日本電信電話(NTT)は7月1日、社名をNTTに変更した。概要は、島田明社長が5月9日の決算会見前に発表していたが、改めて「社名変更・新CIに関するイベント」を開催し、CI(コーポレートアイデンティティ)の刷新と新たなコーポレートロゴに込めた思いを語った。
NTTグループは1985年の民営化以来、固定通信からモバイル通信、ITビジネス、不動産やエネルギーなど多角的な事業を展開してきた。民営化から年数が経過するにつれて、設立時に設定した「日本電信電話株式会社」という商号と、実際の事業内容とのギャップが大きくなってきた。
島田氏は囲み取材で、「米国ではAT&Tが分割と統合を繰り返しながら新しいビジネスを生み出してきた歴史がある」と、グローバル企業を例に挙げ、「企業は離散と集合を繰り返すことで成長を遂げている」と述べた。
一方、日本企業が世界で競争力を発揮していくためには、「グローバルに通用する体力と、フルスタックなサービスを提供できる事業体になることが不可欠だ」という。NTTグループとしては、海外の競合と互角に戦える環境を整備することが喫緊の課題だと認識していると述べた。
ただ、島田氏は「日本が必ずしも一貫した戦略を取る必要はない」と補足し、「現在、多様な日本企業がそれぞれ異なる分野で世界と戦えるようになってきており、NTTもそのような企業とともに、世界市場でしっかりと競争できる体制を整えたい」と語った。
島田氏のいう「戦う」とは、相手を打ち負かすという単純な意味ではなく、「互い(の企業)が切磋琢磨(せっさたくま)し、付加価値を高める競争を通じて、より良い社会を創造していくこと」を意図している。
NTTがこうした建設的な競争に積極的に参加するためには、グループとパートナーシップの力が不可欠だと指摘する。NTTグループ全体の力を結集することが重要で、グループ内で多様な能力(ダイナミックケイパビリティ)を融合させれば、新たな価値を生み出す可能性が大きく広がるとしている。
つまり、競争の激しいグローバル市場において、NTTが「国内外統一のコンセプト」のもと、NTTグループの技術力やケイパビリティを分かりやすく示し、先進的なグローバル企業としてのブランド向上を図る狙いがある。グループのCIの刷新に至った理由もまさにこれだ。
島田氏は、「グループの力を最大限に活用し、パートナー企業の皆さまとともに成長できるよう、引き続き努力していきたい」とコメントした。
島田氏は7月1日、イベント会場に集まった社員と報道陣に対し、「さらなる大きな成長を遂げて参りたい。新たな40年に向けて頑張る」とコメントし、同日からテレビやSNSで新CMを放映すると発表した。
新CMには、阿部サダヲさんと池松壮亮さんが出演。会場内での撮影は禁じられたため、画像や映像を記事に流用できないが、世界のとある都市を舞台に、大事なミーティングに臨む新生NTTの2人の社員の姿を描く。阿部さんは上司、池松さんはその先輩を慕う部下を演じる。
特に、阿部さんが訴えかけた以下のせりふは、NTTのこれからの40年に向けた抱負や新社名・新ロゴに込められたメッセージを象徴しているような印象を抱いた。
「俺たち本気です。情報通信を根っこから変えて、世界をもっといい場所にしたい。ネットやスマホが人間の到達点? 冗談じゃない。人間はもっとすごいんだ。失われた何十年かを終わらせるために俺たちはここに来ました。やられっぱなしの日本がもう一度世界に挑戦する。世界中の仲間たちと一緒に。そんな夢見ちゃダメですか?」(一部抜粋)
NTTロゴの象徴である電話線のようなマーク。これは、1985年に策定された「ダイナミックループ」といい、新たなコーポレートロゴでも使用する。フォントには、既にグローバル市場で使用されている丸みのあるものを採用。ダイナミックループとNTTともに丸みがあり、かつ色をブルーに変更することで統一感を出す。
ロゴの色を青から赤などの他の色に変更しなかった理由は何だろうか? 島田氏が以下のように回答した。
「以前、NTTデータリミテッドとNTTデータのグローバル部門を統合した際に、『ダイナミックループの付くNTTデータ』のロゴを作成した。これは数年前のことだが、将来的にはNTT持ち株会社のロゴも、この『データ』の部分を除いたロゴにしたいと考えていた」
「世界中で使われている統一された青い色を使用したロゴは、現在150カ国以上で展開されている。この青い色でNTTグループ全体をしっかりと主張していきたい。一部メディアによる『逆輸入』という表現の通り、海外で展開しているカラーとロゴを日本に持ち込むことで、グローバル戦略に合わせてグループ全体のイメージを統一している」
なお、新たなCIで定めたロゴデザインは、グループ各社のコーポレートロゴにも適用し、国内外でのブランド統一を進める。NTTドコモグループは、国内で定着しているイメージカラーであるレッドをダイナミックループに反映し、新たなコーポレートロゴとする。東日本電信電話や西日本電信電話、NTTコミュニケーションズなどでも順次適用する。
7月1日のイベントでは、NTTの若手社員の姿も多く見られた。若手社員は「新生NTT」をどのように捉えているのだろうか。
NTT広報によると、若手社員からは、「フォントがこれまでより丸みを帯びており、全体的にやわらかく親しみやすい印象を受けました」といった意見や、「文字色が青になったことで、ブランドカラーの印象がより強まり、『NTTといえば明るい青』というイメージがより定着しそうだと感じました」といった声が聞かれた。
ロゴとともに変更された新社名については、「個人的には『電信』という言葉にあまりなじみがなかったのもあり、NTT株式会社という社名は自然に受け入れられました」というコメントがあった。
NTTは、商号とコーポレートロゴの変更に合わせて、「NTT Group's Core」と「NTT Group's Values」を制定。前者は、民営化当時に設定された「ありたい姿(CI検討にあたっての基本的考え方)」を原点とし、現在の経営環境などの変化を踏まえてアップデートしたものだ。後者は、これまでの価値観や目指す姿を踏襲しつつ、NTTグループの社員が共通して持つべき価値観や行動指針を、よりイメージしやすい表現へと再定義した。
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