楽天モバイルの最大の強みともいえる、国内通話が無料でかけ放題となるコミュニケーションアプリ「Rakuten Link」。これまで、ネット上では通話品質や着信の不具合などに関する厳しい声も一部で上がっていたが、楽天モバイルは4月20日から順次アップデートを実施し、通話品質を大幅に向上させたことを明らかにした。
楽天モバイルが5月26日に開催した説明会では、Rakuten Linkの進化の歴史や楽天エコシステムとの連携に加え、直近で行われた通話品質の大幅な向上について、実演デモンストレーションを交えて詳細な説明が行われた。質疑応答の場では、どのような技術的アプローチで品質が改善されたのか、そして品質が向上したとする客観的な根拠は何なのかについて質問が飛んだ。担当者らの発言をもとに、Rakuten Linkの通話品質向上の裏側に迫りたい。
勉強会のプレゼンテーションに登壇した、楽天モバイル Link部 Platform Quality&Experience課マネージャーの渡部翼己氏は、今回のアップデートによる具体的な改善数値を発表した。
渡部氏によれば、新しいバージョンのRakuten Linkでは、移動中における通話品質を示す指標において、前バージョンと比較してRakuten Link同士の通話で26%向上、他社携帯電話や固定電話への通話で16%向上という大幅な改善が見られたという。さらに、通話が確立するまでの接続時間も短縮された。
また、通話品質向上の一環としてノイズキャンセリング機能が強力にチューニングされたことも大きなトピックだ。勉強会では、その実力を証明するためのデモンストレーションが行われた。
デモでは、渡部氏が会場の壇上から、別室にいる楽天モバイル Link部 シニアマネージャーの山田彩氏のスマートフォンにRakuten Linkで発信。山田氏の側では、iPhoneのスピーカー音量を最大にしてテレビの砂嵐のような大音量のノイズを鳴らし続けるという過酷な通話環境が意図的に作られた。
勉強会ではRakuten Linkの進化の歴史や直近で行われた通話品質の大幅な向上について実演デモンストレーションを交えて詳細な説明が行われた。別室にいる楽天モバイル Link部 シニアマネージャーの山田彩氏(写真=左)と、説明会場でプレゼンテーションを行う渡部氏(写真=右)「大体これぐらいのうるさい環境での通話になると、何ですか、もう1回言ってくださいといったことが多く発生すると思う」と渡部氏は語ったが、実際にRakuten Link経由でスピーカーから聞こえてきた山田氏の声は、背後の強烈なノイズがきれいにかき消され、非常にクリアに聞き取れる状態だった。ターミナル駅や空港などの騒音環境下でも、相手にしっかりと声が届くことが実証された瞬間だった。
質疑応答では、記者から品質向上に対する具体的な技術的背景や、根拠となる数値指標についての質問が出た。
今回、音質向上にあたり、3つの改善を行ったという。
1つ目は基地局と基地局のはざまにおけるネットワーク接続の安定性の向上だ。これは楽天モバイルのネットワーク全体としての継続的な取り組みだ。2つ目は、アプリ内における音声の暗号化技術の改善だ。そして3つ目が、デモでも披露されたノイズキャンセリング機能の実装だ。渡部氏は、これらアプリの内外における総合的な技術改善によって、移動中の指標が26%および16%向上したと説明した。
電話サービスにおいて総務省も定めるMOS値(音声品質を評価する客観的な指標)の数値でどれほど改善されたのか、VoLTE(標準電話アプリでの高音質通話)と比べてどうかといった質問も出た。
これに対し渡部氏は、「実際のMOS値が何であるかは開示できない」と前置きしつつも、楽天モバイルが品質向上を宣言するにあたっての数値以外の根拠について次のように話した。
「私たちがバージョンをリリースする際、特に今回のような具体的な通話品質のアップデートをする際には、必ずVoLTE標準電話アプリの通話と同じ箇所、同じタイミングで合わせて、しっかりと数値を並べた検証を行っている。その上で、自信を持ったクオリティーで品質をリリースさせてもらっている。VoLTEの実際の数値と本当に遜色はないと思っている。自信を持っている」
つまり、アプリ内の数値改善だけでなく、大手キャリアの標準電話アプリ(VoLTE)と実地で並行テストを行い、同等の品質水準に達していると確認できたことこそが、楽天モバイルが品質が大幅に向上したとアピールする最大の根拠となっているのだ。
スマートフォンのスペック(ローエンド端末など)によって、ノイズキャンセリングなどの効果に差は出るのかも気になる点だ。
これについて渡部氏は、「お使いのチップセット等により、ノイズキャンセリング機能などが反映されやすいハイエンド端末との差が出ることはテスト段階でも認識している」と認めた上で、「比較的ローエンドの端末をお使いのお客さまにおいても、そのときのネットワークで最適なビットレートやノイズキャンセリングを自動で選択して通話できるように制御を入れている。この携帯を使っているから極端に品質が悪い、といったことがないように調整をしている」と回答し、端末の性能格差を吸収する工夫が施されていることを明かした。
さらに、強力なノイズキャンセリング機能ゆえか、手動でオンとオフを切り替えるスイッチが見当たらないが、あえて周囲の音を相手に伝えたいとき(工事の音やコンサート会場の熱気など)はどうすればいいのか。
渡部氏は「人の声を認識するような口元と端末が近い距離の場合は、自動で人の声が優先され、オフにはできない。しかし、端末を口元から離してスピーカーフォンにしたり、通話者の声が入らないように距離を取ったりした場合には、実際の環境音が入るように調整されている」と答え、シチュエーションに合わせて自動で最適化される仕様になっていると説明した。
今回の通話品質向上はコンシューマー向けのスマートフォン版Rakuten Link(AndroidおよびiOS)が対象となっており、既に最新バージョンを利用することでその恩恵を受けることができるという。
一方で、法人向けのRakuten Link Officeについては、「現在検討を進めているが、今回の品質向上はまだ実装されていない」(渡部氏)とのこと。デスクトップ版についても「各バージョンのリリースでパフォーマンスや暗号化の改善は継続的に行っているが、今回のスマホアプリ向けの具体的なアップデート内容は含まれていない」とし、ビジネス向けやPC環境への展開は今後の課題であることが示された。
楽天グループ エコシステムプロダクト戦略企画部 シニアマネージャーの山田浩史氏は「Rakuten Linkは楽天モバイルユーザーと楽天エコシステムをつなぐ架け橋のような存在でありたいと考えている。今後はよりエコシステムの拡大に貢献するアプリにしていきたい」と語った。
通話料無料という圧倒的なメリットを持つRakuten Link。長年の課題だった通話品質という電話としての根幹機能が底上げされた。これを機に、楽天モバイルが掲げる「楽天のスーパーアプリ構想」へとさらに近づいていくのか注目したい。
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