こうした体験を実現するためには、運転者の特定が重要となる。車のデータが誰のものか分からない以上、「車にデータを残さない」ことを想定したと同社。レンタカーやカーシェア、また、今後の自動運転の普及で「車を所有しない」時代になってくると、車内に本人データを残さない手法が必要になると判断した。
そこで、スマートフォンとの連携を想定。「運転席にあるスマートフォン」を特定するためにUWBを利用。複数のUWBアンテナを使って、UWB搭載スマートフォンの位置を測距する。UWBは正確な位置と距離、方向を測位できるため、運転席と助手席の違いも判別できる。
このとき、運転手とスマートフォンの持ち主が異なる可能性もある。例えば助手席に座る人のスマートフォンを運転席に置いておく、というような使い方もできてしまう。そうした課題を抽出することも、今回の実証の目的だ。
UWBは、既にデジタルキーで採用されている他、JCBがUWBとBLEを使った決済体験のデモンストレーションである「近づいてチェック」の実験を行っており、自動車や決済の分野でUWBの利用が進んできている。スマートフォン側は、iPhoneやPixel、Galaxyといった一部のハイエンド機種にとどまっているが、一定の採用がある。まだ、iOSのAirTagのように、なくし物を探すといった用途に限られているが、UWBの性質上、位置の測定に有利なため、今後の幅広い活用が期待されているところだ。
そうした背景もあって、トヨタ・コニック・アルファでは、UWBとBLEの組み合わせで位置とデータの送受信を行うことで、「クルマウォレット」がどのような体験を実現できるか実証を行った。
ちなみに、今回のトヨタ・コニック・アルファの実証では、このJCBとも協働しているイマーゴが参加し、ハードウェアやソフトウェアの設計、開発を行っている。
あくまで概念実証という位置付けで、同社自体が何らかのサービス開発などを想定したものではない。今回の実証では市販のUWB/BLEの基板を外付けしており、実際には車体に組み込まれることが必要になるとみられる。
さらにモバイル運転免許証の普及も必要になってくる。店舗側にもUWBを含めたシステムの導入が必要になるため、この概念が実現するとしても数年先になるというのが同社の想定だ。
現在、欧州ではデジタルアイデンティティーウォレットの仕組みが構築されており、国際的な連携も必要になってくるだろう。トヨタ・コニック・アルファ側としては、特定の技術に依存するのではなく、UWBが実際にどこまで活用できるのか、それとも他の技術で代替できるのか、ユーザー体験として最適な仕組みは何か、といった検討を継続する他、こうした取り組みに賛同する事業者などを広げていきたい考え。
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