発表会では実機に触れる機会があった。まず目を引くのは、ケースとしての完成度の高さだ。各iPhoneモデルに合わせて精密に設計されており、装着時のガタつきは一切ない。カラーバリエーションは3色用意されているが、手に取ったSurf(サーフ)カラーは落ち着いたパステルブルーで、見た目以上に高級感がある。
最大の課題は重量バランスだろう。物理キーボードを下部に配置した結果、特に片手での入力時に不安定さを感じる。両手持ちであれば問題ないが、立ったままでの操作などでは少し気を使う場面もありそうだ。
一方で、画面全体が見えることの良さは短い試用でも実感できた。従来のソフトウェアキーボードでは画面の半分を占めていた入力エリアが完全に解放され、長文作成時でもコンテンツを見ながらの入力が快適になりそうだ。
ソフトウェアキーボードの出し入れは専用のキーが割り当てられており、素早く出し入れできる。例えば日本語はフリック入力で使い、英語の時はClicksのキーを使うという使い方も柔軟にできる。
キーボードの打鍵感は、かつてのBlackBerryを知るユーザーには懐かしさを感じさせるかもしれない。カチカチとしっかりとしたフィードバックがあり、目視せずとも入力できる確かな手応えがある。キートップは若干の凹面加工が施されており、指を置いたときの安定感も良好だ。
iPhone 16向けの小型モデルであっても、各キーは明確に独立している。キーピッチは物理的な制約から確かに狭めだが、キーの形状や配置が工夫されており、実際の入力では予想以上に押し間違えが少ない。特に親指でのタイピングを意識した設計になっているようで、慣れれば素早い入力も可能だろう。
入力方式で特徴的なのは、数字入力に専用キーを設けず、左下の「123キー」との同時押しで対応している点だ。確かに手間ではあるが、これによってキーボードのコンパクト化を実現している。
日本語入力では頻繁に使用する「ー(音引き)」や「、(読点)」も同様に123キーとの同時押しでの入力となる。かな入力にも対応しており、iPhone標準の日本語キーボードで使い慣れた入力方式を踏襲できる点は好印象だ。
USB Type-C接続は給電のパススルーに対応しているが、他の周辺機器は接続できない。一方で、iPhone 16向けモデルではMagSafeに対応しており、充電以外の選択肢も確保されている。
Clicksの最大の特徴は、その仕上げのよさとiPhoneとの一体感だ。ケースに装着したときの精度は目を見張るものがあり、サードパーティー製品とは思えないほどの完成度の高さを感じさせる。
しかし、この装着感の高さは、ある種の割り切りの上に成り立っている。完璧な装着感を実現するため、わずかな筐体の違いでも別製品として設計されている。iPhone 16とiPhone 16 Proですら別のケースが必要なほどで、この徹底ぶりは汎用(はんよう)性との兼ね合いでもろ刃の剣といえる。本体の買い替え時には新しいClicksも必要になるため、決して安くない買い物となるだろう。
とはいえ、物理キーボードを求めるユーザーにとって、これはのどから手が出るほど欲しい製品かもしれない。CMOのGadway氏は「1000人に1人に売れればビジネスとして成り立つ」と説明するように、確かにニッチな製品だ。しかし、刺さるユーザーには間違いなく刺さる製品であるだけに、実機を試せる場所の拡大が望まれる。
現時点では日本でのデモ機設置場所は未定だが、ティーガイアとの提携により、今後実機展示の機会が増えることに期待したい。
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