Windows 7はどれだけ“速い”のか!?――VAIO P、ThinkPad T、自作PCでテストしたWindows 7 交響曲(3/4 ページ)

» 2009年12月02日 18時00分 公開
[織田薫,ITmedia]
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起動直後のCPU使用率

 Windowsの起動直後にユーザーがきちんと操作できる状態になっているか判断するため、起動直後のCPU使用率も調べてみた。

起動直後のCPU使用率。グラフは横軸が経過時間、縦軸がCPU使用率となっている。グラフは左からVAIO P、ThinkPad T61、自作機の結果だ

 各PCのCPUパフォーマンスは異なるため、CPU使用率の最大値は異なるが、全体の傾向を見るとほとんど同じ結果になった。CPU使用率の変動が激しいVAIO Pのグラフが一番分かりやすいので、これをピックアップして話を進めよう。

 XPの場合、起動後のCPU使用率は一貫して低かった。起動してしまえば、すぐに使える状態になるので、ユーザーにとって「速い」という印象を与えやすい。Vistaの場合、起動後30〜120秒程度はCPU使用率が高かった。この時間はディスクI/Oも多いため、VAIO Pのようなスペックの低いPCでは操作不能に近い状態になる。VistaとAtom Zを組み合わせたミニノートPCが「遅い」といわれてしまうのは、起動直後の高いCPU使用率と、ディスクI/Oの多さが原因の1つといえるだろう。

 一方、Windows 7はCPU使用率が上がる場面もあるが、Vistaほど極端ではない。実際に起動直後にログオンしても、操作できないほど遅く感じることはなかった。XPほどの軽快さはないが、Vistaよりは快適に感じる。

起動直後のメモリ使用量

 起動直後のCPU使用率に加えて、メモリ使用量も調べてみた。PCのメモリモジュールは低価格化が激しく、今では2Gバイト以上のメモリを搭載しているユーザーも多いはずだ。しかし、32ビットOSで利用できる物理メモリは最大3Gバイト程度が限界だ。したがって、OSが多くのメモリを消費してしまうと、アプリケーションが利用できる物理メモリは減ってしまう。

 XPが登場したころは想像しにくかったが、最近ではOSやセキュリティ対策ソフトが大量にメモリを消費し、メモリ使用量が2Gバイトに近づくことも少なくない。OSのメモリ使用量は、少ないほうがよいのはいうまでもない。

起動直後のメモリ使用量。グラフは横軸が経過時間、縦軸がメモリ使用量となっている。グラフは左からVAIO P、ThinkPad T61、自作機の結果だ

 起動直後のメモリ使用量は各PCで調べたが、値も傾向も大きな違いはない。ここでは、ThinkPad T61の結果を見ていく。

 グラフを見てすぐ分かるのは、XPとVista/7では必要なメモリ容量が大きく異なるということだ。XPは200Mバイトぐらいしか使用していないのに対し、Vista/7は500Mバイト以上使用している。VistaはUltimateを導入していることもあり、メモリ使用量が非常に大きい。

 また、起動から45秒程度経過すると、物理メモリの使用量はぐっと下がる。おそらく、不要なプロセスをページアウトした結果だと思うが、それでも600M〜700Mバイト程度のメモリを使用し続ける。セキュリティ対策ソフトをインストールしたら、1Gバイトを超える可能性があり、32ビット環境でメモリを大量に消費する作業を行うのは少し厳しい印象だ。

 Windows 7はVistaと同じような傾向を示しているが、メモリ使用量は200Mバイト程度少なかった。ただし、XPと比較すると300Mバイト程度多いので、搭載している物理メモリが少ない場合、XPを利用したほうが快適に使えそうだ。

 Windows 7は、32ビット版と64ビット版の違いも計測した。64ビット版は32ビット版よりもメモリ使用量が多いが、Vistaの32ビット版よりは少ないという結果になった。64ビット版は4Gバイト以上の物理メモリに対応するため、メモリを潤沢に搭載していれば、メモリ使用量の多少の増加は気にならないだろう。

アプリケーション起動時のメモリ使用量

 起動直後だけではなく、複数のアプリケーションを起動した状態でのメモリ使用量も調べてみた。実施したテストは、Internet Explorer 8を15秒おきに20個起動し、メモリ使用量の変化を計測するというものだ。IE8はPC USERのサイトを表示するように設定し、最大化状態で起動、ウィンドウを並べて表示という動作を繰り返した。下のグラフは、全体的なメモリ使用量ではなく、増加量を示している。

IE8を複数起動した場合のメモリ使用量。グラフは横軸が経過時間、縦軸がメモリ使用の増加量となっている。グラフは左からVAIO P、ThinkPad T61、自作機の結果だ

 起動直後のメモリ使用量と同様に各PCでテストしたが、値も傾向も大きな違いがないので、ThinkPad T61の結果を見ていく。メモリ増加量は大きいほうから、64ビット版Windows 7、XP、Vista、32ビット版Windows 7の順になった。XPよりもVista/7のほうがメモリ増加量が少ないのは、表示などの最適化が影響しているのかもしれない。

 Windows 7の32ビット版と64ビット版では、やはり64ビット版のほうがメモリ使用量が多かった。起動直後のメモリ使用量も同じような傾向なので、64ビット版の恩恵を得るためには4Gバイト以上の物理メモリを装備する必要がありそうだ。

ディスクI/Oの速度

 OSによるディスクI/O性能の違いも調べるため、ストレージデバイスにおけるシーケンシャル/ランダムのリード/ライト性能を計測するソフト「CrystalDiskMark 2.2」(ひよひよ氏作)を実行した。VistaはHDDのアクセスが遅いと指摘されることがあり(SP1で少し高速化されたものの)、Windows 7で改善されているのかが気になるところだ。

CrystalDiskMark 2.2のテスト結果。グラフは左からVAIO P、ThinkPad T61、自作機の結果だ

 Vistaの遅さが顕著に出たのは自作機だ。XPに比べてシーケンシャルと512Kバイトのリード/ライト速度で5Mバイト程度の差が生じている。一方、Windows 7はXPと同程度の速度を出しており、Vistaからの改善が見られた。

 ThinkPad T61の場合、各OSで大きな違いは出ていない。Windows 7の32ビット版と64ビット版も、ほとんど同じ速度になっている。XPとWindows 7を比較すると、Windows 7のほうが速いため、XPのディスクI/O速度が遅いようだ。この辺りは導入しているドライバも影響していると思われる。

 VAIO Pの場合は、自作機と同じような傾向を示しているが、512Kバイトと4KバイトのランダムアクセスはXPが遅くなっており、ThinkPad T61同様にドライバの問題があるのかもしれない。

 今回のディスクI/Oテストでは、Windows 7がVistaよりも高速になり、場合によってはXPよりも高速になるとの結果が得られた。PCのパフォーマンスに大きな影響を与えるCPU、メモリ、HDDのうち、最も遅いHDDの速度が改善されると、体感速度は大きく向上する。Windows 7が快適だと感じるのは、ディスクI/Oの性能向上も一役買っているのだろう。

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