全国各地で、警察官を名乗って現金をだまし取る「ニセ警察詐欺」が急増している。
自宅の固定電話や携帯電話に、「あなたの口座が犯罪に使われている」「携帯電話が不正に契約された」などと連絡し、「資産を保護する」「口座を調査する」などと称して金銭を要求する手口が後を絶たない。犯人は電話のほか、SNSやビデオ通話に誘導するケースも多く、警察庁は注意を呼びかけている。
2025年5月時点でのニセ警察詐欺の認知件数は3816件、被害総額は316.1億円にのぼる。これは「捜査名目」を装った特殊詐欺として統計がとられている。
そこで本記事では、警察庁が公開した事例をもとに、ニセ警察詐欺の被害に遭わないための「やってはいけないこと」や、スマートフォンを活用した対策方法を整理して紹介する。
詐欺グループは、実在する警察署の代表番号を発信者番号に偽装して電話をかけてくる。たとえ「052-951-1611(愛知県警察本部)」など、正しい番号が携帯電話や固定電話に表示されていても、それだけで本物だと判断してはいけない。
犯人は、LINEやメッセージアプリを使い、警察官を装ってビデオ通話を行う。画面越しに「警察手帳」や「逮捕状」を見せてくるケースもあるが、これは偽物である可能性が高い。
「口座を調査する」「資産を保護する」などと指示され、現金の送金を求められるケースもある。「潔白を証明するには資金移動が必要」といった説明も全て詐欺の決まり文句だ。
「身体検査が必要」「タトゥーがあるか確認する」などと称して、裸になるよう求めるケースもある。こうしたわいせつ目的の詐欺では、映像や音声が記録され、脅迫に使われることがある。
警察庁や警視庁をかたったメールやSMSから、ニセのWebサイトに誘導される事例もある。仮に見た目が本物そっくりでも、リンク先でカード番号などを入力してはいけない。
電話や通話中に「今すぐ行動しろ」「秘密にしろ」といったプレッシャーをかけられても、必ず落ち着いて判断する必要がある。少しでも不審に思ったら、通話を終了し、最寄りの警察署や警察相談専用電話「#9110」へ相談することが大切だ。
ニセ警察からの電話には絶対に出ないことが大前提だが、繰り返し着信がある場合は、着信拒否の設定をして対応しよう。
着信を拒否するには、端末の機能を使うといい。iPhoneとAndroidの両方に不明な発信者からの着信をブロックする機能が搭載されている。iPhoneの場合、「不明な発信者を消音」という機能を設定すると、連絡先に登録されていない番号からの電話は着信音が鳴らず留守番電話に送られ、不在着信として履歴に残る。ただし、配送業者や仕事の連絡など必要な電話も消音される可能性があるため注意が必要だ。
Android(Pixel)では、「ブロック中の電話番号」設定で「公衆電話」と「不明な発信者」をオンにすることで非通知や公衆電話からの着信を拒否できるが、連絡先未登録の番号は着信する。また、「迷惑電話をブロック」機能により、世界中のユーザーから迷惑電話として報告された番号を自動でブロックできる。
個別に着信拒否を行う方法もあり、iPhoneでは電話アプリの履歴から該当番号の情報アイコンをタップし「発信者を着信拒否」を選択する。Android(Pixel)でも履歴から番号をタップし、メニューからブロックを設定できる。
さらに、iPhoneの「ライブ留守番電話」機能やPixelの「通話スクリーニング」を利用すると、かかってきた電話の内容をリアルタイムに文字に起こし、必要に応じて対応できる。通話スクリーニングはGoogleアシスタントが応答し、迷惑電話と判断したら切断可能だ。
通信キャリアも迷惑電話対策のオプションサービスを提供しており、ドコモの「あんしんセキュリティ」、auの「迷惑メッセージ電話ブロック」、ソフトバンクの「セキュリティOne」などがある。これらは有料だが、迷惑電話の警告表示や着信ブロック機能を備えている。
MVNOユーザーや別の方法を求める場合は、「電話帳ナビ」や「Whoscall」といった迷惑電話対策アプリを利用するのがいいだろう。これらは連絡先未登録の番号でも発信者情報を表示し、迷惑電話の拒否設定や海外からの着信一括拒否も可能だ。
詐欺被害にあう可能性のある電話や迷惑電話に困っている人は、この記事で紹介した機能やサービスを活用することをおすすめする。
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