2社が新料金プランを導入し、値上げに踏み切ったのを横目に、純増数を大きく伸ばしているのが楽天モバイルだ。6月末時点での契約者数はMVNOなどの回線数も合わせて7月に900万を突破。楽天グループの代表取締役会長兼社長の三木谷浩氏は、「1000万台の大台突破に向けて、下半期は純増ペースをさらに加速させたい」と自信をのぞかせた。
楽天モバイルは、この四半期に解約率も低下しており、2025年6月には1.26%まで低下したという。三木谷氏は、「一部キャリアの料金改定もあり、解約率は昨年(2024年)秋の水準まで下がってきている」と語った。これは、他社が低価格の料金プランを廃止し、楽天モバイルからポートアウトする先がなくなったことを示唆している。
また、同社は「追加的なエコシステムの売り上げが伸びてきていて、Eコマースや金融も含めて堅調。その大きな原因がモバイルの伸長にある」(同)。その要因になっている低価格の料金体系は、維持していく考えだ。10月にはRakuten最強U-NEXTは導入する一方で、現行プランのRakuten最強プランの値上げは「今のところ考えていない」(同)という。
値上げして収益の拡大やパートナーへの還元を狙うドコモやKDDIに対し、料金を維持して解約率が下がった楽天モバイル。この板挟みになってしまっているのが、ソフトバンクだ。同社の社長執行役員兼CEO 宮川潤一氏は、「Y!mobileの低容量プランの話で言うと、最も強敵は楽天モバイル」と語る。他社と同様、低容量プランを廃止してしまうと、対楽天モバイルで不利になるというのが宮川氏の考えだ。
また、ソフトバンクは、Y!mobileで獲得したユーザーがソフトバンクの大容量プランに変更する「と金プロジェクト」(同)でARPUの底上げを図っている。宮川氏は「エントリー(新規契約)しやすいこの構造を変えるつもりはない」としており、小容量プランの廃止には否定的だ。MNPでの獲得も好調だというが、その主要因は「何といってもプライシング」(同)。ユーザー数が増加しているからこそ、値上げの判断に迷いが出ている。
一方で、宮川氏は決算説明会などで先陣を切って値上げを示唆してきた。その考えは、「まったく変わっていない」としつつ、「やっぱりなという時期が来ると思う」と語る。宮川氏は「値上げなのか、新しいサービスを出すのか、考える方向は決まっている」ともコメントしており、近い将来、何らかの新料金プランを導入することは確実と見ていい。一連の話を踏まえると、小容量プランは残しながら、ペイトクなどの大容量プランに手を入れる可能性が高いといえそうだ。
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