ソフトバンクと楽天モバイルが“値上げ”に踏み切らない理由 チャンス到来のMVNOはどう仕掛ける?石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2025年05月24日 09時34分 公開
[石野純也ITmedia]
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虎視眈々とチャンスを狙うMVNO、ドコモとauの値上げでユーザーは動くか

 ドコモがirumoを、UQ mobileがミニミニプランを廃止することで、脚光が当たりそうなのがMVNOだ。もともとMVNOは、小容量から中容量を主戦場にしており、サブブランドより料金は一段安いか、割引などの条件が少ない。例えば、最大手のIIJmioは「ギガプラン」の5GBが950円。家族割引を適用すると、さらに100円料金が下がる。上記の金額を実現するのに、光回線やクレジットカードは必要ない(※料金の支払いにクレジットカードは必要)。

【更新:2025年7月3日11時00分 一部、記述を追記しました。】

 MVNO側も、これをチャンスと捉えていることがうかがえる。老舗MVNOの日本通信で代表取締役社長を務める福田尚久氏は、筆者のインタビュー(全文は後日掲載予定)に答える形で大手キャリアの料金値上げが「追い風になると思っている」と述べた。「料金だけでなく企業姿勢も含めて、MVNOに流れるお客さまが増えることはあっても減ることはない」とコメントしている。

日本通信 日本通信の福田氏は、値上げがMVNOの追い風になると話した。写真は2024年2月の発表会で撮影したもの

 大手キャリアとMVNOの価格差があるのはもちろん、料金が変わるという事実で市場が活性化する可能性もある。MVNOシェア2位のmineoを運営するオプテージのモバイル事業戦略部長 松田守弘氏は、調査会社MMD研究所が主催したイベントで、「料金を見直すときに、大手キャリアだけでなくMVNOも見てもらえれば、私たちも機会として捉えられる」とユーザーが動くことに期待を寄せる。

オプテージ松田守弘 オプテージの松田氏も、大手キャリアの値上げがチャンスになる話す

 また、3月にメルカリモバイルでMVNOに参入したばかりのメルカリも、「よりポジショニングを取りやすくなったことは、チャンスであるとポジティブに捉えている」(Business and Marketing Director 永井美沙氏)という。3月に新規参入したメルカリモバイルだが、「今回出してみて分かったが、世間全体がより価格コンシャス、付加価値コンシャスになっている。2プランで出したが、やはり料金に対するコメントはすごく多い」(同)という。

メルカリモバイル美沙 価格に対して敏感なユーザーが多いことを参入後に改めて気づいたというメルカリの永井氏

 一方で、イオンリテールのイオンモバイル商品グループ統括マネージャーの井原龍二氏は、「チャンスだと思ってはいるが、大手キャリアのユーザーは7割ぐらいの方が一度も(MNPで)乗り換えていない」とし、MVNOがユーザーの選択肢にすら挙がっていないことが課題だとした。「大手キャリアの値上げだけでMVNOに目が向くかというと、そうではない。別のアプローチで仕掛けなければいけない」というのが、井原氏の考えだ。

イオンリテール井原龍二 イオンリテールの井原氏は、大手キャリアのユーザーの多くが、一度も乗り換えを経験していていないことを指摘。価格以外に何らかの訴求をする必要性を訴えた

 とはいえ、MVNOにとってチャンスであることに変わりはない。イオンモバイルでも、「店頭では(代理店として)大手キャリアを扱っているので、うまく値上げしたという告知をして横並びで販売していく」(同)という。このタイミングを生かし、大手キャリアから動かないユーザーの目をMVNOに向けさせるきっかけになるキャンペーンを展開するなど、注目を集めるための取り組みは必要になりそうだ。

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