世界を変える5G

楽天モバイルに聞く、通信品質向上の取り組み 5G基地局は1万局を突破(1/2 ページ)

» 2023年10月16日 11時14分 公開
[田中聡ITmedia]

 楽天モバイルのモバイル回線は、4Gでは1.7GHz帯、5Gでは3,7GHz帯と28GHz帯を運用している。同社はサービスイン当初からネットワークの仮想化を進め、効率よくエリア拡大を進めてきた。

 一方、4Gの対応周波数が1.7GHzのみで、屋内でつながりやすいプラチナバンドは保有しておらず、既存3キャリアと比べて不利な状況にあることは変わらない。KDDIのローミングを加えると人口カバー率は99.9%に達するが、ローミングで使うのは800MHz帯のみで、ユーザーに高速通信を体感してもらう上で自社エリアの拡大は欠かせない。また、5Gを利用できるエリアは日本全土で見るとまだ点在的で、3キャリアに後れを取っている。

 他社を見ると、ドコモで繁華街を中心に通信品質が低下する事象が起きており、大手キャリアといえども安泰ではない。コロナ禍が終息して都心部で人流が戻り、コンテンツがリッチ化することで1人あたりのデータ利用量も増えつつある。そうした環境下で、楽天モバイルはどのようにネットワーク品質の向上に努めているのだろうか。楽天モバイル 執行役員 副CTO 兼 モバイルネットワーク本部長の竹下紘(ひろし)氏に話を聞いた。

楽天モバイル 楽天モバイル 執行役員 副CTO 兼 モバイルネットワーク本部長の竹下紘氏(写真提供:楽天モバイル)

5G基地局は1万局を突破 24年3月に向けてエリア拡大を加速させる

 楽天モバイルの4G基地局は、2023年6月時点で5万8343局が開設しており、楽天回線のみの人口カバー率は98.7%に達した。5G基地局は2023年6月時点で1万129局が開設しているが、カバー率は公表していない。同社が総務省に提出した、5G基地局の認定開設計画は2023年度が最終年となるため、「2024年3月に向けて、(5Gの)局数を増加させていきたい」と竹下氏は意気込む。

楽天モバイル 4G基地局は5万8000局を突破し、楽天回線だけの人口カバー率は98%を突破した
楽天モバイル 5G基地局は1万局を突破した

 楽天モバイルでは、無線アクセス設備を仮想化することで、基地局をよりコンパクトに設置可能にしている。さらに、オープンな規格に準拠してネットワークを構築するOpen RANも取り入れており、特定のベンダーに縛られることなく、柔軟なネットワーク構築が可能になる。実際、楽天モバイルでは国内外の多様なベンダーから32万以上のネットワーク機器を導入している。国内ベンダーではNECの機器を目立つが、4Gの屋外基地局はノキア製品、エリアを補完する装置には韓国KMWの製品を採用している。

楽天モバイル 基地局に接続する無線アクセス設備を仮想化することで、より基地局を小型化できる
楽天モバイル さまざまなベンダーのシステムや機器と接続できるOpen RANも取り入れており、海外ベンダーの製品も多数採用している

Opensignalの調査では、4Gの上りと5Gの下り/上りが3キャリアの平均値を上回る

 気になる通信品質だが、調査会社のOpensignalが4キャリアの通信品質を調査したところ、4Gのダウンロード速度は3キャリアの平均を下回ったが、4Gのアップロード速度、5Gのダウンロード速度とアップロード速度は楽天モバイルが3キャリアの平均を上回る結果となった。「(当初は)基地局整備が追い付いていなかったが、2022年以降、積極的な基地局展開とチューニングによって差を抑えられてきた。まだ埋めるべき隙間があるので、他社に追い付け追い越せで進めている」(竹下氏)

楽天モバイル Opensignalの調査では、4Gの上り、5Gの下りと上りは3キャリアの平均を上回る結果となった

 電波を受信できない時間は、楽天モバイルは3キャリアの平均よりも高い数値のままだが、2022年に最も高かった1.68%から、2023年は0.91%にまで下がっており、0.4台を推移している大手3キャリアとの差が縮まりつつある。また、総トラフィックにおける楽天回線とローミング回線の割合は、楽天回線が年々増えており、2023年には94%を超えている。ローミングは文字通り、エリアの穴を埋める措置であり、大半のトラフィックは楽天回線でさばいていることが分かる。

楽天モバイル 楽天回線で電波を受信できない時間は徐々に下がっている。ローミング回線と楽天回線の比率は、楽天回線が上がってきている

 Opensignalの調査では、9項目を都道府県別にランク付けをしている。楽天モバイルは34県で9項目中、5件以上で最上位のランク1を獲得しており、鹿児島県と新潟県では全項目でランク1を獲得した(他社との同率1位もある)。さらに、楽天モバイルは上りの通信速度で41都道府県がランク1を獲得。他社は2件、3件、5件だったので、大きな差がついた形だ。上りが好調なのは、1.7GHz帯の20MHz幅をフルに活用することが大きいという。

楽天モバイル 楽天モバイルは34県で、9項目中5件以上のランク1を獲得した
楽天モバイル 上りは楽天モバイルが速いという結果に。これは1.7GHz帯だけを使っている点が逆に有利に働いた

 総合的な評価である「一貫した品質」に関しても、楽天モバイルが4キャリアで最も多い29都道府県でランク1を獲得している。

楽天モバイル 「一貫した品質」でランク1を獲得した都道府県数

 Opensignalが2023年1月1日から9月23日まで、通信のレンテンシー(遅延)とパケットロスを調査したところ、レンテンシーは最も高かった1月の48.33msから9月は43.49msまで改善している。またパケットロスは最も高かった2月の1.42%から9月は0.35%まで改善しており、「他キャリアと遜色ないレンジ」(竹下氏)だという。

楽天モバイル 遅延とパケットロスは減少傾向にある

全ての基地局で4×4 MIMOを導入、都市部では1局あたりのカバー範囲を調整

 楽天モバイルの通信品質が改善していることは調査結果からも分かったが、4Gは1.7GHz帯のみでどのようにエリアを拡充しているのだろうか。竹下氏は「全ての基地局で4×4 MIMOを導入しており、1局でカバーできる範囲が広い」と説明する。その一方で、都市部は高密度なエリア展開をしており、「1局あたりのユーザーが少なくなるようメリハリを付けている」という。これにより、トラフィックの多い都市部でも高いスループットが出ることが期待される。

 一方で、5Gは4Gの基地局も連携させたNSA(ノンスタンドアロン)で運用しているが、トラフィックが増えると、アンカーバンドとして使っているLTEが混雑してつながりにくくなる場合がある。竹下氏は「(バンドが)1種類しかないので、アンカーバンドの混雑は該当しない」と説明する。「5Gにトラフィック流れづらくなって詰まることはあるが、5Gを通信可能とするしきい値を厳しめに設定し、4Gと5Gの入れ替わりが発生しないようにしている。局ごとのチューニングで、気持ち4Gに寄せるような運用にしている」(同氏)

 都心部では、街の再開発によってエリア設計が崩れる場合があり、楽天モバイルも「影響はゼロではない」が、「その(再開発の)情報については、リアルタイムで入手して先手を打てるようにしている」と竹下氏。エリア設計の軌道修正をする場合、新たに基地局を建設する必要があるが、「サイト(基地局の用地)獲得を全力でやっている。営業の力を借りながら、総力戦でかわりのサイトを見つける」とのことで、エリア拡大には地道な取り組みも求められる。

 音楽フェスやコミケなど、局所的に人が集まる場所での対策も気になるところだが、「全国のイベントは一元管理している」と竹下氏。「例えば花火大会は大規模なので、車載基地局を派遣して、ルーティンで回している。通信品質はリアルタイムで監視しおり、ユーザーからも、『比較的につながる』という声をいただいている」(同氏)

 ネットワーク品質の状態を可視化することも重要だ。他社は、位置情報を取得できるアプリやSNS、AIなどを活用して、通信品質をリアルタイムで確認したり、トラフィックが増える予兆を検知したりしているが、楽天モバイルでは「Opensignalの調査データを定期的に入手・活用し、データの可視化を行っている」(竹下氏)とのこと。

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