Radeon HD 4890と実売価格がまともにぶつかる新しいGPU「GeForce GTX 275」がNVIDIAから発表された。Radeon HD 4890はシングルGPUの最上位モデルという位置づけになるが、GeForce GTX 275はNVIDIAのシングルGPUラインアップにおいて、「285」と「260」に挟まれた非常に微妙な立ち位置になっている。しかし、すでに掲載しているRadeon HD 4890のレビューで示したように、GeForce GTX 285は実売価格もベンチマークテストの結果もRadeon HD 4890の上を行く。このように、AMDとNVIDIAとでは、同じシングルGPUの新モデルでありながらRadeon HD 4890とGeForce GTX 275の位置付けを微妙に変えている。まずは、NVIDIAの示すポジショニングチャートを見てみよう。
このようにポジショニングされているGeForce GTX 275をスペックで比較してみるとその位置付けがさらによく分かる。以下にGeForce GTX 275と同 285、同 260とスペックを並べてみる。
| GPU | GeForce GTX 275 | GeForce GTX 285 | GeForce GTX 260 |
|---|---|---|---|
| プロセスルール | 55ナノメートル | 55ナノメートル | 55ナノメートル |
| 統合型シェーダユニット | 240 | 240 | 216 |
| コアクロック | 633MHz | 648MHz | 576MHz |
| シェーダークロック | 1404MHz | 1476MHz | 1242MHz |
| グラフィックスメモリ | GDDR3:896MB | GDDR3:1GB | GDDR3:896MB |
| メモリバス幅 | 448ビット | 512ビット | 448ビット |
| メモリクロック | 1134MHz | 1242MHz | 999MHz |
| メモリ帯域幅 | 127GB/秒 | 159GB/秒 | 111.9GB/秒 |
| ROPs | 28 | 32 | 28 |
| テクスチャユニット | 80 | 80 | 72 |
| 補助電源コネクタ構成 | 6ピン+6ピン | 6ピン+6ピン | 6ピン+6ピン |
| 最大消費電力 | 219ワット | 183ワット | 182ワット以下 |
GeForce GTX 275は、同 285や同 260と同様の55ナノメートルプロセスを採用する。ただし、統合型シェーダユニットの数は285と同じ、ROPsやメモリバス関連スペックは260と同じというように、上位モデルと下位モデルの仕様を折衷している。シングルGPUの最上位モデルを新たに作るわけではないため、新規開発というよりはラインアップをそろえるためのスペック調整に近い。GeForce GTX 275のスペックで注意しておきたいのが消費電力だ。プロセスルール、構成トランジスタ数が同じ、動作クロックは下がっているのに、上位のGeForce GTX 285より36ワットも増えている。


GeForce GTX 275を搭載したリファレンスカードのクーラーユニットは2スロット分の厚みがあり、形状的はほかのGTXシリーズと同様に見える(写真=左)。裏面はGeForce GTX 285と同じくヒートシンクを持たないが、よく見るとクーラーユニットフードの側面が樹脂製パーツで、ここがヒートシンクだったGeForce GTX 285と異なる(写真=中央)。上がGeForce GTX 275、中央がGeForce GTX 285、一番下がGeForce GTX 280。重ねると、裏面とヒートシンク形状の違いがよく分かるなお、GeForce GTX 275とともにリリースされたグラフィックスドライバ「GeForce Driver 185」シリーズでは、3D表現手法の「Ambient Occlusion」が利用可能となっている。これによりゲーム内での陰影に関するディティールがより自然なものになるとNVIDIAでは説明している。
今回の評価作業で用いたシステム構成は、Radeon HD 4890のレビューと同じにしている。マザーボードはMSIのIntel X58 Expressチップセット搭載製品の「X58 Pro」、これにGeILの「GV33GB1333C9TC」を組み合わせた環境だ。ただし、比較に用いたGeForce GTX 285ではGeForce Driverのバージョンは182.08を用いていたが、GeForce GTX 275に関しては、評価用として配布されている最新の「185.66」を適用した。

MSIのIntel X58 Express搭載マザーボード「X58 Pro」は、2万円台と比較的低価格でCore i7に移行できる製品として人気がある(写真=左)。GeILのDDR3-1333メモリ「GV33GB1333C9TC」は、1Gバイトモジュール3枚をセットにしたCore i7導入キットだ(写真=右)| テストシステム構成 | |
|---|---|
| CPU | Core i7 965 Extreme Edition(3.20GHz) |
| マザーボード | MSI X58 Pro |
| チップセット | Intel X58 Express |
| メモリ | DDR3-1333(GeIL GV33GB1333C9TC 1GB×3/9-9-9-24) |
| HDD | WD3200AAJS-B4A(320GB/7200rpm/8MB) |
| OS | Windows Vista Ultimate(SP1) 32ビット版 |
評価に用いたベンチマークテストも、Radeon HD 4890のレビューと共通にした。具体的にはFeaturemarkの3DMark06、3DMark Vantage、Crysis War Head、Far Cry2、Unreal Tournament 3。3DMark VantageとUnreal Tournament 3はPhysXに対応したタイトルだが、今回もこの機能をオフにして計測を行った。ただし、ゲームをプレイする上で十分なパフォーマンスを持つGPUとPhysX対応タイトルの組合せであれば、PhysXを有効とすることでよりリアルな描画が楽しめることを付記しておく。
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