チベット旅行の定番は、チベット自治区の区都「ラサ」、それに続く観光都市「シガツェ」「ギャンツェ」、それに中国側から訪れる世界最高峰のエベレストの登山口「エベレストベースキャンプ」だ。バックパッカーであれば、カトマンズまで目と鼻の先にある中国とネパールの国境の町「ダム」もよく訪れるという。
これらは、中国とチベットを扱う旅行ガイドブックでも紹介されているが、それでも観光でやってきた外国人には行きにくい。現地の人々が「かなり低地」という標高3650メートルのラサをはじめとするチベット自治区は、「緑豊かな土地」で30〜80キロの間隔で町がある「人口集中」地域だ。
しかし、ラサから車で4〜5日(4〜5時間でないことに注意!)かかる、インドやパキスタンの国境に近い西方の「ガリー」(阿里)と呼ばれる西チベット地域になると、これはもう、“観光旅行”の世界を飛び越してしまいそうな難易度になる。ただでさえ外国人がチベットを訪れるのは難しいが、西チベットとなると「入域許可書の発行がどうのこうの」とは別の次元で外国人の行動は困難だ。そのエリアに“痛いThinkPad”とともに“かなり低地のチベット”から向かった「中国人の知人」が、チベット最深部のIT事情を報告する。
ラサから西へ400キロ離れた「ラツェ」までの道は、よく整備されていて観光バスも行き交う。そのラツェから「エベレストベースキャンプ」「ダム」へ向かう道と西チベットへ向かう道が別れる。西チベット方面に進むと“平地”でも標高は4000〜5000メートル台となり、集落はまばらになる。この地域の植生は低木はおろか草も生えない。植物が育たない地域の主要産業は羊毛だ。不毛な山肌と6000メートルを超える雪山が見える車窓には、羊やロバの群れを率いた遊牧民が数時間ごとに現れる。
行くだけで困難きわまる西チベットを訪れる旅行者(もはや、観光の域を超えている)の目的は、チベット仏教、ヒンドゥー教の聖地「カイラス山」(標高6656メートル)の巡礼や「グゲ王朝遺跡」だ。中国国籍やネパール国籍のチベット仏教信者だけでなく、インド国籍のヒンドゥー教信者もやってくる。
数十キロから数百キロの間隔で点在する小さな集落には、旅行者が休憩できるゲストハウスや商店、食堂が必ずあるが、国際色豊かな来訪者を物語るように、チベット文字、漢字、英語表記の看板や張り紙が目立つ。しかし、地元の人の多くは中国語“も”話せない。なので、地元のチベット人が営む食堂やショップではチベット語しか使えない。
そんな遠く離れた西チベットでも中国の四川省や東北地域(大連からハルビンまでの含むエリア)から移住してきた中国人が営業する食堂や商店がある。そこでは、中国語が使えるだけなく、店によっては簡単な英語も通じる。そういう食堂では、中国からやってきた中国人の旅行者が中国沿岸部と同じ味のする“炒め物”を食べる。
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