それぞれ性能が異なる端末にAIを搭載するため、OPPOはクラウド処理を選んだ。AppleのApple Intelligenceや、サムスン電子のGalaxy AIは、端末上で処理するオンデバイスAIを中心にしつつ、クラウドも併用する形だが、これだとAIでできることが端末によって変わってしまう。大々的に売り出したAIが、エントリーモデルやミッドレンジモデルに搭載されていないことになりがちだ。
特に、OPPOの場合、ハイエンドモデルも手掛けている一方で、主力になっているのはReno13 Aのようなミッドレンジモデル。「歴史的に見ても、ミッドレンジモデルを一番大切だと思っているメーカー」(河野氏)になる。オンデバイスAIは「端末のスペックに依存してしまい、ハイエンドモデルでしかAI体験ができないデメリットがある」(営業推進部 プロダクトマネージャー 中川裕也氏)が、OPPOはその影響が大きくなりやすい。
一方で、オンデバイスAIには、「通信環境がなくても使えたり、端末内で完結したりする精神的な安心感がある」(中川氏)のも事実だ。前者はクラウドAIの欠点だが、人口カバー率が非常に高く、モバイルネットワークの環境が充実している日本では、あまり問題になりづらい。これに対し、後者は心理的なハードルになるのはもちろん、プライバシー保護にも関わってくる。河野氏も、「プライバシーとデータセキュリティはこれまで以上に重要な課題」と話す。
そこでOPPOは、Google Cloud上に「Private Computing Cloud」(PCC)を構築。OPPO自身やGoogleがユーザーのアップロードしたデータにアクセスできない環境を作り、その上でAIの処理を実行するような仕組みを整えた。これは、3月にグローバルで発表されていた取り組みで、OPPOは「AI主導の世界でエンドツーエンドのセキュリティと安心をユーザーに提供する」としている。Reno13 AやReno14 5G、OPPO Pad 3に搭載されるAIにも、このPCCCが活用された。
スペックの異なる複数の端末で同じ機能が利用できるのは、処理を端末のプロセッサに依存していないためだ。とはいえ、クラウドを利用するとなると、OPPO側に継続的なコストがかかる。実際、競合他社ではサムスン電子がGalaxy AIを「2025年末まで無料」としており、今後の有料化に含みを持たせている状況だ。では、OPPOについてはどうなるのか。
この質問について河野氏は、「有料にできるならしたいのが本音だが、AIを皆さんに使っていただきたいというのが会社としてのスローガン。当面は課金のことは一切考えず、まずは触れていただきたい」と話す。クラウドへのアクセスはあるが、現時点では、端末内で完結する機能と同じように位置付けていることが分かる。あくまでも、AIの普及を優先しているというわけだ。
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