これはバランスのいい“ハイエンド”GPU──「Radeon HD 3870」ゲームベンチレビューイマドキのイタモノ(4/4 ページ)

» 2007年11月15日 14時01分 公開
[長浜和也,ITmedia]
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「GTS以上GT未満」の関係

3DMark06 3DMark Score
3DMark06 SM2.0 Score

3DMark06 HDR/SM3.0 Score
3DMark06 Shader Particles (SM3.0)

F.E.A.R.
Enemy Territory-QUAKE Wars Demo

Company of Heroes 1.7.1
World in Conflict Demo

Unreal Tornament 3 (vCTF-Suspense FlyThrough-PC)
Unreal Tornament 3 (DM-ShangriLa-FPS-PC)

PT Boats:Knights of sea benchmark DX10
Crysis Single Play demo

 同じエントリーハイエンドモデルということで、どうしても、先に登場したGeForce 8800 GTが気になってしまうわけだが、残念ながら、Radeon HD 3870はほとんどのベンチマークテストでGeForce 8800 GTを下回った。その一方で、GeForce 8800 GTS(320Mバイト版)には、多くのテストで優勢を維持している。NVIDIAのGPUラインアップに対するRadeon HD 3870の立ち位置は「GeForce 8800 GTS以上、GeForce 8800 GT未満」というあたりに落ち着くようだ。

 興味深いのはRadeon HD 2900 XTとの関係で、AMDは、新しいRadeon HD 3870が優勢であると資料などでもデータを示しているが、実際に市販ゲームでベンチマークテストを行ってみると、それほど大きな違いは確認されない。特に、DirectX 9ベースで動いているF.E.A.R.やEnemy Territory-QUAKE Wars Demo(一部の解像度における重負荷条件を除く)、そして、各ゲームのDirectX 9モードにおける測定結果では、Radeon HD 2900 XTが優勢である傾向が確認された。3DMark06でも、ほとんどの項目でRadeon HD 2900 XTがRadeon HD 3870を押さえ込んでいる。

 その一方で、DirectX 10モードで動作しているゲームタイトルの中では、Radeon HD 3870が優位に立つ局面も見られた。特に、UnrealTornament3とWorld in Conflictの重負荷条件で、その差が顕著に現れている。ただし、DirectX 10モードで動くゲームの中でも、Radeon HD 2900 XTと同程度か下回るケースも見られる。

ワットチェッカーで測定したシステム全体の消費電力

 パフォーマンスにおいて、Radeon HD 2900 XTと明確な違いを見せることができなかったRadeon HD 3870だが、消費電力の測定においては、優れた値を残している。AMDが説明していた「半減」までは行かないものの、アイドル時でRadeon HD 2900 XTを組み込んだシステムではワットチェッカーが171ワットを示していたのに対して、Radeon HD 3870を組み込んだシステムでは103ワットを示し、消費電力が比較的多い3DMark03のテストでもRadeon HD 2900 XTの3分の2程度のワット数で済んでいる。また、プロセスルールが微細化して省電力が進んだといわれるGeForce 8800 GT(ベンチマークテスト中に示したGPUの温度を見ると、そんなことを忘れてしまうが)の消費電力もRadeon HD 3870が下回っていることは、高く評価できると思う。


 RV670という開発コード名で呼ばれていたときは、次世代主力GPUとしての性能を期待されていたが、Radeon HD 3870という正式名称が知られるようになるにつれ、リークされるベンチマークの結果やAMDのコメントなどから、絶対値としての高性能ではなく、費用対効果やエネルギーあたりの性能といった面が訴求されるようになってきた。関係者に向けた行った説明会でも、AMDはそういう側面を強く打ち出している。

 そのコンセプトは、NVIDIAのGeForce 8800 GTと共通する。実売価格も3万円台後半から4万円台とほぼ競合しているが、それだけにベンチマークの結果でGeForce 8800 GTに届かなかったのは、費用対効果を重視するユーザーに対する競争力という意味で不利に働くことになるだろう。実際にグラフィックスカードを投入するベンダーがどのような実売価格を設定するかにもよるが、3万円前半、できれば3万円前後というラインが実現すると、競争力を維持できるように思われる(ただし、GeForce 8800 GTの256Mバイト版という刺客が登場する可能性あり)。

 ただ、消費電力を重視するユーザーにとって、Radeon HD 3870の「パワーあたりの性能」は高く評価されるだろう。消費電力と、それに伴なう発熱に対する許容範囲は相対的なものではなく、あくまでも「絶対値」が重要となるので、GeForce 8800 GTを下回る消費電力でRadeon HD 2900 XTに匹敵する性能を発揮するRadeon HD 3870は、たとえGeForce 8800 GTをわずかに上回る実売価格であったとしても、「このPCケースに組み込みたい」「3D性能と静音性能を両立させたい」というユーザーには最有力候補となるはずだ。

 GeForce 8800 GTのレビューで、「既存のGPUの存在価値を無意味にした」と評価したが、Radeon HD 3870はRadeon HD 2900 XTを無意味に出来ただろうか。ベンチマークの結果では、絶対値という意味でRadeon HD 2900 XTにかなわない局面もあったが、その差はわずかであり、ゲームタイトルと設定条件(とくにDirecX 10対応ゲーム)では、性能が向上することもある。

 Radeon HD 2900 XTの実売価格が5万円から6万円台に設定されていることを考えると、「ベンチマークの絶対値は譲れない」というユーザー以外には、Radeon HD 3870を選ぶ理由は十分にあると考えられる。価格と機能と性能、そしてなにより消費電力。これらのバランスのよさに、“GeForce 8800 GTに負けない”Radeon HD 3870の価値があるといえるだろう。

 

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