ソラコムが7月9日、IoT向けSIMで複数の通信プロファイルを管理できる「SORACOM Connectivity Hypervisor」を発表。2025年度中に提供する予定としている。
この新機能では、SORACOM IoT SIMにて、ソラコムが提供するプロファイルだけでなく、他の通信事業者が提供するプロファイルを含めて、遠隔でプロファイルの追加や切り替えを可能にする。
ソラコムでは、物理SIMに加え、端末に埋め込むチップ型の「eSIM」と、通信モジュールにSIMを統合した「iSIM」を提供している。今回発表したSORACOM Connectivity Hypervisorは、GSMAが策定したIoT向け次世代eUICC規格SGP.32に準拠している。
eUICCは「embedded Universal Integrated Circuit Card」の略称で、リモートからSIMプロファイルを書き換えられる、SIMカードの機能を内蔵したチップ。eSIMの機能を実現するためのデバイスに位置付けられる。SGP.32はeUICCの規格であり、任意のタイミングでプロファイルの配信や切り替えを可能にする。
ソラコムでは2025年7月時点で、213の国や地域で509キャリアに対応した通信サービスを提供している。2024年度グローバルの売り上げ比率は41.8%に及び、海外からの引き合いも強い。ソラコム自身はMVNOとして、1枚のSIMで複数キャリアを切り替えられるIoT通信サービスを国内外で提供している。例えば、国内ではドコモ、au、ソフトバンクの回線を利用できる。
それでも、ユーザーによっては、ソラコムが扱っていない通信サービスやキャリアのSIMを入れ替えるケースがあるという。契約上の事由で特定キャリアのSIMを使うことや、IoT SIMではカバーできない音声通話や大容量データが必要な場合があるためだ。そこで、ソラコムの通信サービスだけでカバーするよりは、ソラコムも含め、より広く他社の回線を1つのSIMでカバーできるようにした方がいいと考え、SORACOM Connectivity Hypervisorの提供を決めた。
SORACOM Connectivity Hypervisorでは、ソラコムの通信サービスに加え、他キャリアが提供している通信サービスのプロファイルを追加できるようになる。ソラコムのSIMやeSIMに「IoT Profile Assistant」というソフトウェアが入っており、同社のプラットフォーム上で他キャリアのプロファイルをダウンロードできる。音声や大容量データ通信にも対応できるため、多様なニーズに応えられる。
使用するプロファイルは管理画面から選択できるため、ユーザーは出荷先の国や地域、ユースケースに応じて、最適なプロファイルに切り替えられる。
バックアップ回線としての利用も想定する。複数キャリアのプロファイルを常備しておくことで、1キャリアで通信障害が起きた場合でも、別の回線で通信を再開するといった冗長性も確保できる。
具体的なユースケースとして、ソラコム 最高技術責任者 CTOの安川健太氏はコネクテッドカーを挙げる。「OEM(自動車メーカー)のサーバとクルマではセキュアな通信が必要である一方で、緊急通報に対応した音声通話や、車内で使うWi-Fiでストリーミングも必要になる。目的の違う回線が、それぞれの国で必要なケースもある」とのことで、最適な通信プラットフォームについて、自動車会社と悩んでいたという。「複数の回線を使い分ける仕組みを提供した方が、より建設的で使いやすいサービスが生まれる」と同氏は期待を寄せた。
ソラコムは、IoT Profile Assistant搭載のSIMとeSIMを、2025年度中にリリースする予定で、対応キャリアについても随時拡大していく。安川氏は「キャリアの垣根を超えた通信管理プラットフォームに進化する」と意気込みを語った。
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