仮想化技術に見るインテルとAMDの個性元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)

» 2007年03月19日 16時30分 公開
[元麻布春男,ITmedia]
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Intelが2005年3月のIDFで示したソフトベースでの仮想化処理とVTを利用した場合の仮想化処理の、ハードウェアイベント発生数の比較。イベント発生数が少ないVTによる仮想化が性能的に有利になると当時Intelは説明していた

 こうした仮想化に関する規格策定作業の進行と、仮想化技術のインプリメントにより、ユーザーが仮想環境を利用するための敷居はどんどん下がっていく。長期的には、コンピュータを利用するほとんどすべての環境において仮想化を前提としているかもしれない。だが、それが実現するのはずっと先のことだ。2007年のプラットフォームにおいては、VT-xやVT-dあるいはAMD-Vといった仮想化技術を利用しても、仮想環境を利用するときのオーバーヘッドがなくなるわけではない。

 とくに、インタラクティブなI/O処理が多いクライアントでは、仮想化によって発生するオーバーヘッドは無視できないものになっている。確かに、最新の仮想化技術を用いることで性能低下の度合いは以前に比べれば格段に小さくなっているが、それでもネイティブ環境と比べられるレベルには至っていない。仮想化マシンでは、使うアプリケーションによってその性能低下は受容範囲内かもしれないし受容範囲外になるかもしれないことはユーザーも依然として留意しておく必要がある。

 仮想環境を利用するメリットの1つは、1台のコンピュータを複数に分割して利用することで、その利用効率を高めることにある。これは仮想化やハードウェアパーティショニングが実用化されてきたメインフレームが、極めて高価で少しでも利用効率を高める必要があったことと無縁ではない。一方で、PCに対して利用効率が問われることはこれまであまりなかったが、それでも、ブレードPCのようなセンター集約型の利用環境において利用効率は直接コストに跳ね返る。また、プロセッサのマルチコア化やメニーコア化により、マルチスレッド処理能力が向上したことも、PCにおけるCPUの利用効率にユーザーが目を向けさせる動機となるだろう。

 また、論理コンピュータ単位で独立した環境を利用できる仮想マシンは、アプリケーションを実行しているときの安全性が格段に高い。異なる論理コンピュータで実行されるアプリケーションは、OSのレベルから独立しているため、OSの不調や不具合にも影響を受けない。こうした高い独立性がもたらすシステムの安定性やセキュリティの向上が、性能面でのペナルティ(オーバーヘッド)と相殺できる用途であればサーバ、クライアントを問わず、仮想環境を導入しやすい。

Intelが2006年3月に「エンタープライズ向けCPUとプラットフォームの動向」の説明で示したスライドの1枚。ここには「Intel Virtualization Technology」と「Active Management Technology」を組み合わせたプラットフォーム「Embedded IT」が紹介されている

 官公庁や企業では、重要な内部データを扱うイントラネット接続用のPCとインターネット接続用のPCを分離し、1人で2台のPCを運用しているケースがある。仮想環境を利用することで、こうしたセキュリティに対する要求の厳しいユーザーにおいても、セキュリティを確保した上でイントラネット接続とインターネット接続を1台のPCで済ますことが可能になる。これはPCの購入コストだけでなく、管理費の削減という点でもメリットが大きい。

 その一方で、仮想環境を生かしたコンシューマ向けのアプリケーションは、今のところあまりめぼしいものがない。将来的にオーバーヘッドが無視できるレベルになればともかく、現時点においてすぐに役立つものは多くないのが実情だ。古いアプリケーションを動かすために、仮想環境を利用するというアイデアも、OSのライセンスコストや仮想環境でのデバイスサポートといった点で壁にぶつかることが少なくない。例外があるとすれば、Mac上でWindowsを利用する、という用途だが、その需要は現在のMacの市場シェアを考えれば、それほど大きくない。仮想化技術による仮想環境は、まず企業向けのプラットフォームから普及していくことになるのではないだろうか。

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