NTTドコモは現在、ネットワーク品質の改善に向けた取り組みを加速させている──。NTTの島田明社長は8月6日、「2025年度 第1四半期決算説明会」で、既に新しい基地局の設置工事が当初の計画を上回る形で終了していることを明らかにした。2025年度は前年度よりもさらに増設計画を拡充し、工程も前倒しで進めているとした。
進捗状況を振り返る島田氏は「昨年は第4四半期に工事が集中した」ことを挙げ、「実は今年の計画も後半の方に多くなっている」と述べ、工事会社との調整を進めながら、「なるべく早い段階で計画している新しい基地局の増設については進めていく」ことを明言した。
加えて、既存エリアにおけるチューニング作業についても触れ、変化の激しい都市部、例えば渋谷駅周辺のように、「新たな建物の建設や解体が頻繁に起こるエリアでは、継続的な対応が求められる」との考えを述べ、それ以外の地域におけるチューニング作業は完了したとの認識を示した。
一方で、世界のモバイルネットワークのユーザー体感を分析している英Opensignal(オープンシグナル)の調査では、スタンドアロン(SA)方式の5G通信サービス「5G SA」の調査項目から除外された。
5G SAは、5G専用のコア装置(5GC)と5G基地局というシンプルな構成で、5Gの「超低遅延」「超多数接続」を生かせることから“真の5G”といわれている。NTTドコモは5G SAを法人向けに2021年12月12日から、個人向けには翌2022年8月24日から提供している。
Opensignalでは、「KDDIとソフトバンクに比べ、SAセルの展開数が少なく、主に高周波数帯域(sub-6 GHzとmmWave)を使用し、5G SAのカバレッジは狭くなっている」ことを挙げ、SA対NSAの集計比較には含めつつも、オペレーター別の比較からは除外したと説明している。
Opensignalの5G SA項目。NTTドコモを除くKDDIとソフトバンクの2社を比較対象としており、速度、遅延、ビデオ/ゲーム・エクスペリエンスでauがソフトバンクをおおむね上回る結果となっている。auはSub-6 SA基地局の戦略的展開の結果と推測でき、ソフトバンクは市場競争力を維持しつつも、主要指標の水準ではauに一歩及ばなかった。ただし信頼性エクスペリエンスは両社が統計的に同率で、サービスの安定性では拮抗したとしている島田社長は、「4Gと5Gの電波を同時に発出するエリアが多いことから、調査対象から除外された可能性がある」と説明した。さらに、他キャリアにおいても提供エリアの状況は一様ではなく、現段階での厳密な比較評価は難しいとの考えを示した上で、ドコモとしては5G SAを将来的な重要サービスと位置づけていることを改めて強調した。
5G SAの提供対象については、「法人のお客さま」という認識を示し、法人顧客向けのニーズに応える形で段階的に展開していく方針だという。具体的なサービス内容に応じて適用可能な領域から優先的に整備を進めていき、今後も柔軟に対応していくというのが現段階における見解だ。島田社長は「5G SAは従来からの5Gの目玉となる技術であり、今後の本格展開に向けて着実に準備を進めている」とした。
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