本誌既報の通り、Appleは3月4日に新型タブレット「iPad(A16)」を発表した。先代「iPad(第10世代)」の発売から約2年5カ月ぶりの新モデルとなる。今回の大きな注目ポイントは、プロセッサの進化とストレージ容量のバリエーションが増えたことだ。早速、先代モデルと比較しながら、その進化の度合いを見ていく。
まずはプロセッサの違いから見たい。第10世代はA14 Bionicチップ(6コアCPU/4コアGPU/16コアNeural Engine)を搭載していたのに対し、新型ではA16チップ(5コアCPU/4コアGPU/16コアNeural Engine)を搭載。高いグラフィック性能を要求されるような映画や3DCG、アニメーションの動画制作の用途には向かないが、Webや地図、SNSなどの閲覧、書類の管理、書籍やPDFの制作および編集といった用途ならこなせるだろう。
ストレージの容量は第10世代が64GBと256GBしかなかったのに対し、新型では最低容量が128GB、中間にあたる容量が256GB、最大容量が512GBと、256GBは維持しつつも、最低容量と最大容量が増加。iPhoneやデジタル一眼レフカメラで撮影した、たくさんの写真や動画をUSB Type-C経由でiPadに転送し、iPadで編集したいというニーズにも対応したといえる。
価格は大幅に値上がりするどころかお買い得になった。第10世代はAppleが2024年5月に価格を改定し、64GB・Wi-Fi対応モデルが6万8800円から5万8800円と、1万円の値下げとなった。それから約1年もたたないうちに、新型が登場。プロセッサの変更や円安・ドル高の影響で値上がりするかと思いきや、新型はストレージ容量のバリエーションが増えた。
Wi-Fi対応モデルの価格を挙げると、第10世代は64GBが5万8800円、256GBが8万4800円。一方、新型は128GBが5万8800円、256GBが7万4800円、512GBが11万800円となっている。最大容量モデルは10万円を超えるが、第10世代の64GBと新型の128GBは同額で、256GBの価格が第10世代から1万円値下げとなり、お買い得になった。
一方で、細かいスペック面でのアップデートはありつつも、基本的な構造は変わらない。横向きで使う場合にカメラとマイクがディスプレイの上部に位置し、スピーカーが左右に配置されている。音量調整ボタンは横向きの場合に上部側面にある。指紋認証のTouch IDセンサーを兼ねたトップボタン(電源オン/オフやSiri起動に使うボタン)、別売りの物理キーボード(Magic Keyboard Folio)との接点となる金属部品のSmartConnectorも第10世代と変わらず同じ位置だ。
新型iPadは第10世代と同じ10.9型のLiquid Retina(2360×1640ピクセル)ディスプレイを搭載する。別売りの物理キーボード(Magic Keyboard Folio)も利用できるディスプレイは、10.9型のLiquid Retina(2360×1640ピクセル)を搭載。500ニトの輝度を持ち、ホワイトバランスを自動調整するTrue Toneにも対応している点も第10世代から変わらない。約1200万画素のインカメラ/アウトカメラ共にスペックは第10世代を踏襲しているが、スマートHDR 3からスマートHDR 4への対応に変更となった。
無線LANのWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)も共通だが、Bluetoothでサポートするバージョンは5.2→5.3へと変更。Wi-Fi+Cellularモデルを選択する人にとっての注意点は、第10世代で使えた物理SIMが使えなくなった点。新型ではeSIMのみをサポートしているため、ユーザーは通信サービスの契約時にeSIMを発行する必要がある。
充電やデータの転送に利用する側面のUSB Type-Cにも細かい違いがある。規格は第10世代と同じUSB 2.0を採用しているが、外部ディスプレイの出力が第10世代の4K/30Hzから4K/60Hzへと変更。USB Type-Cポート経由でのDisplayPort出力にも引き続き対応しているため、外部ディスプレイやスマートグラスに画面をUSB Type-Cケーブル1本で出力できる。
バッテリーは引き続きリチウムポリマーを採用するが、電力量は28.6Whから28.93Whへと若干増加している。ただし、バッテリー駆動時間は最大10時間と変わらない。
カラーバリエーションは第10世代と同様、ブルー/ピンク/シルバー/イエローの4色となる。
プロセッサがA14 BionicチップからA16チップに強化されたことで性能向上が見込める。とはいえ、スペックを細かく見れば、違いはいくつかあったが、大幅な進化とはほど遠い。また、Appleが4月初旬に日本語対応予定と案内する「Apple Intelligence」には非対応なので、こちらにも注意したい。
一方、iPad(A16)は価格が128GBのWi-Fiモデルで5万8800円から、Wi-Fi+Cellularモデルで8万4800円からと、円安ドル高の中でも最低容量の構成が10万円を切る価格となった。iPadのラインアップでは低価格かつ必要最低限のスペックを備えた、いわばエントリーモデルのポジションから、今後も文教市場での引き合いがあると思われる。
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