NTT、KDDI、ソフトバンク、楽天グループの第1四半期(楽天グループのみ第2四半期)決算が出そろった。ドコモ、KDDIは6月に新料金プランを導入するとともに、低価格の小容量プランを廃止しており、事実上の値上げになっている一方で、ソフトバンクは現時点で静観の構えを見せている。楽天モバイルも、10月に「Rakuten最強U-NEXT」を導入するが、既存の「Rakuten最強プラン」は維持している。
4月から6月をまとめた第1四半期の業績には、一部だが、その成果が反映されている。いわば、新料金プラン導入の“答え合わせ”になっているというわけだ。ドコモ、KDDIがより大容量の料金プランへのシフトを鮮明化させる中、ソフトバンクや楽天モバイルはどのように動くのか。4社決算や経営陣のコメントから、最新の競争環境や各社の動向を読み解いていきたい。
「6月にドコモMAXを開始して、おかげさまで70万のお客さまに契約いただけた。月平均35万、年間300万の計画なので、順調なスタートを切れている」――こう語るのは、NTTの代表取締役社長を務める島田明氏だ。DAZNや無料の国際ローミングが内包されたドコモMAXが評価され、わずか2カ月で目標値の約4分の1を達成した。この契約数は「想定を上回る数値」(同)だという。
ドコモはユーザーの母数が大きいため、70万契約だとARPU(1ユーザーあたりの平均収入)に与える影響は小さいが、「ドコモmini」の導入で旧料金プランのirumoなどへの移行が一段落した結果、前年と同額に着地。島田氏も「まだ先まで見なければいけないが、おおむね底打ちした認識」と語る。
irumoの低容量プランを廃止したことで、競争力の低下が懸念されていたが、番号ポータビリティ(MNP)での増減は3四半期連続でプラスを維持。スマホなどの主要回線を中心にした「ハンドセット解約率」は2024年から0.01ポイント改善した。ドコモMAXは、旧料金プランのeximoより金額が高いこともあり、プラン移行前後の単金増減は20%向上している。
新料金プランが狙い以上の効果を発揮したドコモに対し、KDDIも「新プランは好スタートを切っている」(KDDI 代表取締役社長CEO 松田浩路氏)という。料金プラン改定後は、「使い放題MAX+」や「auバリューリンクプラン」を選択するユーザーが8割に達しており、競争力が高まっていることがうかがえる。また、「ブランド間移行や解約率もトレンドが改善している」(同)。
KDDIは、新料金プランの導入に伴い、「マルチブランドの再設計を行った」(同)。具体的には、auに「au 5G Fast Lane」や「au Starlink Direct」などの付加価値を付けるのと同時に、サブブランドのUQ mobileも小容量の「ミニミニプラン」をなくし、より中容量にシフトさせている。このリブランディングにより、まず「UQからauへの移行が1.4倍に増え、auからUQへ移行される方がかなり減った」(同)。
サブブランドで獲得したユーザーがメインブランドに移れば、キャリアにとってはARPUの上昇が見込める。ブランドの位置付けを見直したことで、アップセルが図れているというわけだ。こうした見直しは解約率にも効いており、「auは引き続き低水準、UQ mobileは大きく低下した」(同)という。特にミニミニプランは、「50歳以下の方の約半分が1年以内に離脱していたことが分かっている」(同)と、解約増の震源地だった。
料金が安いため、他社に移る前提で維持していたユーザーが多かったというわけだ。マルチブランドの再設計を行ったことで、「全体としてしっかり操縦かんを握ってコントロールができる範囲」になった。その意味では、2社とも新料金プランを導入したポジティブな効果が出ているといえそうだ。KDDIは8月に使い放題MAX+など、既存の料金プランも値上げしており、来期はさらなるARPUの増加も見込める。
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