Jiffcyは「電話している感覚で声を出さずにコミュニケーションできる」とリリースに記載している。自宅で家族と住む人なら、「彼氏と通話したいけれど会話を聞かれたくない」など、かつての家電(いえでん)のような悩みは多そうだ。
また、若者はLINEを始めとしたテキストチャットでの交流を基本として育ってきている。音声よりも、テキストの方がうまく自分を表現できると感じている人もいるかもしれない。
それならばLINEでもいいように思うが、通話には「リアルタイムでつながる」価値がある。
かつて、音声SNS「Clubhouse」が大流行した。Clubhouseの出現で、メールやチャット、SNSで非同期のコミュニケーションを楽しんでいた人達が、集まって同じ時を過ごす喜びを楽しんだ。当時、盛り上がった人ならその熱狂を思い出すだろう。
若者に人気のBeRealも同様のリアルタイム性がある。1日のうちにランダムに送られてくる通知により、一斉にスマホカメラのインカメラとアウトカメラで写真を撮影する。“映える”風景を用意したり、化粧したりする時間はない。
自分が家で寝転んでいたとき、ある友人はアルバイト中、ある友人は仲間とランチ中など、離れて過ごしているときの友人の様子が分かる。「今こんなことしてたんだ」「うちもだよ」といった会話にもつながっていく。
通話というものは相手の時間を占有する。通話をする際に「今から通話してもいい?」とテキストチャットで断ってから通話しているため、通話はスペシャル感があるのだろう。「先輩と3時間も通話した」など、LINEの通話記録のスクリーンショットをSNSに投稿する若者もいる。それだけ自分たちは仲がいい、という証拠になる。
「テキストチャットの良さ」と「リアルタイム性」という理由により、Jiffcyが若者に受け入れられていると推測できる。しかし残念ながら、私の観測範囲ではユーザーを見つけることができなかった。
そこで、大学生の娘とJiffcyを試してみた。最初は「これは送信ってどうやるの?」など、1文字ずつ相手に表示されることが理解できていなかったが、やがて仕組みに気付き、会話を続けた。感想としては「LINEでいいかも」ということだった。彼女はJiffcyを使うことが初めてであり、しかも相手が自分の親なので、楽しさにピンと来なかったのかもしれない。
ちなみに、彼女はLINEを使う際、テキストチャットの他、通話やボイスメッセージを使っている。ボイスメッセージは一言ずつ音声を録音して送る機能だ。相手から音声が送られてくると、ワクワクしながら再生する。すると友人が叫んだり、変な声でつぶやく様子が録音されている。送られた方はそれをまねしたボイスメッセージを返すなどして、ボイスメッセージをラリーしていく。これもまた、通話とは違うコミュニケーションの楽しみ方だ。
Instagramでは、「ライブ」もよく使われる。友人と二人でカラオケボックスに入り、そこに来ていない友人向けにライブ配信を行う。「グループのビデオ通話でもいいのでは?」とも思うが、あらかじめ話す相手を固定せず、緩くつながるのがいいようだ。誰かが飛び入り参加してコメントしてくることで、予想外に盛り上がる可能性もある。
このように、若者はテキストチャット、通話、音声メッセージ、ライブ配信とさまざまなコミュニケーション方法で交流する。使うアプリも場面によって異なる。いつもと違う方法でやりとりすると、思わぬ楽しみが見つかることもあるだろう。
Jiffcyは、若者心理を知りたい大人や、新たな交流方法に興味がある人からの注目度が高いように思う。実際にJiffcyでの会話を試してみると、新たな発見があるかもしれない。
電話やメール、LINEとも違う“テキスト通話”アプリに注目 学生に人気の新コミュニケーションツール「Jiffcy」
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