース債権の引当による業績が影響しているとの認識だ。

 ローソンへの出資については、目的や背景、シナジー効果などを理解してもらうために、説明会やミーティングを通じて説明を行っているという。早期にシナジーを出していくことに加え、中期経営戦略で掲げるEPS(一株あたり当期純利益)目標に向けて、着実に実績を積み上げることで、企業価値の向上と株主還元の強化に努めるとした。

 2つ目の質問は、ローソンと資本業務提携をした背景や目的について。

 回答として、KDDIが日本の抱える社会課題の解決に貢献する企業であるためには、これまで以上に顧客接点の強化が重要であるとし、現在の日本においてライフスタイルのプラットフォームでもあるコンビニを展開するローソンとの資本業務提携を行ったと説明した。

 資本業務提携の目的は、「AIやDXを利用したリアルテックコンビニエンスの実現」「約1万4600店舗にも及ぶ立地を活用した新たな付加価値の創出」「Ponta経済圏を活用した顧客基盤の拡大とサービス強化」の3つを挙げた。ローソンの業績は好調に推移しており、AIやDXにより、さらなる成長が期待できること。小売業界は顧客ニーズの多様化や労働力不足などへの対応が求められており、KDDIが有するさまざまなアセットの活用でローソンをデジタル面から支援することで、さらなる事業の成長に貢献できると説明した。

 また、KDDIとしても付加価値収入やDX事業の成長、ユーザーのリテンション強化やコスト効率化など、業績面でのプラス効果が見込めるとしている。

KDDI株主総会 2024年2月の資料より。ローソンを新たな顧客接点を持つ場として活用することも想定している

 3つ目は、2025年度から株主優待制度の内容を変更する理由についての質問。

 KDDIは2014年に株主優待制度を導入。現在はカタログギフトを優待として提供しており株主から好評だが、通信サービスや事業との関連性が乏しい点や、物流の2024年問題、食品や送料のコスト高騰といった外部環境の変化に課題を感じていたという。

 今後は、保有期間1年以上かつ保有株式数100株以上の株主が株主優待贈呈の対象。Pontaポイントと関連サービスの特典の中から1つ選ぶ方式となる予定だ。新優待でPontaポイントを選択した場合は、au PAYへチャージすることで現金同等に利用できるようになる。

 また、au PAYマーケットのポイント交換所を利用することで、最大1.5倍のau PAYマーケット限定ポイントに交換することも可能。これらはauの契約がなくとも利用可能だ。

 優待変更で以上のようなメリットを提供できる点や、同業他社の株主優待内容も踏まえて勘案したものと説明した。

ローソンとの取り組みで株主から“提案” リアルの接点は今後も重視

 資本業務提携したローソンについて、具体的な取り組みを尋ねる質問もあった。株主からはEVステーションとしての活用や無人コンビニが提案された。

 高橋氏は「ローソンは全国に1万4600店舗もあり、非常に身近な存在。指摘のあったEVステーションやeコマースの非常に簡易なものなどは、しっかり進めていきたい」と回答した。

 povoのように非対面での携帯電話契約が進むとリアルショップのニーズが低くなり、ショップスタッフの雇用確保が問題になると指摘。ローソンとの連携が問題解決につながるという株主の提言があった。

 パーソナル事業本部長の竹澤氏は、「ローソンさんしかり、auショップしかり、リアルの接点は今後も非常に重要」と回答した。

 「現在、ショップでは行政サービスのアドバイスも含めて、リアル接点としての機能を果たしている。引き続きリアルの接点は非常に重要だと考える。ローソンは現在1万4600店舗、auショップは2000店以上あり、お互いが補完し合い、お客さまに対して(サービスを)提供していくことが、今後、非常に重要になると思っている。これから行政のサービス、KDDIのサービスだと金融などのサービスが広がっていくので、そのフォローのためにもショップの雇用はしっかりと見て、守って、機能を果たしていきたい」

 高橋氏も「ラストワンマイル、リアルな接点は非常に重要」とコメント。「そういう意味で今回ローソンに出資させていただいた。1万4600店の接点を活用して何ができるのかを、今、真剣に議論をしている。この秋口には具体的なサービス内容を皆さんにお届けできると思う」と語った。

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