ソフトバンクは5日、2026年3月期第1四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比8.0%増の1兆6586億1500万円、営業利益は同4.3%減の2907億3400万円で増収減益だった。ただし、LINEヤフーにおける一過性の要因が影響したため、「実力ベース」(宮川潤一社長)では6%の増益だとしている。
宮川氏は、営業利益で通期予想に対する進捗(しんちょく)率が29%となっていることから、通期1兆円の営業利益達成について「確実にやることをお約束できる」と強調。他社に対抗した携帯料金の値上げについては、「値上げしたい気持ちはすごくある」ものの、ユーザーから受け入れられるかを慎重に検討して判断したい考えだ。
全体の売上については、全セグメントで増収となっており、特にファイナンスとディストリビューション事業が20%を超える成長率となった。営業利益は、利益ではメディア・EC事業で254億円、コンシューマー事業で26億円とそれぞれ減少し、132億円の減益となった。
これは、2024年にLINEヤフーグループが計上した、子会社の支配喪失に伴う一時的な利益が432億円あり、さらに今期にはLINE Bank Taiwanへの増資に伴う一時益が加わり、これらを省くと営業利益は2607億円から2762億円と6%の増益。全体の進捗率に対しても29.1%となっており順調。
セグメント別では、主力のコンシューマー事業において売上高が同5.3%増の7178億円、営業利益は同1.6%減の1538億円となった。ファイナンスが137%、ディストリビューションが55%と、それぞれ大幅な増益となっており、エンタープライズも18%増で順調だった。
モバイル分野では、売上高が同1.3%増の3975億円にとどまり、営業利益は同1.6%減の1538億円の増収減益だった。スマートフォンの仕入れ原価や販売促進費が増加したことで、営業費用が7.4%増の5640億円となったことが影響した。端末代金の上昇で物販等売上は伸びたが、費用も増大した。
ARPU(ユーザー1人あたりの平均収入)の増加に影響するスマートフォン契約は同3%増の3195万契約となり、1年間で105万件の増加となった。ARPU自体は同30円減の3700円だが、コンシューマー分野では上昇傾向にあり、「コンシューマーは心配していない」と宮川氏は自信を見せる。
コンシューマー事業の進捗率も28%で、第2四半期から巻き返しを図り、通期純増の見通しは維持する。ソフトバンクは全体として「下期に売上が増加する構造」であり、第1四半期としては順調との認識を宮川氏は示す。
PayPayなどの金融/決済分野を含むファイナンス事業では、売上高は913億円で23%増。営業利益は181億円で、136.8%という大幅な成長となった。PayPayの決済取扱高が24%増の4.5兆円まで順調。PayPayの連結EBITDAが87%増の219億円まで拡大した。PayPayとの口座連携で特典を優遇したことで「PayPay銀行も軌道に乗った」と宮川氏。PayPay銀行では、ソフトバンクユーザー向けに住宅ローン金利優遇も実施したことで、貸金残高が増加した。
エンタープライズ事業では、継続してソリューション事業が成長。事業全体では売上高が8%増の2338億円、営業利益が18%増の488億円となった。この分野では、三井住友カードとの連携が大きなトピックで、ソフトバンクが提供するヘルスケアなどのデジタルサービスをOlive会員に提供する他、PayPayとも連携して両社の経済圏の強みを生かし、「決済の大連立を目指す」とした。
さらに、ソフトバンクが開発を進めるAIコールセンターのソリューションを、三井住友カードのコンタクトセンターへ導入する計画。これは同社にとっても最初の導入事例であり、2025年度内にも導入が行われる。これには宮川氏も大きな期待を寄せている。
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