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「ポケモンGO」大阪イベントでスマホの通信はどこまで快適だった? 1キャリアだけ厳しい結果に、その理由は?(1/2 ページ)

» 2025年06月10日 11時00分 公開
[田中聡ITmedia]

 Pokemon GO Festは、年に1度屋外で開催される、Pokemon GO(ポケモンGO)の大型イベントだ。2025年は大阪府吹田市の万博記念公園で、5月29日から6月1日までの4日間で開催された。

 こうした大型イベントで気になるのが、携帯電話のネットワーク対策。大勢のユーザーが集まるため、回線の混雑は避けられない。そこで、各キャリアは移動基地局車を配備したり、基地局の電波を増強したりして対策を実施している。

 筆者は5月30日の午後からPokemon GO Fest 2025:大阪に参加してきたので、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルのネットワークがどれほど快適だったのかを検証した。

Pokemon GO Fest 2025 万博記念公園で開催されたPokemon GO Fest 2025:大阪
Pokemon GO Fest 2025 イベント会場で4キャリアの速度測定を行った

下りはドコモが最速、auは上りと下りのバランスが良好

 5月30日は、午前の部が終了した13時〜14時にかけて、公園の出口付近から中央橋まで、長蛇の列ができてほぼ身動きが取れないほど混雑していた。公園自体は広大なので、1箇所に大量の人が集まって動けないような事態にはならなかったが、これまでのポケモンGO関連イベントの中でも、最多クラスの人数が集まっていたのではないだろうか。

Pokemon GO Fest 2025 広大な公園に多数のトレーナーが集まった

 今回は12時、14時20分、17時22分から約10分間ずつ、3回に分けて通信速度を測定した。測定にはOoklaの「Speedtest」アプリを使用し、下りと上りを3回ずつ測定した。測定場所は、公園の出入口に近いチームラウンジで統一している。

 ドコモと楽天モバイルはiPhone 16 Pro Maxを、auとソフトバンクはiPhone 16 Proを使用しており、ソフトバンクはY!mobile、KDDIはpovo2.0(24時間データ使い放題のトッピング)を契約している。使用している回線は変わらないので、Y!mobileはソフトバンク、povo2.0はauとして表記する。

 まずは12時からの結果を見ていこう。午前の部が終了する1時間前という佳境の時間帯だ。下り最速はドコモで、500〜700Mbps台の速度をたたき出したが、上りは10〜20Mbps台にとどまった。auは下りが200Mbps前後、上りも80Mbps前後出ており、4キャリアの中では最もバランスがよかった。ソフトバンクは下りが60〜100Mbps台、上りが20Mbps台を出しており、問題なく使用できた。

Pokemon GO Fest 2025 12時〜12時10分の速度測定結果

 続いて、午後の部が始まった直後の14時20分に測定した。12時のときと傾向は変わらず、ドコモは下りが特に高速で、auが下りも上りもバランスのよい速度、ソフトバンクは下りが比較的速く、上りも問題のない速度が出ていた。

Pokemon GO Fest 2025 14時20分〜14時30分の速度測定結果

 午後の部が佳境にさしかかった17時22分からは、やや状況に変化が見られた。ドコモの下り速度は3回目が600Mbps台だったが、1〜2回目はやや速度を落として200〜300Mbps台だった(それでも十分な速度だが)。auは下りも上りも順調で変わらないが、ソフトバンクが上りも50〜60Mbpsと高速になり、4キャリアの中では最もバランスがよかった。通信環境をリアルタイムで見ながら、移動基地局車の電波の出力をチューニングしていたのかもしれない。

Pokemon GO Fest 2025 17時22分〜17時32分の速度測定結果

移動基地局車最多はドコモ、KDDIはStarlinkを活用、ソフトバンクは高所作業車が目を引く

 では、ここまで順調に速度が出ていたドコモ、au、ソフトバンクは、今回のイベントに際して、どのような対策を打っていたのか。

 ドコモは、5G移動基地局車を3キャリアで最多の5台配備しており、うち1台はMMU(Massive MIMO Unit)を搭載しているという。MMUが導入しているMassive MIMOでは、通常の基地局よりも多くのアンテナを搭載しているため、人が密集する場所でも多くのトラフィックを処理できるようになり、パケ詰まりを防ぐことが期待される。

Pokemon GO Fest 2025
Pokemon GO Fest 2025 ドコモの移動基地局車

 この他、ドコモは以下の対策を実施している。

 冬場からイベント主催者と現地検討を行うなど、イベントに合わせたエリア成形をしています。トレーナーが滞留する場所は、周辺基地局にもMMUを搭載するなど強化を行い、イベント開催中はリアルタイムでのエリア調整も実施いたしました。関西においては大阪・関西万博へも移動基地局車を配置する中で、他イベントと比べても今回最大数の移動基地局車を配置しています。

 KDDIは、3台の移動基地局車を配備している他、移動基地局車の装置をMMUに切り替えるなど、機材をアップデートしているという。また、2023年に同じく万博記念公園で実施されたPokemon GO Festや、音楽フェスで実施した対策のノウハウも生かしているという。

Pokemon GO Fest 2025
Pokemon GO Fest 2025 auの移動基地局車

 万博記念公園は、ゲームエリア内でも起伏があり木々が多く細かい調整が必要であるため、以前に同会場で行われた、Pokemon GO Fest 2023や、夏に行われた音楽フェスの臨時対策を通して得られた知見をもとに、限られた車載型基地局でより多くのお客さまが快適に使えるようなエリア設計・調整を行いました。

 さらに、衛星通信「Starlink」を活用した公衆Wi-Fiも導入しているという。

 KDDIが提供するStarlink活用の公衆Wi-Fi「イベントWi-Fi」を導入いただいており、会場内で参加者向けにフリーWi-Fiエリアが展開されました。5G/4G通信とWi-Fi通信の両方でイベントの通信環境をサポートしました。

 ソフトバンクは3台の移動基地局車を稼働させ、うち1台は、高所作業車を用いている。この高所作業車では、通常は11.8mのところ、アンテナを20mの高さまで上げることができ、より広範囲をカバーするようにした。高所作業車は2024年に仙台市の七北田公園で実施したPokemon GO Festでも導入しており、大規模イベントでは高所から広範囲をカバーする手法が有効のようだ。

Pokemon GO Fest 2025 ソフトバンクの移動基地局車
Pokemon GO Fest 2025 高所作業車も導入している

 この他、ソフトバンクでは以下の対策も実施している。

 周辺の基地局もフル活用できるよう、現地測定を行いつつチューニングを実施しました。また、移動基地局車周辺にWi-Fiを設置し、トラフィックの負荷分散を図りました。さらに、イベント開催中もリモートで通信状況をモニタリングし、トラフィックが集中している場所があれば分散するよう調整するなど、状況に応じた運用を行うことで、ユーザー体感の向上に努めました。

 3キャリアの回線でポケモンGOをプレイしてみたが、ポケモンの捕獲やレイドバトルなど、快適にプレイできた。ネットワーク対策が有効に機能していたことが分かる。

 なお、万博記念公園は、2023年のPokemon GO Festでも会場だったが、3キャリアが配備した移動基地局車は、2023年よりも増やしているという。Niantic ライブイベント APAC マーケティングマネージャーの三宅那月氏によると、2024年の七北田公園は、基地局車を置いたときに干渉が発生しないようにすることが困難だった一方で、万博記念公園は面積自体が広いので干渉の課題はないものの、端から端まで電波をしっかり届けるところに苦労したという。

 万博記念公園は広大な公園ではあるが、2024年の七北田公園と比べて平らな地形が多いため、「物理的な課題は七北田公園よりは少なかった」(三宅氏)とのこと。

 「キャリアの方には、逼迫(ひっぱく)している箇所がないか、イベント期間中はずっと測定されています。弊社側にもネットワーク担当がおり、彼らがイベント期間中は測定して回りながら、問題になりそうな箇所があったら、キャリアさんに連絡させていただいています」(三宅氏)

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