2機種に共通する新機能が、5Gへの対応だ。仕様的には5GといってもNSA(ノン・スタンドアロン)ではなく、5G SA(スタンドアロン)のみとなり、IoTデバイス向けに策定された省電力規格の「RedCap」にも対応している。現時点で、RedCap対応のスマートウォッチはまだまだ少ない中、Appleがいち早くこれをサポートしてきたのは驚きだった。その意味で、新しいApple Watchは通信機器としても注目したい端末の1つだ。
なお、ネットワーク側のRedCap対応はソフトバンクが表明しているが、Apple Watch Ultra 3およびApple Watch Series 11は、ドコモやauの5G SAでも利用が可能。仕様的には、必ずしもRedCapがマストというわけではなく、5G SAの一部周波数を使う通信には対応しているという。
実際、どの程度、速度が向上するかを試してみるため、ドコモのワンナンバーを契約してApple Watch Ultra 3にeSIMのプロファイルを書き込んでみたが、残念ながら、試用期間中は5Gに接続できなかった。もともとドコモは5G SAエリアが他の2社に比べると狭いため、ピンポイントでエリア化している場所に行ってみたものの、結果は変わらず。Apple Watchの対応周波数が公開されていないため、iPhoneとApple Watchの5G SAでエリアに違いがあるのか現時点では不明だが、筆者のケースでは接続できなかったことを報告しておきたい。
もっとも、エリアの狭さについてはソフトバンクも同じで、5G SAエリアそのものはドコモより面で広がっているものの、RedCap対応が済んでいる基地局は限定的。現状では、リストとして提供されている範囲にとどまっている。Sub 6の基地局全てをSA化しているKDDIなら接続できそうだが、残念ながら契約および時間の都合でテストできていないため、続報に注目してほしい。
とはいえ、Apple Watchのデータ通信を単独で使うシーンは、比較的限定されている。iPhoneがそばにあれば、Bluetooth経由になるのはこれまでと同じ。アプリ側も、そこまで大容量の通信を要求されるものは少ないため、4G接続でも使用感に不満があったわけではない。今後、各キャリアのエリアが広がっていけば利便性は増すため、先行投資的に5G対応をしたとみられる。技術的には面白いが、購入時に最優先すべき仕様かというと、必ずしもそうではないといえそうだ。
無線通信という意味では、Apple Watch Ultra 3の衛星通信もトピックの1つ。実際に遭難したわけではないため、デモでしか試せていないが、iPhoneよりも小型な端末にもかかわらず、素早く衛星からの電波を補足できていた。登山などの際に、iPhoneがバッテリー切れになってしまった場合など、もしものときの備えとして対応しているメリットはある。現時点での実用度でいえば、こちらの方が上といえそうだ。
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