住信SBIネット銀行は、非金融業の協業先にAPI経由で銀行の機能を提供するBaaS(Bank as a Service)の先駆け的な存在。「NEOBANK」という名称で、さまざまな企業が銀行の機能を自身のユーザーに提供している。ヤマダ電機の「ヤマダNEOBANK」や日本航空の「JAL NEOBANK」、高島屋の「高島屋NEOBANK」など、その業種は多岐にわたる。
円山氏によると、現状では「新規顧客獲得の7割がBaaSになっている」という。「われわれの優れた銀行機能を多くの企業に提供し、あらゆる産業を銀行に変えるというビジネスモデルを、世界で初めて実現した」(同)戦略が当たった格好だ。ドコモ傘下でも、この機能の提供は続けていく。「法人のお客さまもたくさんいるので、それが住信SBIネット銀行の成長につながる」(前田氏)というのが、ドコモ側の見立てだ。円山氏も、「われわれにとってはプラスしかない」と話す。
とはいえ、提携先の企業は自社の経済圏に銀行機能を組み込むために、NEOBANKの仕組みを活用している。ドコモ色が強くなっていくことに、難色を示す恐れもある。円山氏は「ドコモの経済圏を、無理に組み込むことは考えていない。切り分けて考えている」というが、それだと、ドコモ側にとってどのようなメリットがあるのかがあまり見えてこない。
また、ドコモ同士の経済圏をつなげていくという点では、傘下のマネックス証券だけを特別に優遇できない条件もつけられている。これは、住信SBIネット銀行の買収と同時に、NTTが親会社のSBIホールディングスに出資することで担保される。SBIホールディングスの代表取締役会長兼社長の北尾吉孝氏は、「単に売ってしまって(SBIホールディングスと)縁が切れるのは困るというのが、ネット銀行の気持ちという報告があった」と明かす。
結果として、「ドコモにはマネックス証券との関わりがあったが、これをどういうふうに考えるかを議論し、公平かつ公正に扱い、顧客中心主義に基づいて利便性は損なわないようにするということを双方で合意できた」(同)という。前田氏も、「住信SBIネット銀行のお客さまで、SBI証券をお使いの方はたくさんいる。今回の提携で不便になってしまうことはありえない話」と語る。
実際、住信SBIネット銀行はSBI証券と連携した「SBIハイブリッド預金」でユーザーを獲得してきた経緯がある。ただ、座組が複雑になってしまうこともあり、ドコモグループ内の金融企業同士でどこまで横の連携を図れるのかが不透明といえる。前田氏は、「マネックス証券はわれわれにとって重要な機能を持った会社なので、証券としてのサービスを提供する機会はしっかり作っていきたい」としていたが、その具体像を見せていく必要がありそうだ。
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