今回の調査結果発表に合わせて行われた勉強会では、60代前半の女性2人へのオンラインインタビューを実施した。
たぐちさんは、以前Y!mobileを使っていた時期があるが、今はソフトバンクに切り替えている。「2年で機種変更すると残りの端末代金が不要になる」というプランが魅力的だったそうで、今はiPhone 15を利用している。「息子の携帯が壊れたとき、一緒に店へ行ってカメラ機能などを聞いて決めました」と振り返る。
たぐちさんはInstagramやYouTube、クックパッドなどで料理動画を見ることが多く、最近は「TikTokもポイントがたまるからと、息子に紹介されて始めたらハマった」という。家族が教えてくれることが新しいアプリへの挑戦を後押ししているようだ。
ふかさくさんは長年ソフトバンクユーザーで、「今の支払い額に大きな不満がない」としてUQ mobileなどに乗り換える必要性を感じていない。「同時に機種変更した主人はProじゃないiPhoneにしたけれど、私はカメラがいいと聞いて13 Proにしました」と言うように、端末のカメラ性能へのこだわりが契約の大きな決め手だったらしい。
一方で、ふかさくさんは「あまりアプリを増やしすぎるとわけが分からなくなる」ため、スマホ決済アプリはPayPayだけに絞って続けているという。「LINE Payもあるけど、ポイントのこともあるし、こっち一本で混乱しないようにしている」と割り切った考え方をしており、必要以上にアプリを増やさず、自分のペースで使いこなすことを重視しているようだ。
2人とも家電量販店のスタッフの説明を重視し、契約の際には「店員さんが勧めるプランなら安心」という発想が見られる。決済アプリは利用しているものの、それ自体がキャリア選択に直結しているわけではない。むしろ「プラン内容を分かりやすく案内してもらう」「家族の都合やタイミングに合わせる」などがキャリア決定の主軸になっている様子がうかがえる。
MMD研究所の吉本所長は、この2人のようなインタビュー協力者が必ずしもシニア全体の平均像を示しているわけではないとしつつも、「60代になるとPCを使っていた世代でもあり、スマホを積極的に活用し始めるとSNSや動画アプリ、ポイントサービスなどに意外と柔軟に手を伸ばす人もいる」と分析する。総務省の調査では60代以上のInstagram利用率がわずか0.5%とされていた時期もあったが、インタビュー協力者の発言を踏まえると、シニア層でも口コミでInstagramのようなSNSが広まっている傾向がみてとれる。
2人が挙げていたように、家族とのコミュニケーションはシニア層のスマホ利用を大きく後押ししている。新しいアプリの導入や使い方の説明、さらには不定期に発生するトラブルへの対処など、家族の支援があると導入ハードルが一気に下がるというわけだ。店頭スタッフのアドバイスや対面サポートも同様に、キャリアや端末を選ぶ際に重要な役割を果たしている。最終的には「自身の好奇心」と「周囲の後押し」の相乗効果で使える機能が増えていき、結果的に「カメラ機能重視でiPhoneを選ぶ」といった行動に結び付くケースもある。
こうした動きは、サブブランドへの移行傾向ともリンクしている。調査結果でも、Y!mobileやUQ mobileの契約率が高い背景には、「低容量プランで十分なユーザー」「ショップ網があって説明を受けやすいこと」「月々の料金に納得すれば乗り換えに抵抗が少ないシニアの行動特性」などが作用しているようだ。
高齢化が進む中でシニア世代にもスマホ利用は当たり前のものとなりつつある。MMD研究所では追加調査や年齢階層をさらに拡張した追跡調査を検討しているという。
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