サービスを大幅に拡充して料金を上げたドコモ MAXに対し、ドコモ miniはirumoからデータ容量の選択肢を大きく減らしている。irumoは通信方式、速度に制限のある0.5GBに加えて3GB、6GB、9GBの4つでサービスを提供しているが、ドコモ miniは4GBと10GBの二択。しかも、各種割引適用前の料金は4GBが2750円、10GBが3850円と、容量の近いirumoの3GBや9GBより大きく値上げされている。4GBの金額は、2827円の6GBに近いほどだ。
一方で、dカードお支払い割が187円から550円に、ドコモ光やhome 5Gとのセット割が1100円から1210円に増額されており、ドコモでんきセット割も新設された。これらを加味すると、4GBは880円でirumoの3GBと同額になる。また、10GBの各種割引適用後の料金は1980円で、こちらはirumoの9GBより安く、かつデータ容量も1GB増加する。固定回線やクレジットカードとの連動性を、より高めたというわけだ。
さらに、新規受付を終了したOCN モバイル ONEの受け皿として用意されていたirumoの0.5GBプランが廃止になった。大手キャリアの回線を特別な条件なく550円で維持できる異例の料金プランだったが、「OCN モバイル ONEからの移行先としてある程度来ていただけたので、役割を終えたと思っている」(コンシューマサービスカンパニー マーケティング戦略部長 山本明宏氏)として、提供終了に至った。
維持費が安いことで、MNPの“弾”としてキープされていた側面もあったようだ。齋藤氏も、「ご指摘の部分はあった」とそれを認める。データ通信をほとんどしない、電話中心のユーザーには適した料金プランだったものの、必ずしもその思惑通りには使われていなかったことがうかがえる。ドコモにとって収益が少ない、いわばもうからない料金プラン。MNPの弾にされ、販促コストがかかれば赤字にもなりかねない。OCN モバイル ONEからの移行が一定数程度進んだ状況を見計らって、“止血”を図った格好だ。
経済圏や他サービスとの連動を強化し、格安で持てる0.5GBを廃止したという点では、ドコモ miniもirumoより優良顧客重視に路線を方向転換したといえる。各種割引適用後の料金は安く抑えつつ、通信料金以外の固定回線やクレジットカードで収益を確保できるように設計されていることが、それを物語る。ドコモは、irumoの導入によってARPU(1ユーザーあたりの平均収入)が下落していたが、ここに歯止めをかける狙いも透けて見える。
一方で、irumoは、他社のサブブランドを契約するユーザーを奪ってくる役割も担っている。持株会社のNTTからシェア35%以上を死守するよう厳命されているだけに、低容量の分野で競争力が落ちてしまう点には不安も残る。実際、サブブランドの代表格であるY!mobileは、光回線とのセットとPayPayカードがあれば、4GBの料金は1078円になり、ドコモよりやや高いが割引の適用条件は緩い。同様に、UQ mobileもau PAYカードとauでんきか固定回線のどちらかがあれば、4GBが1078円になる。
対するドコモはdカードお支払割の比重が高く、さらに固定回線とのセット割やでんきセット割も込みでようやく880円まで下がる。条件を満たすハードルは、Y!mobileやUQ mobile以上に高い。齋藤氏は、「極めてリーズナブルな880円や1980円でやっているので、競争力は十分維持できると思っている」と語っていたものの、条件の多さでユーザーから敬遠されるリスクは残る。サブブランドは獲得競争の主戦場なだけに、優良顧客重視の方針があだになる可能性もありそうだ。
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