もう1つの不安材料が、ネットワークだ。楽天モバイルは、2025年に新規基地局を1万設置する目標を掲げていたが、第3四半期が終わった9月末時点での数は4611にとどまる。決算説明会でも、一部は来期にずれ込む見通しが出された。結果として、第3四半期までの設備投資は340億円にとどまっている。2024年度は810億円だったため、このままのペースだと大きく減少する形になる。
三木谷氏は、「新たな基地局を設置することで、カバレッジホールの解消やキャパシティー対策を行う」と述べていた一方で、それが計画通りに進んでいないことがうかがえた。
その分、楽天モバイルにとってはコスト削減につながるが、基地局が増えなければ、エリアが広がらないだけでなく、キャパシティーも不足しがちになる。前者はKDDIのローミングで補える一方で、後者の対策は急務だ。参入時期が他社より遅かったこともあり、ネットワークでは他社の後じんを拝している楽天モバイルだが、このままでは差が詰まるどころから、より開いてしまう恐れもある。
また、地方で頼みの綱になっているKDDIのローミングも、終了期限まで1年を切った。楽天モバイルが、“最強ネットワーク”を目指すと宣言していることへの受け止めをたずねられたKDDIの代表取締役社長CEO、松田浩路氏は「最強という言葉は私どものローミングを含めておっしゃっていると思っている」と皮肉ったが、実態として、同社はローミング込みで人口カバー率を他社並みに引き上げている。仮に1年後に打ち切られてしまえば、エリアの穴が広がる恐れも出てくる。
松田氏が「MNOは国民の資産である周波数をしっかり展開していくのが使命。楽天とは競争と協調で、自前のエリアを構築するまでの間、暫定的に(基地局を)お貸ししている」と語るように、ローミングはあくまで、自社のエリアが十分になるまで一時的に行うもの。「次のタイミングを持っていくつかご相談を差し上げたいと思っている」(同)というように、再延長が行われるかどうかは未知数だ。
ネットワーク品質は、ユーザー獲得の基盤になるのはもちろん、データ利用量の増加を促せるため、APRUの向上にもつながる。キャリアのビジネスにとって、土台のような存在だ。ここの強化がなければ、足元が揺らぎかねない。順調にユーザーを増やし、収益を拡大している楽天モバイルだが、依然として課題も抱えているといえそうだ。
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