急ピッチで導入したため、まだまだ積み残している課題もある。プラチナバンドでサービスを開始したとはいえ、現時点での基地局数は、世田谷区(東京都)に開設した1局のみ。しかも、電波は1セクターになっている。通常の基地局は、3セクターなり6セクターなりに分割し、1つの基地局で広いエリアをカバーする。細かく分けて電波を吹けば、その分だけ周波数の利用効率も高まる。
まず、セクター数に関しては「今回はスピードを優先させた。700MHz協会のプロセスを短縮できるよう、あまりテレビ受信に影響がないところを選んだ」(大坂氏)という。竹下氏も、「最速で今年の6月を目指していた。その前提で何ができるかを示し、少しでも早くマーケットに対してメッセージを出し、技術的な立証もしかった」と語る。1セクターは通常の運用ではなく、あくまで開始を急いだためだ。「今後は3セクター化していく」(同)のが、楽天モバイルの方針だ。
【更新:2024年7月1日15時00分 「700MHz協会のプロセスをスキップ」を「700MHz協会のプロセスを短縮」に、「技術的な検証」を「技術的な立証」に変更いたしました。】
基地局数はどう拡大していくのか。大坂氏によると「基本的には都市部といっても、まずは大都市圏になる」という。関東圏でいえば「東京が多く、そこから少しずつ広げていく」(同)イメージになる。上記のように700MHz帯は干渉対策も必要になるため、楽天モバイルの思惑だけでは基地局を設置できない。そのため、「既存の1.7GHz帯に併設する形で、徐々に開設計画にある通りにしていく」(同)。
他社の場合、地方では鉄塔を建て、その上でプラチナバンドの電波を出し、面的なカバー範囲を広げている。これに対し、楽天モバイルは都市部を中心に計画を立てているのが大きな違いといえそうだ。ただし、「郊外に展開にするにあたっては、「そういったオプション(鉄塔)も出てくる」(竹下氏)。一方で、これはまだ検討段階。「3MHz幅を考慮しなければならず、広く飛びすぎて多数の端末を収容すると、体感品質が悪くなってしまう」(同)恐れはある。
また、対策は取ってあるとはいえ、都市部でも人が密集している場所に700MHz帯だけが飛びすぎてしまう可能性は残る。竹下氏も「その懸念はごもっとも」としながら、「他社の事例も見ても、プラチナバンドは吹きだまりのようにたまってしまうことがある」と語る。
パケ詰まりが起こりやすいのは、こうしたエリアだ。そのため、楽天モバイルでも「あえて1.7GHz帯を足して、少しでも700MHz帯の負荷を下げることはやらなければいけないと思っている」(同)という。現状ではまだ住宅地にとどまっているため、その知見を蓄積し、計画を立てるのはこれからだ。
竹下氏が「マーケットに対するメッセージ」と語っていたように、現時点でのプラチナバンドはマーケティング的な意味合いの方が強いことがうかがえる。チューニングにも時間がかかるため、エリアの広がりを実感できるレベルになるには、まだ時間がかかりそうだ。とはいえ、スタート地点に立つことができたのも事実。発表会では、代表取締役社長の矢澤俊介氏が「このペースでどんどんスピードを上げていきたい」と語っていたが、その進展を期待して見守りたい。
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