ソフトバンクが3月25日、5Gネットワーク強化に関する説明会を開催し、ミリ波の活用について説明した。
携帯キャリア各社は現在、5Gを中心にネットワーク品質の強化を行っている。5Gは6GHz帯以下の「Sub6」と、30GHz〜300GHzの「ミリ波」に大きく分けられ、それぞれの周波数の特性を生かして活用している。
Sub6は周波数の幅は小さいが、電波が回り込みやすく、広い範囲をエリア化するのに欠かせない。一方のミリ波は周波数の幅が大きく、電波をつかめば高速・大容量の通信が可能になるが、直進性が高いため、障害物がある場所や室内ではつながりにくいというデメリットがある。
ミリ波は直進性が強く、減衰しやすいため、ソフトバンクも広範囲には運用できていない。東京都の新橋エリアでも、ミリ波は限定的な地点しかカバーできていない。モバイル&ネットワーク本部の安藤高任氏はミリ波について「シミュレーションをかけると、半径75mや100mなどの狭い範囲でしか使えないのは事実」と話す。エリアマップ上でも、ミリ波のカバー範囲は点で表現されている。
ただ、ソフトバンクは、29GHz帯にて400MHz幅のミリ波を保有しており、これは同社が運用している周波数の約半分を占める。ここまで広大な周波数を「使わない手はない」(安藤氏)と考え、特定の方向に電波を集中させる「ビームフォーミング」も活用しながら、広範囲をカバーできるよう努めている。こうした工夫もあってか、街中でミリ波の届く範囲を測定したところ、500mを超える場所にミリ波が到達する可能性が見えてきたという。特性の割にミリ波は「意外に飛ぶ」場合があるということだ。
ソフトバンクが新橋のSL広場内でSub6とミリ波を組み合わせた通信速度を測定したところ、下りで1.9〜2.5Gbps、上りで95〜100Mbpsを記録したという。さらに、東京駅前の広場では下り2Gbps、上り540Mbpsを記録した。
ミリ波単独の通信性能も測るべく、ミリ波の電波を受けたCPE(Customer Premises Equipment:構内設置機器)に接続した固定回線で検証したところ、下り2.32Gbps、上り512Mbpsを記録した。こちらはミリ波基地局からCPEまで284mの距離で、晴天時の結果だった。悪条件での実力も見るべく、基地局からCPEまで1.1キロの距離で、雨天時にも実験したところ、下り2Mbps、上り504Mbpsとなり、晴天時とほぼ変わらない結果を示した。安藤氏によると、これはビームフォーミングの効果が悪条件に勝ったためだという。
横浜市の施設でも同様の実験を行ったところ、下り2.3Gbps、上り530Mbpsと同様の結果を得られたという。
ミリ波は本来、スマートフォンで利用する周波数だが、2026年3月現在、ミリ波に対応するスマートフォンは一部のハイエンドAndroid端末に限られ、国内のiPhoneはいまだミリ波に対応していない。これはソフトバンクに限った話ではないが、日本ではミリ波のメリットを広く享受できるとはいいがたい。
そこでソフトバンクは、ミリ波のCPEをWi-Fiアクセスポイントに接続し、Wi-Fi経由でスマートフォンにミリ波(から変換した電波)を飛ばす実証実験を実施。Wi-Fiのバックホールが光ファイバーからミリ波に変わった形だ。この仕組みなら、ミリ波に対応しないスマートフォンでも、Wi-Fi経由で間接的にミリ波での通信が可能になる。
また、トラフィックをミリ波に分散させることで、LTEや5GのSub6での通信が快適になるというオフロード効果も期待できる。光ファイバーを経由しないため、Wi-Fiスポットを敷設しやすいというメリットもある。
豊島区の大規模イベントで実施したところ、雨天や周辺に障害物が多くある環境だったにもかかわらず、ミリ波CPEは下り2Gbps、上り341Mbpsを記録した。Wi-Fi経由で通信をしたスマートフォンは、CPEほどではないものの、80人が同時に接続する環境下で、下り92Mbps、上り93.2Mbpsを記録した。
音楽フェスでも同様に、ミリ波をWi-Fi経由で提供する実証実験を行ったところ、CPEは下り2.3Gbps、上り513Mbps、スマートフォンは下り324Mbps、上り92Mbpsを記録した。
説明会では、この「ミリ波×Wi-Fiソリューション」のデモも実施。ミリ波をWi-Fiで飛ばして通信した際の性能を測るべく、「(1)ミリ波対応スマートフォンにて直接ミリ波で通信をする」「(2)ミリ波非対応スマートフォンにてWi-Fi経由でミリ波の通信をする」「(3)ミリ波非対応スマートフォンにて他の5G周波数で通信をする」という3パターンでテストした。
ミリ波基地局は数メートル離れた近い距離に設置されており、CPEで受信した電波をWi-Fiアクセスポイントで吹いている。ミリ波対応スマートフォンは「Xperia 1 VI」を、ミリ波対応スマートフォンは「iPhone 15 Pro」を用いている。
(1)のケースは、下り2.4Gbps、上り296Mbpsが出ており、ミリ波直接通信の実力を示した形だ。(2)のケースは下り258Mbps、上り19.5Mbpsとなり、ミリ波の直接通信よりはスループットが大幅に落ちてしまった。(3)のケースは下り775Mbps、上り103Mbpsとなり、5Gの直接通信の方がミリ波Wi-Fiより速かった。ソフトバンク社内で5G環境が整備されていたことが影響したのかもしれない。
筆者の手持ちのスマートフォン(iPhone 17 Pro)でもミリ波にWi-Fi接続して速度を3回測定したところ、下りは167/63.6/253Mbps、上りは81.9/95.1/43.5Mbpsだった。上記の(2)と同じ条件だが、大幅な違いはない結果といえる。Wi-Fiを経由すること、より多くのユーザーが同時に接続することで、ある程度の速度減衰があるようだ。
なお、Wi-Fi経由のミリ波は、イベントに限定しているわけではなく、テクノロジーユニット統括 インフラ技術戦略室 室長の藤野矩之氏によると、一般の公衆Wi-Fiでも広げていく予定だという。ただ、Wi-Fiスポットには「ミリ波」の表記はなく、ユーザー側にはミリ波が吹いていることは分からない。ミリ波の訴求や情報発信も「積極的にやっていきたい」とのこと。
今後に向けては、ミリ波対応端末の拡大も重要になる。特に日本で過半数のシェアを占めるiPhoneの対応は必須といえる。メーカーに対してミリ波対応の交渉や調整をするといったことも求められる。
また、ミリ波の弱点をカバーする技術も積極的に導入していく。その1つが、ミリ波の反射板だ。反射板に電波を反射させることで、減衰を抑えてカバー範囲を広げることができる。反射板は京セラが「メタサーフェス反射板」を、DNPの「リフレクトアレイ PASREACH」を開発している。Sub6とは電波の特性が異なるため、ミリ波用に開発しており、ソフトバンクはこうした機材の活用を推進していく。
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