細かな条件改定によるコストの圧縮と、解約率の低下を加味することで、割引適用後の料金を据え置くことができた格好だが、ソフトバンクグループ全体の経済圏を拡大する種まきもした。シンプル3によってPayPayカードの契約やPayPayの利用を促進し、実際にこれらを使ってもらうことで「GMV(流通取引総額)の拡大を狙える」(同)からだ。
このGMV拡大のために導入したサービスの1つが、先に挙げたPayPay使ってギガ増量キャンペーン。PayPayの利用回数に応じてデータ容量が付与されるため、特にM/Lプランを契約している人には、決済をここに寄せるモチベーションになる。10GB付与の30回という条件は、「PayPayステップ」で翌月の還元率を0.5%上げるためにも必要になる回数。二重におトクになるため、利用を促進しやすくなる。
もう1つが、PayPayカード ゴールドの優遇だ。シンプル3では、PayPayカード割が2つに分かれており、ノーマルカードの場合だと330円だが、この額がゴールドカードだと550円に上がる。先に挙げた料金据え置きというのは、ノーマルカードの場合。ゴールドカードの割引が適用されると、シンプル2よりも料金は220円分下がる。クレジットカードの種別によっては、値上げどころか値下げになるというわけだ。
とはいえ、ゴールドカードにはノーマルカードにはない年会費が1万1000円かかる。220円安くなっても、1年間では2640円。PayPayでの支払いに使ったときの還元率がノーマルカードより0.5%上がる特典まで加味しても、なかなか元を取るのは難しい。一方で、家族3人で使った場合、年間で7920円分の節約になる(※家族カードは年会費無料)。年60万円強、PayPayで支払うことで、年会費と通信料の節約分の差額である3080円を補える。
それ以上の支払いがあれば、ノーマルカードを持つよりポイント還元が多くなる。寺尾氏が、「一般的な方はほとんどが複数のカードを持っていて、どれをメインするかの勝負になっているが、ゴールドカードは年会費を払っていただくので、メインカードに近づいていく」と述べていたのは、そのためだ。ゴールドカードの契約を促進して、かつより決済をそこに集中してもらうことでクレジットカード側の収益を稼ぐというのがソフトバンクのグループ全体での戦略になる。
こうした料金設計は、メインブランドであるソフトバンクにも踏襲される可能性がある。寺尾氏は、「まず(契約獲得の)旗艦となっているY!mobileを固めた上で、ソフトバンクの方をどうするかをやっていく」と語っていたが、Y!mobileで好評であれば、ソフトバンクに導入されることは間違いないだろう。ペイトクと合わせれば、よりシナジー効果も狙うことができるはずだ。シンプル3は、そこに向けての布石を打った料金プランといえる。
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