スマホ充電レンタル、便利なのに大半の人が知らないワケ 「ChargeSPOT」の認知度向上に必要なこと(1/2 ページ)

» 2024年06月21日 11時30分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 モバイルバッテリーシェアリングサービス「ChargeSPOT」を手掛けるINFORICHは、6月20日にメディア向けの勉強会を開催し、市場の概況などを説明した。

 勉強会に登壇したのはINFORICH取締役兼執行役員CFOの橋本祐樹氏。キャッシュレスFinTech子会社である、メルペイへの入社経験があり、予算の管理や管理会計構築の立ち上げに携わった経験を持つ。INFORICHには2019年12月に入社。国内コーポレート部門を統括している。

ChargeSPOT INFORICH INFORICHの「ChargeSPOT」。アプリでスタンドの場所を探し、モバイルバッテリーをレンタルできるサービスだ
ChargeSPOT INFORICH モバイルバッテリーのシェアリング市場の概況を、INFORICH取締役兼執行役員CFOの橋本祐樹氏が解説した

2018年4月開始のChargeSPOT、どのようなサービスか

 INFORICHは「どこでも借りられて、どこでも返せる」をコンセプトに2018年4月からChargeSPOTのサービスを提供している企業。利用者は専用アプリからバッテリースタンドの設置場所を確認し、スマートフォンやタブレットを充電可能なモバイルバッテリーをレンタルできる。スタンドは主要駅やコンビニ、携帯電話ショップなどに設置されている。決済はPayPay、d払い、au PAY、クレジットカードなどで行う。

ChargeSPOT INFORICH INFORICHの会社概要

 国内におけるスタンドの設置台数は約4万3000台となっている。専用アプリの累計ダウンロード数は全世界で1000万人となり、2023年10月にはレンタル数が月間150万となった。月間アクティブユーザー数は2023年と比べて40万人以上増えた。

ChargeSPOT INFORICH INFORICHの事業内容。バッテリースタンドを探すのに役立つ、ChargeSPOT専用アプリの累計ダウンロード数は全世界で1000万人となっている
ChargeSPOT INFORICH 日本だけでなく、子会社を通じて、中国本土、香港でサービスを展開している

外出先でスマホ充電ニーズが増加 スマホの買い替えサイクル長期化も影響

 ChargeSPOTの概況について、橋本氏は「外出中にスマートフォンを充電する需要がある」と前置きした上で、2018年のサービス開始以来、利用者が順調に増えていることを明かす。この要因は何か。

 橋本氏いわく、スマホの充電が切れる人が約3950万人となっており、うち1600万人は外出中に2回以上の充電を必要としているそうだ。スマホ中心の生活環境の中で、いかに外出中の充電ニーズが膨大なのかが分かる。

ChargeSPOT INFORICH 出先でスマホを充電する人が4000万人近くいる。1日に最低でも2回は充電する必要があるという

 この背景にあるのが「スマートフォンの買い替えサイクルの長期化や、高価格化である」と橋本氏は分析する。

 スマホのリチウムイオンバッテリーは約600回の充電回数で最大容量が80%に低下し、それを境に充電効果の急激な減少につながる。一方、物価上昇による端末価格の高騰に加え、新品端末の値引き規制が進んだため、バッテリー容量の低下だけを理由に端末を買い替えるハードルは高い。

 「スマートフォンの価格が高価格化しているし、2年に1回のペースで買い替えたい人が少ない。ヘビーユーザーの人は5〜6年ほど前の端末を使い続ける傾向にあり、バッテリーの容量が少なくなるタイミングで充電するペースが増えた」(橋本氏)

ChargeSPOT INFORICH スマートフォンのリチウムイオンバッテリーの経年劣化特性と、買い替えサイクルの長期化が出先での充電ニーズに関係している

スマホのバッテリー技術がスマホの進化に全く追い付いていない

 さらに、橋本氏は「スマホのバッテリー技術がスマホの進化に全く追い付いていない」ことを指摘する。「スマホのバッテリー容量の大容量化が進む一方で、1日当たりの平均消費電力量は102倍に増えた」と話す橋本氏は、この要因には「ディスプレイやアプリ、通信規格の進化」が含まれると説明し、「パワーギャップ」だと言い表した。

ChargeSPOT INFORICH スマホの消費電力量が増加する

 橋本氏はスマートフォンのトレンドとなっている「生成AI」も、バッテリーの消費に「影響を及ぼしている」と指摘し、生成AI搭載スマートフォンと非搭載スマートフォンとでバッテリーの消費量がどれほど異なるのかを調査した結果を示した。

 調査では従来型のスマートフォンとして生成AIを搭載しない「Xperia 1 V」を、生成AIを搭載した「Galaxy S24」「Pixel 8 Pro」を用意し、AIに関する機能を同じ条件下で使用し、消費電力量の差を検証した。リアルタイム翻訳では約30分の音声データとして記録された会話内容を翻訳し、画像生成は30回、音声消去は30回行った。

ChargeSPOT INFORICH 「Xperia 1 V」「Galaxy S24」「Pixel 8 Pro」の3機種でバッテリー消費量を比較。このうち、Xperia 1 Vを生成AI非搭載スマホ、Galaxy S24とPixel 8 Proを生成AI搭載スマホと位置付ける

 この結果、生成AI搭載スマホの方が非搭載スマホよりも多くの消費量だと分かった。橋本氏は「今後さらに、AI搭載スマホが増えることから、スマホを充電するニーズも高まる」と予想している。

ChargeSPOT INFORICH 生成AI搭載スマホの方が非搭載スマホよりも消費電力量が多いと分かった
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