冒頭でApple Intelligenceへの対応は2025年になると書いたが、AIを使った一部の機能はきちんと実装されている。計算機は、その1つだ。iOS 18の計算機は、いわゆる電卓としてだけでなく、手書きの計算メモとしても利用することが可能だ。四則演算はもちろん、平方根や累乗、三角関数などの計算も一瞬でできる。やや動作が重いのは、パブリックβだからかもしれない。
うれしいのは、通貨の換算に対応しているところだ。計算機の切り替えメニューをタップし、「換算」をオンにすると通貨が表示される。為替レートは、米Yahoo!fainanceのものを参照しているようだ。他にも、角度や面積、エネルギーなどの単位などの変換を行うことができる。サードパーティーのアプリに近いものはあるが、標準アプリにこうした機能が組み込まれるのは便利。単純な換算アプリとは違い、そのまま計算がしやすい点も評価できるポイントだ。
同じくAIを駆使した機能としては、留守番電話のリアルタイム文字起こしが日本語で利用できるようになった。この機能はiOS 17で対応していたが、当初は英語に言語が限定されており、日本語は非対応だった。肝心の精度はまだ向上の余地があるものの、どんな内容が吹き込まれたかの類推をすることは可能。今後の改善にも期待したいところだ。
iOS 18では、写真アプリも刷新されている。顔検出を使った「ピープル」や、思い出を自動で表示する「メモリー」などの項目は、全て画面下部のウィンドウにまとめられ、縦スクロールで表示していく形式になった。これまでの「For You」タブや「アルバム」タブが統合され、「ライブラリ」からスムーズに呼び出せるようになったといえる。SNSなどで多い縦スクロールを全面的に取り入れることで、操作体系を刷新した格好だ。
Appleはひっそりとしか発表していなかったが、メッセージアプリがRCS(Rich Communication Services)に対応しているのも、iOS 18の新たな機能だ。どちらかといえば競合のGoogleが歓迎している印象が強かったが、晴れてiOSでも、AndroidとRCSでメッセージをやりとりすることが可能になっている。ただし、パブリックβ版では、これを利用することができなかった。
これは、機能が実装されていないわけではなく、キャリア側の対応が必要になるためだろう。米国では、RCSをサポートするキャリアに接続すると、メッセージアプリの設定にRCSを有効にするボタンが表示されるというレポートが挙がっているが、筆者がauと楽天モバイルで試した限り、そのような設定は表示されなかった。
AndroidのGoogleメッセージはIMSと呼ばれるメッセージを制御するシステムをGoogle側が運用しており、Googleが直接提供しているケースと、キャリアがそれを利用しているケースに分かれる。これに対し、iOSのメッセージアプリではキャリアがそれを担うようだ。RCSが標準化された際に想定されていたのはメッセージアプリのような対応方法だが、日本では3キャリアが「+メッセージ」を導入済み。iOSのメッセージアプリに対応するかは、不透明だ。この点がどうなるかは、キャリア側の発表を待つ必要がある。
【更新:2024年7月20日13時00分 Googleメッセージについて、一部加筆修正いたしました。】
ホーム画面やコントロールセンターを大きく変えたiOS 18だが、細かなアップデートも多い。見た目だけでなく、使い勝手も変わる可能性が高く、正式版の登場にも期待が高まる。ここにApple Intelligenceが加われば、これまでとは別物のOSと感じられるようなものになるはずだ。とはいえ、日本がその恩恵にあずかれるのは、もう少し先の話。OSにAIを全面的に取り込むため、例年以上に不確定な要素が例年以上に多くなっているといえそうだ。
「iOS 18」発表 ホーム画面やコントロールセンターを刷新、アプリの非表示も可能に
「iOS 18」ではホーム画面の好きな場所にアプリを配置OK 「神アプデ」の一方で「Androidの何周遅れだよ」との声も
「iOS 18」の対応機種はiOS 17と同じ、iPhone XS/XRは今年も対応
iOS 18で「メッセージ」アプリがRCSに対応 Androidとも送受信可能に
AppleのAI戦略発表はなぜ他社より大幅に遅れたのか 「Apple Intelligence」の真価を読み解くCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.