NTTが8月6日、2025年度第1四半期の連結決算を発表した。営業収益は3兆2620億円の前年同期比220億円増、営業利益は4052億円の前年同期比306億円減で、増収減益となった。NTT東西は増益だったが、NTTドコモのモバイル通信サービス収入の減少、販促費の強化やネットワークの品質向上の費用増が影響した。
NTTの島田明社長は、「収益と利益ともに想定通りの進捗(しんちょく)。引き続き、コスト削減の確実な実施と法人ビジネスの拡大により、連結計画の達成に向けて取り組んでいく」と話す。
ICT事業セグメントでは、モバイル通信サービスの収入減はあるものの、金融を中心としたスマートライフ事業や法人事業のオーガニック成長によって、営業収益は対前年で220億円増加した。営業利益については、法人事業の増益や、収支改善に向けて各種施策に取り組んでいるものの、顧客基盤強化やネットワークの品質向上施策により、対前年で306億円減となった。
NTTの減益要因となったドコモの第1四半期決算は、営業収益が1兆4901億円の前年同期比133億円増、営業利益は2397億円の前年同期比357億円減の増収減益となった。コンシューマー通信の営業収益は前年同期比88億円減の1兆901億円で減収だが、法人事業は増収している。顧客基盤強化が功を奏し、ドコモのMNPは第1四半期累計ではプラスに転じた。
コンシューマー通信の営業収益は、6月5日から提供している新料金プラン「ドコモ MAX」によって改善しつつある。ドコモ MAXとドコモ ポイ活 MAXは、既存の料金プランから1000円強の値上げとなる代わりに、DAZN for docomoの無料や国際ローミング30GBまで無料などの特典を加えることで、付加価値を訴求する。
ドコモ MAXとドコモ ポイ活 MAXは「想定通りの立ち上がり」(ドコモ)で、現時点での契約数は70万に達した。「月平均35万くらい。年間300万契約の計画なので、順調なスタートを切れた」と島田氏は話す。
ドコモ MAXの契約者が増えることで、コンシューマー通信のアップセルにつながり、ARPU(1ユーザーあたりの売り上げ)の向上も見込める。実際、2024年度第4四半期のeximo(先代の使い放題プラン)と比較し、ドコモ MAXでは20%売り上げが伸びているという。また、ドコモは低容量プラン「irumo」の新規受付を6月4日で終了し、後継プランとして「ドコモ mini」を提供している。これにより、2024年度第4四半期からダウンセルを30%抑制できたという。
一方で気になるのが、営業利益への影響だ。DAZN for docomoの通常料金は月額4200円で、2025年10月22日から提供予定のNBAコンテンツも含めると、本来なら数千円の料金が上乗せされる。それにもかかわらず、eximoから1000円強の追加で済んでいるため、ドコモの持ち出しが増えていることになる。この点についてドコモに確認したところ、「ドコモ MAXについては、6月5日のサービス提供開始後間もないこともあり、今後の具体的な利益に対する影響について評価するには早いため、コメントは差し控える」との回答だった。
ドコモの前田義晃社長は、ITmedia Mobileでのインタビューで「販促費を投じなくても、より効率的に指名買いで獲得できるのであれば、DAZNさんにお支払いする金額を差し引いても、トータルの負担は効率化されます」と話しており、ドコモ MAXをユーザー獲得のための施策に位置付けていることを示す。
そうなると、ドコモ MAXの特典提供にかかる費用のトレードオフとして、販促費を減らす可能性もある。つまり、ドコモ MAXの特典を充実させる代わりに、端末の値引きやポイント還元などの施策が減る可能性だ。この点については「料金プランにさまざまなバリューを取り込んだドコモ MAXを導入したように、お客さまには料金の価格だけでなく、トータルのサービス価値で選んでいただけることを目指している。販促費については今後の状況を見ながら適切に判断していきたい」とのこと。
この第1四半期は、KDDIも新料金プランや既存プランの値上げを発表したり、楽天モバイルもU-NEXTを組み込んだ料金プランを発表したり、料金にまつわる動きが活発だ。他社も踏まえた料金戦略を問われた島田氏は「他社のプランの影響は、評価が難しい」としつつ、ドコモ MAXについては「ほぼ想定を上回る数値が出ている」と評価する。また金額については「値上げと書かれているが、既存のプランは値上げしていない。新しいメニューを出した価値に対して金額を設定している。決して値上げをしようと思ってやったわけではない」との見解を示した。
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