前年度比約2.3倍に出荷台数を伸ばし、日本市場でシェアを拡大しているメーカーがある。モトローラだ。フラグシップモデルのrazrはもちろん、ミッドハイのedgeシリーズやミドルレンジのmoto gシリーズを満遍なく投入できたのがその要因の1つ。ソフトバンクやIIJmioといったキャリア、MVNOと密に連携でき始めているのも、モトローラが急成長している理由といえそうだ。同社は、2024年度も同程度の出荷台数拡大を目指すとしている。
その第一歩となる、ミドルレンジモデルの「moto g64/g64y 5G」を6月に発売。前モデルと同様、Y!mobileが取り扱い、持ち前のコスパのよさを訴求している。また、2024年はedgeシリーズの最新モデル「motorola edge 50 pro」にソフトバンク版の「motorola edge 50s pro」を用意。発売直後から1年返却で実質12円という価格を打ち出し、話題を集めた。さらに、6月に米ニューヨークで発表した「razr 50」「razr 50 ultra」も、今後日本で発売する予定を明かしている。
矢継ぎ早に新端末を発売しているモトローラだが、同社はどのような戦略で高い成長率を維持していくのか。モトローラ・モビリティ・ジャパンの社長を務める仲田正一氏に、新端末導入の狙いや、今後の戦略を聞いた。
―― まずは6月、7月にそれぞれ発売したmoto g64 5Gとmotorola edge 50 pro、それぞれの位置付けを改めて教えてください。
仲田氏 moto g64 5Gはgシリーズの端末で、私どもの中ではスタンダードモデルという位置付けになります。スタンダードの意味合いですが、基本機能がしっかりしていることが挙げられます。カメラ、ディスプレイ、バッテリーなどはしっかりとしたスペックでありながら、価格的にはお求めやすい。こういう意味で、スタンダードモデルと呼んでいます。
一方のedgeシリーズは、もう少しモトローラならではの機能が搭載されています。「moto ai」のような独自機能が入っていたり、デザイン的にもビーガンレザーを使ってファッション性を高めたりしながら、それでもある程度お求めやすい価格になっています。デザイン、機能性、価格を高いレベルで合わせ込んでいるプレミアムモデルというのが、edgeシリーズの位置付けです。その上には、フラグシップモデルのrazrがあり、こちらはモトローラのイノベーションを象徴していく位置付けになります。
―― moto g64 5Gは昨年(2023年)出た「moto g53 5G」の後継機だと思いますが、スペックは上がりながらも、価格は据え置きになっています。
仲田氏 市場的にはそういう(後継機という)形になります。市場の中で競争力を高めるには、どのぐらいのスペックで、どのぐらいの価格にすればいいのかといったことを日々議論しています。市場の動きや競合他社の製品、価格を考慮した上で、われわれとしてこのぐらいのポジションでやっていきたいという価格をつけました。
―― やはりここはボリュームゾーンなだけに、3万円台半ばとかなり安いですね。近いスペックの他社モデルよりもインパクトがある価格設定でした。
仲田氏 他社のことはよく分かりませんが、gシリーズは全世界で最も売れているシリーズです。これだけのおかげというわけではありませんが、razrやedgeも入れて、全米ではナンバー3、南米ではナンバー2になっています。また、アジア・パシフィックでも出荷台数は大きく伸びています。このような全体の調達力や開発力もあり、moto gは価格競争力が出せています。
―― 為替も1年でかなり円安に振れました。
仲田氏 為替の話もそうですし、部材の価格も上がっていますが、そこはメーカーとしてかなり努力をしています。
―― 昨年度、大きく出荷台数を伸ばしていますが、これはやはりmoto g53y 5Gの成功が大きかったのでしょうか。
仲田氏 moto g53y 5Gの販売台数は、大きく寄与しています。gシリーズはわれわれの売れ筋で、何年も受け入れられてきました。ここは当然伸ばしていきたい。
一方で、今年(2024年)はedgeシリーズにも新たにmotorola edge 50 pro、motorola edge 50s proを出しています。モトローラにおけるファッション性や機能性、利便性といったものを、ぜひ皆さんにご理解いただき、たくさんの方に使っていただければと思います。こちらのモデルは、スペックやデザインも含め、若い方にも使っていただけるのではないでしょうか。スマホ全体の価格は高くなっていますが、motorola edge 50 pro/50s proの価格は、若い方が自分のお金でお買い求めいただける範囲に収まっているのではないでしょうか。
―― 1年で返却する条件でとはいえ、12円なら確かに買いやすいと思います(笑)。
仲田氏 あの価格は私も初めて知りましたが、(ソフトバンクには)かなり踏み込んでいただけたと感じています。われわれとしては、たくさん売っていただけるようお願いはしていますが、最終的にはソフトバンクさんの中で何を推して売っていきたいのかになります。価格も含めてソフトバンクさんの戦略ではありますが、夏モデルに関しては、motorola edge 50s proを推していこうというご判断をいただけたのだと思います。その1つに、神ジューデンに対応していることもあります。19分でフル充電というのは、分かりやすいですからね。
―― 充電器も同梱されてるんですよね。
仲田氏 はい。同梱です。125W対応の充電器を別に買ってくださいということだと、結局ユーザーの方は今までのものを使ってしまい、急速充電のよさが伝わりません。まずはご体感いただきたいということで同梱しています。
―― 125Wの急速充電は、このクラスの端末だと珍しいですよね。
仲田氏 昨年のmotorola edge 40も、急速充電には対応していましたが、ここまでではありませんでした。この価格帯の製品で、これほどの急速充電に対応したものはありません。充電速度だけなら他にもありますが、価格の桁が上がってしまいます。スペックをよくしてゴリゴリの見た目にするのではなく、この価格帯でシュッとした見た目なのに他にないものを備えている製品になっています。
motorola edge 40はオープンマーケット版しかなく、数はそこそこでしたが、IIJさんが売り出したものはすぐに売り切れてしまいました。そのmotorola edge 40からデザイン性を高めつつ、急速充電に対応し、moto aiも入ってカメラもよくなりました。白飛びなどがなくなり、考えず、気軽に撮れるカメラという意味でも、motorola edge 50 proはいい製品だと思います。
―― edgeシリーズをキャリアが扱うのは初めてですよね。ここもgシリーズ並みの主力商品にしていきたいということでしょうか。
仲田氏 MNOでは初めての取り扱いです。おかげさまで第1四半期はgシリーズがかなり好調だったので、そこまで(edgeが)伸びるかどうかはまだまだ申し上げられませんが、第2四半期はedgeとmoto gの両方を伸ばしていければと考えています。
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