携帯電話端末の値引きに制限が入った背景には、「転売屋」や「短期解約者」の存在がある。値引き制限が緩和すれば、一見すると顧客獲得面で有利に働きそうなものだが、昨今の見直し議論において携帯電話事業者が緩和にむしろ“及び腰”なのは、転売屋や短期解約者への対策を講じるのが大変だという側面もある。
長期間利用するユーザーは、機種購入時や通信料における割引が少なく、月々の支払いは多くなる傾向にある。その“多く”支払った分が、新規契約やMNP(乗り換え)を行うユーザーの特典の“原資”となる。
この仕組みを“悪用”して、転売屋は安く買った機種を転売するし、短期解約者(ホッパー)は契約で得られる特典を享受したら解約か乗り換えることを繰り返す。いわば利用目的のない契約が横行している状況で、真面目に端末を買って通信料を支払っているユーザーが損をする――この“不公平さ”を是正するためだ。
割引の制限が緩和された場合、以前の“不公平さ”が戻ってしまう懸念もある。加えて、MVNOからは「現状でもMNPの『弾』(踏み台)として使われてしまい、短期解約が多い」という声もあり、「値引きの制限を緩和する代わりに、一定の期間拘束を“復活”してもいいのでは?」という意見も出ている。
こうした状況を考慮しつつ、販売スタッフに「短期解約や転売を抑止する工夫はできないのか?」と聞いてみると、幾つか答えが返ってきた。
例えばオンラインショップだと、同じ名義の人が割引を受けられる回数に制限を設けていることがあります。名義を「電話番号」で寄せるのか「氏名」で寄せるのかは事業者によって異なる部分もありますが、店頭では契約時に本人確認を行っているので、やろうと思えば店頭受付でも「この人は既に割引を受けたことがある」的な判定する仕組みを作れると思います。
私が勤めるのは家電量販店なので、その量販店様のポイントカードを使って「複数回の購入」のチェックを行っています。ただこの仕組みも完璧ではなく、ポイントカードを新たに作られてしまうと、過去の購入履歴が出てこないという“抜け道”がありますが、一定の抑止効果はあります
あとは、人気のゲーム機とかみたいに「≪(販売を)クレジット機能付きのポイントカードを持っている人に限定する」とか、「過去半年〜1年の間に、何かしら店舗や系列店で買い物をしている人にのみ特典の付与や本体の割引を行わない」とか、お客さまの店舗に対するロイヤリティーに応じて提供するのもアリなのではないかと思います。
思い切って本人確認書類を「マイナンバーカード(個人番号カード)」だけに絞り込んで、カードのICチップの空き領域に購入履歴を記録するとかやればいいと思うんですよ。
例えば「当店のルールです」で割引の適用をお断りすると、「この間までは買えただろ?」みたいなクレームが出てしまうことがありますが、国なり通信業界なりが割引の悪用や過剰適用を防ぐ仕組みを整備するといいのではないかと考えています。
携帯電話の契約には本人確認が必須で、過去の契約履歴を含めて本人を特定可能な情報は存在するのだから、それを生かして一定の割引制限をかけられるのではないか――そういう意見が相次いだ。
通信事業者によっては、同一人物(と思われる人)が短期間に複数の契約をした場合に、店舗独自割引の原資となる「販売奨励金(インセンティブ)」を削減する仕組みを導入している。一見すると、この仕組みをうまく使えば割引制限を緩和しつつ、転売対策もできそうなものだが、問題もあるという。
あるキャリア(通信事業者)では、今でも「同一住所」「同一姓」といった情報をもとに、複数回線契約しているお客さまの短期間成約(契約)について、2契約目以降の追加インセンティブを削減するという仕組みもあります。これをうまく運用できれば、転売を目的とする端末購入を抑制できる……と思いきや、ちょっと困ったことがあります。
この追加インセンティブの減免は契約当日の手続き中には分からず、該当月における入金通知時に初めて分かる仕組みなのです。要するに、追加インセンティブをあてにして割引販売した後、入金のタイミングで「これは転売目的の購入かもしれないから、追加インセンティブを減らしました」と通知される≫ようになっています。
「キャリアの購入履歴から分からないの?」と思うかもしれませんが、一般的な併売店や家電量販店の場合、他店で購入した場合はもちろんのこと、同一店舗でも別の担当者が扱った場合は購入履歴を参照できないようになっています。結局、損をするのは「転売屋」と分からずに売ってしまった店舗だけ、って感じになります。
追加インセンティブが発生するかどうか、手続き中にシステムに出してくれるだけでも、転売目的の購入を抑止する観点ではとても助かるんですけど……。
転売抑止の観点で、短期間の複数契約に対する販売奨励金を削減する通信事業者が出てきている。しかし、奨励期の削減対象かどうか(≒転売目的の疑いの有無)がその場で確認できないため、店舗が一方的に損失を被るという構造的問題を抱えているのだ。
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