今回の決算会見では、宮川氏が「(決算の)数字に対する質問がない」と嘆くほど、報道陣やアナリストからは戦略に関する質問が集中した。
ドコモとKDDIが通信料金の値上げに踏み切ったのに対して、ソフトバンクは料金据え置きの状況だが、値上げ自体は既定路線というのが宮川氏の考えのようだ。「適切な時期に適切な価格」へと変更する計画だが、ユーザーの動向も踏まえ、「今、踏み込むべきかを含めて非常に悩んでいる」という。「お客さまに理解してもらえる、選択してもらえるような価格帯は何かを議論中」だという。
MNPは好調だと言うが、その主要因は「ネットワークやサービスとかのよさというより、料金」だという。そうした点からも、「値上げしたいが、受け入れられる絵かどうかが全て。慎重に検討している」と宮川氏は話す。
それに対して、ソフトバンクでは窓口での手続きに加えて、Webでの手続きにおける手数料を大幅に値上げ。これまで無料だった手続きを有料化した。宮川氏は「いろいろなコストが上昇していることを踏まえて実施した」という。
Web手続きには店舗に比べてコストは下がるが、宮川氏「セキュリティ対策、本人確認の法令対応、決済システムの関連費用が上がっている」と主張。そうしたコスト増に対応して、サービス向上のために「やむなく上げたので理解してほしい」と話した。
ショップの店員、保守要員の賃上げ、コスト増への対応も必要で、「業界の健全な発展のためには価格の見直しも必要で、一生懸命考えている」と宮川氏は話す。
各社の懸案となっている、低容量プランを契約してすぐに他社に移転するユーザーに対して、他社は低容量プランの廃止で対応しているが、宮川氏は「対策は少し打って少し改善しているが、状況はあまり変わっていない」と言う。
とはいえ、ソフトバンクとしては低容量プランで加入したユーザーがデータ通信を使うようになって上位プランに移行する「と金プロジェクト」を推進しており、低容量プランの廃止はしない方針だ。
こうした値上げをためらい、低容量プランを維持する背景には、楽天モバイルの存在もある。「低容量プランや価格の話だともっと強敵は楽天モバイルで、そこと戦っている」と宮川氏。「ドコモもauも強敵だが、楽天も忘れてはいけない存在」であり、各社が同じ戦略だと値上げをしていない楽天モバイルが漁夫の利を得るのでは、というのが宮川氏の考え。
宇宙通信を目指すHAPSに関して、従来の飛行機型に対して飛行船型の機体を飛ばして2026年にプレ商用サービスを開始する予定を発表している。これに対して問われた宮川氏は、「もともと飛行機型と飛行船型を追いかけていて、どちらも一長一短がある」と指摘。ところが、現在飛んでいる飛行機のさらに上空を飛ぶ飛行機型は「商用化で時間がかかると苦しんでいた」という。
しかし、米国で飛行船型なら許可が出ることになり、日本の上空でも飛行が許可されるか、国土交通省に確認したという。結果として、可能ということが分かり、まずは早期に実用化ができる飛行船型を導入することにした。飛行機型だと2029年まで時間がかかるという想定から、一気に2026年まで短縮できたのはこうした経緯があったそうだ。
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