OSはAndroid 14を搭載。発売日から最大3回のOSバージョンアップと5年間のセキュリティアップデートを約束している。5000mAhの大容量バッテリーは約130分で充電が完了し、長時間の使用にも耐える。通信面では5G Sub6に対応し(ミリ波は非対応)、最新のWi-Fi 7規格もサポートしている。さらに、IPX5/IPX8/IP6Xの防水・防塵(じん)性能とMIL規格準拠の耐久性も備えており、タフな使用にも耐える設計となっている。
AQUOS R9はプロセッサとしてSnapdragon 7+ Gen 3を採用している。最上位の8シリーズではないことから、発表時点でパフォーマンス不足を懸念する声が一部にあった。しかし、実機で確かめた結果、筆者は日常的な使用では全く問題なく、十分な性能を担保していると考えている。
Snapdragon 8シリーズとの性能差が現れる場面としては、例えば、Xのタイムラインで動画プレビューを一斉に読み込むような状況がある。このシーンでは、並列処理能力、メモリ帯域幅の大きさ、動画デコーディング処理の高速性が同時に求められる。上位チップセットはこれらの面でより高い性能を発揮するが、Snapdragon 7+ Gen 3も日常的な使用では十分な能力を持つ。体感として差を感じることはほとんどないと思われる。
ゲームプレイにおいても、Snapdragon Gamingによる最適化のおかげで快適な動作を実現している。実際に『原神』を「画質→最高、フレームレート→60fps」の設定で30分ほどプレイしてみたところ、排熱により本体がほんのり暖かくなる程度で、快適にゲームを楽しむことができた。
AQUOS R9の性能を支える要素として、熱設計にも工夫が施されている。今回は冷却部材として、ハイエンドスマホでは一般的になったベイパーチェンバーを採用。CPUが配置されているFeliCaマーク周辺から効率的に排熱を行っているようだ。また、12GBのRAMと256GBのUFS 4.0ストレージの組み合わせが、スムーズな操作性の実現に一役買っている。
実機での使用感に加え、客観的な数値でもAQUOS R9の性能を検証してみた。Geek Bench 6.3.0のCPUテストでは、AQUOS R9はシングルコア性能で1844、マルチコア性能で4920というスコアを記録。これは1年前のハイエンド端末「Galaxy S23」に匹敵するスコアで、計算性能では最上位機種にも劣らないことが裏付けられた。
グラフィック描画性能を検証する3D Markでは、通常モードの「Wild Life」でスコアは上限に達した。上位モードの「Wild Life Extreme」ではスコア2857、平均フレームレート17.11FPSを記録した。

AQUOS R9はGeek BenchでGalaxy S23に匹敵するスコアを残した(写真=左)。AQUOS R9は3D MarkのWild Life Extremeテストで平均17.11FPSを記録した(写真=右)同時期発売の「Galaxy Z Flip6」と比較してみた。Snapdragon 8 Gen 3 for Galaxy搭載、メモリ12GBと性能面ではトップクラスの機種だ。
| テスト項目 | AQUOS R9 | Galaxy Z Flip6 |
|---|---|---|
| Geek Bench (シングルコア) | 1853 | 1801 |
| Geek Bench (マルチコア) | 4973 | 5917 |
| 3D Mark Wild Life Extreme (スコア) | 2857 | 4427 |
| 3D Mark Wild Life Extreme (平均FPS) | 17.11 | 26.51 |
Galaxy Z Flip6はGeek Benchのシングルコア性能以外でAQUOS R9を上回るスコアを示した。3D MarkのWild Life Extremeテストでは平均FPSで大きく上回り、性能差が視覚的にも示された。Wild Life Extremeは現行のモバイルデバイスにとっては非常に負荷の高いテストだが、次世代のハイエンドゲームではこのような高度なグラフィック処理が求められる可能性がある。その将来を見越してGalaxy Z Flip6のような最上位クラスを選ぶ意義もあるといえる。
一方で、価格面では、AQUOS R9のSIMフリー版が約10万円、Galaxy Z Flip6が15万9700円と、約6万円の差がある。Galaxy Z Flip6は折りたたみ機能とより長期のセキュリティアップデート(7年間)を提供するので一概には比較できないものの、AQUOS R9はコストパフォーマンスに優れている。両者ともに、それぞれの価格帯で競争力のある製品といえる。
AQUOS R9には「しっくりくる」という表現がよく似合う。日常になじむデザインと実用的な高性能を絶妙なバランスで両立させているからだ。
Pro IGZO OLEDディスプレイが生み出す滑らかな画面表示は、長時間の使用でも目に優しく馴染む。ライカ監修の自然な色味のカメラは、現実の風景を見たままに撮りたい人の感性に寄り添う。新たに搭載された「伝言アシスタント」機能は、生成AI活用の第一歩として、将来的な機能拡充への期待を高めている。
最上位チップセットは搭載していないものの、まごうことなくフラグシップの性能を確保している。その上で、現実的な価格に抑えた。
確かに、先代の「AQUOS R8 Pro」の1型センサー搭載カメラのようなとがった特徴はない。しかし、それこそがAQUOS R9の強みだ。使う人の生活をさりげなくサポートし、長く使い続けたくなる生活家電のような存在感。派手さはないが、日々の暮らしに寄り添い、いい引き立て役となる。
AQUOS R9は、まさに「生活に溶け込むスマートフォン」の理想形といえる。使えば使うほど手放せなくなる、そんなスマートフォンだ。
(製品協力:シャープ)
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