森谷氏によると、PPIHでは2年ほど前から格安SIM事業への進出を検討していたという。エックスモバイルだけでなく、複数の選択肢を視野に入れていたようだが、同時期に、タイミングよくエックスモバイルから提携の打診があり、マジモバの構想が前に進み出したという。PPIHが評価したのは、エックスモバイルの代表取締役社長である木野将徳氏が、積極的にアイデアを提案してきたことだったという。森谷氏は、「サービスまで踏み込んで前向きに考えていただけた」と語る。
木野氏は、「深夜にオンライン会議をしたことは1回や2回ではない」としながら、料金設定や毎月商品がもらえる特典はもちろん、店内POPやプロモーション動画などまで、PPIH側と一緒に検討を重ねてきたことを明かす。ホワイトレーベルとして、協業先の魅力を引き出しつつ通信サービスとしてまとめ上げることに特化してきた手法が、マジモバの立ち上げでも生きていることがうかがえる。
とはいえ、先に述べたようにホワイトレーベルだと、得られる収益はレベニューシェアにとどまる。会員基盤を生かし、大々的に通信事業を展開するのであれば、MVNEを活用しながらMVNOになる道もある。同じ小売りでも、イオンリテールはMVNOとしてイオンモバイルを展開しており、店舗を生かしながら規模を拡大している。PPIHは、なぜこのような道を選ばなかったのか。
森谷氏によると、マジモバの狙いは「利益重視の新事業ではなく、お客さまとの継続的な接点を作り出すリテール事業におけるCRM(カスタマー・リエーションシップ・マネジメント)の装置として展開している」ところにあるという。どちらかといえば、「タッチポイントを取りたい」(同)のがPPIHの考えで、マジモバはmajicaの延長線上にある取り組みになる。そのため、売り上げ目標も「明確には定めていない」という。こうした狙いには、低リスクなホワイトレーベルの仕組みが合致する。
とはいえ、PPIHの展開している店舗はいずれも集客力が高く、売上高も年間で2兆円を超えているだけに、1カ月あたりの目標回線数は「直近で(モバイルWi-FiルーターとSIMカードそれぞれ)月3000契約ずつ」(同)と大きい。マジモバを顧客接点強化のためのツールと考えているPPIHに対し、エックスモバイルの「見方は逆で、ビジネスとして相当な大きくなる」(木野氏)と捉えているようだ。
マジモバは、顧客接点を拡大したかったPPIHと、ホワイトレーベル戦略で回線数を伸ばしたかったエックスモバイル、双方の思惑が合致した結果として誕生したサービスといえる。サービス開始の9月13日には、木野氏自身も店頭に立って接客を行うという力の入れようだ。PPIHのような大手企業が提供することで話題になれば、協業先を広げやすいメリットもある。
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