2025年9月26日、日本の新たなテクノロジーの聖地がその姿を現した。中央区銀座3丁目にリニューアルオープンした「Apple銀座」だ。
この日、歴史的な店舗の再開を祝うため、そして最新のデバイスを手に入れるために集まった人々の列は、実に1000人を超えたとされ、銀座の街並みに異様な熱気をもたらした。華やかな祝祭の裏側で、入手困難な最新スマートフォンの在庫を巡る熾烈な争奪戦と、転売問題の根深い影が交錯していた。
そもそもApple銀座は、単なる一店舗ではない。2003年、米国外における初のAppleストアとして誕生した、いわば世界中のファンにとっての特別な場所である。その店舗が、一時的な移転を経て、再び元の地に4階建ての壮麗なデザインとなって帰ってきたのだ。2022年8月まで営業していたサヱグサ本館ビルでの歴史に一度幕を下ろし、約3年間の仮店舗営業を経ての凱旋だ。
Apple銀座では、発売されたばかりの「iPhone 17」シリーズや「iPhone Air」、そして「Apple Watch Series 11」といった最新製品を購入できる。単に製品が陳列されているだけではない。来場者は実際にデバイスに触れ、その質感や操作性を心ゆくまで試すことができる。
さらに、iPhone Airのために特別にデザインされたバンパーやMagSafe対応ケース、クロスボディストラップといった多彩なアクセサリー群も購入可能だ。リニューアルを記念したスペシャルエディションのApple Gift Cardも期間限定で用意され、この特別な日を記憶に刻むための演出も抜かりはなかった。
新生Apple銀座が提供するのは、製品の販売だけにとどまらない。Appleが世界中のストアで展開する独自のサービスが、この場所で最大限に体験できるよう設計されている。例えば、月々の分割払いオプションや、現在使用中のデバイスを下取りに出すことで最新モデルをお得に購入できる「Apple Trade In」プログラムは、高価なデバイスへの乗り換えを検討するユーザーの背中を押すだろう。
また、オンラインで注文した製品を都合の良い時間に受け取れる「Apple Pickup」専用エリアの設置は、多忙な現代人のライフスタイルに寄り添う、利便性を追求した結果といえる。
デイリーセッション「Today at Apple」も無料で開催される。ここでは「iPhoneで使えるiOS 26の新機能」や「iPhone 17、iPhone Air、iPhone 17 Proを試してみよう」といったテーマで、専門知識を持つスタッフから直接、製品を最大限に活用するためのヒントやテクニックを学ぶことができる。
しかし、当日銀座にできた長蛇の列、その全てがリニューアルそのものを祝福するためだったわけではないようだ。行列に並んだ人々の多くが、実は別の、より切実な目的を抱いていた。それは、発売から1週間が経過してもなお、市場で深刻な品薄状態が続く「iPhone 17 Pro」と「iPhone 17 Pro Max」だ。
Apple銀座リニューアル当日の長蛇の列は、単なる祝福目的ではなかった。人々の多くが抱いていたのは、「発売から1週間が過ぎても深刻な品薄が続くiPhone 17 ProとPro Maxの入手」という切実な目的である。通常は不可能な人気機種の予約なし購入が、この日は特例で許可されていた通常、発売直後の人気iPhoneモデルは予約なしで手に入れることはほぼ不可能に近い。しかし、この日のApple銀座は、リニューアルオープンという特別な状況を鑑み、「予約なしでもiPhoneを購入できるようにした」という異例の措置を講じたのだ。
この情報がどこまで事前に、そしてどの範囲に伝わっていたのかは定かではないが、この特例措置こそが、早朝から多くの人々を銀座へと向かわせた最大の動機であったようだ。
実際に、朝早くから並び、念願の最新モデルをその手に収めたという声も聞かれた。多くの販売店が入荷未定と案内する中で、Apple銀座へ行けば手に入るかもしれないというわずかな望みが、1000人を超える熱狂を生み出したのである。
だが、その希望は長くは続かなかった。Apple銀座によれば、特に人気の高かったiPhone 17 Pro Maxの当日販売分の在庫は、昼の12時過ぎには早くも底をついたという。この事実は、最新iPhoneに対する市場の渇望がいかにすさまじいかを物語ると同時に、供給が需要に全く追いついていないという厳しい現実を改めて浮き彫りにした。
また、1人が1回の会計で購入できる上限が、なんと最大5台に設定されていた──という驚くべき事実も分かった。近年の人気商品販売、特に転売が問題視される製品においては、購入数を1人1台に厳しく制限するのが通例となっている。それに比べ、最大5台というルールはあまりにも緩いと言わざるを得ない。
このルールが、いわゆる「買い占め」を助長した可能性は否定できない。純粋に家族や友人のために複数台購入する客もいただろうが、その一方で、利ざやを得ることを目的とした転売ヤーが群がったであろうことは容易に想像がつく。
人気ゲーム機「Nintendo Switch 2」でも社会問題化したように、買い占めと高額転売は、本当に製品を必要としている一般消費者の手に渡る機会を奪う。
Appleでは、販売ルールをSNSなどでは都度告知しておらず、転売を防ぐための努力を怠っているわけではない。店舗へ足を運んだタイミングや店舗によってルールが異なる可能性もあるそうだ。
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