ゲームを超えるミッションとは──NVIDIAが「GT200」にこめたGPUの可能性(3/3 ページ)

» 2008年06月19日 11時30分 公開
[笠原一輝,ITmedia]
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プロセッサコア240個の“280”と192個の“260”

 GeForce GTX 200シリーズには、GeForce GTX 280とGeForce GTX 260という2つのモデルが用意されている。その違いは以下のようになる。

GeFroce GTX 280 GeFroce GTX 260
開発コードネーム GT200 GT200
チップ数 1 1
プロセッサ数 240 192
コアクロック 602MHz 576MHz
シェーダクロック 1296MHz 1242MHz
メモリクロック 1107MHz 999MHz
メモリバス幅 256ビット 256ビット
メモリ容量 1GB 896MB
PCI Express Gen2 Gen2
PCIe電源ピン 8ピン+6ピン 6ピン×2
PureVideo HD VP2 VP2
消費電力 236W 182W

 大きな違いはThread Processorの数でGeForce GTX 280が240個搭載しているのに対して、GeForce GTX 260は192個となっている。また、コアクロックやメモリクロックが異なっているほか、メモリ容量はGeForce GTX 280が1Gバイト、GeForce GTX 260は896Mバイトとなっている。トランジスタ数は140億トランジスタ、TSMCの65ナノメートルプロセスルールを利用して製造される。

7000“ペタ”FLOPSが世界中のPCで眠っている

 NVIDIAがGeForce GTX 200シリーズのリリースで訴求するメッセージは明快で、GPUは単に3Dゲームをやるためだけのものではないということだ。GPUを利用したPhotoshopやトランスコードのデモでも分かるように、ベクトル演算を得意とするGPUの特徴を生かすことで、PC全体の処理能力を大きく引き上げることが可能になる。

 日本のPC市場において、このメッセージは非常に重要だ。欧州や北米、アジアなどの国と比べて、日本ではPCゲームがあまり盛り上がっていない現状があるからだ。このため、せっかくPCに搭載されているGPUも、単に3D系ベンチマークテストを実行するだけの無駄な半導体となってしまっていた現状がある。

 しかし、GPUを利用してPhotoshopやトランスコードの処理が速くなるなら、日本のPCユーザーでも利用する機会が増えるわけで、「PCゲームをやらないからGPUなんて、Windows Aeroが表示できれば十分」と考えていたユーザーをGPUに振り向かせることが可能になる。

 もちろん、そのためにはGPUを利用したアプリケーションを世界中のプログラマやISVに作ってもらう必要があり、NVIDIAがやるべきことはまだまだ多い。

 スタンフォード大学の「Folding@home」という分散コンピューティングプロジェクトを推進するビジェイ・パンデ教授は、GPUによる汎用コンピューティングの可能性について、以下のようなコメントを述べている。「重要なことはCUDAに対応した7億個のGPUが世界中にあることだ。平均100GFLOPSの処理能力があるとして、合計で7万P FLOPS(P=ペタ、ペタはテラの1000倍)もの処理能力がすでに存在していることを意味している。このうち、0.1%をFolding@homeに使ったとしても、70P FLOPSの処理能力を使えることを意味する」

 ちなみに、文部科学省が進める「汎用京速計算機」のプロジェクトでは10P FLOPSのスーパーコンピュータを2010年までに開発するとしているが、すでに、それを上回る処理能力が世界中のコンピュータの中で眠っているということだ。

 この業界では常に「ニワトリが先か、卵が先か」という議論が繰り返されるが、少なくともCUDAに関しては知らないうちにGPUとして強力なプロセッサが「卵」としてユーザーのコンピュータの中に存在している。あとは、この卵をどのようにかえしていくか、それがNVIDIAに求められているのではないだろうか。

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