もっとも、ネットワークスライシングの本格活用にはまだ課題も多い印象を受けた。1つは、5G SAのエリアだ。特にドコモに関しては、KDDIやソフトバンクと比べると5G SAの展開が遅れており、ネットワークスライシングを適用できる場所が限定される。ドコモビジネスの岩本氏も、「SAエリアがネーションワイド(全国規模)に広がっていないため、今回われわれがスライシングを提供するのは、面的というより固定的なユースケース」と語る。
半固定的な使い方であれば、「お客さま要望エリアという形で基地局を作っていくことがある」(同)ので、エリアの狭さはある程度カバーできる。例えば、自動運転のような幅広い場所で通信が必要になる用途を想定すると、エリアの拡大は必須。コンシューマー向けにスライシングを活用したサービスを提供する上でも、エリアの広さは欠かせない要素になる。
5G SAで先行している海外キャリアに目を移すと、法人利用に加え、コンシューマー向けサービスにもネットワークスライシングを活用し、収益化している会社もある。3月にスペイン・バルセロナで開催されたMWC26 Barcelonaでは、こうした実績を成功事例として共有しているキャリアも存在した。
シンガポールのSingtel(シングテル)は、エリクソンのブースで最新の動向を解説。同社は2022年にソフトバンクと同じF1シンガポールグランプリで、ネットワークスライシングを活用した動画配信を提供。ワールドカップでも、ユーザー向けに優先帯域を割り当てるサービスを実施している。
また、現在は「5G+ Priority」というサービスを提供しており、コンシューマー向けにも料金プランに応じた通信品質を提供している。エリクソンによると、F1やワールドカップのようなシンプルなネットワークスライシングから段階的に複雑な仕組みを導入していくことで、より広いユーザーに受け入れられるサービスに育ててきたという。
Singtelの担当者は、より高品質なサービスを提供することでユーザーの満足度が向上するとともに、5Gへの移行も進んで収益化にも貢献したと話す。他にも、ドイツのドイツテレコムが「5G+ Gaming」という名称でストリーミングゲームをより低遅延で遊べるオプションを提供しているが、5G SAで先行する中国でも同様の事例は多い。
法人向けのような特定用途や半固定的な場所に限定される日本のネットワークスライシングは、まだ初期段階のもので導入が早かった国と比べると後れを取っているようにも見える。一方で、KDDIが優先制御の「au 5G Fast Lane」をネットワークスライシングへの橋渡し的な役割に位置付けているように、サービスの立ち上がりを予感させる動きもある。2026年度からの各社の動きにも注目しておきたい。
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